株式会社アソウ・アルファ

「人を磨いて、技術を磨く。」をキャッチフレーズに、システム開発領域でのエンジニア派遣、業務請負による受託開発、自社プロダクト・製品の開発を事業として展開する株式会社アソウ・アルファ。福岡県福岡市を本社とする同社は、明治5年創業の麻生グループの一社であり、1995年の設立以来多岐にわたる人材サービスで実績を重ねてきた。これまでの歴史の中で、派遣法改正やリーマンショック等の社会的な変動に直面しながらも、同社は常に変化することを恐れない経営理念の下でチャレンジを続けてきた。2010年からは技術者派遣に特化し、グループ外の企業に対して「技術を人材によって提供」し続けている同社のビジネスについて、事業の立ち上げと発展の中心を担った取締役・小川直樹氏は次のように語る。

「約150年の歴史ある麻生グループは、どの時代においても社会インフラを担う事業を展開することを使命としてきました。その一員となる当社も、人材という社会的な要素の安定性を目指した事業を展開してきましたが、その一方で人材ビジネスという“若い業界”の変化にも対応してきました。グループが有する確固たる基盤を武器にしながら、変貌する業界においてチャレンジを続けるベンチャー的な気質を強みとして成長してきたのが、当社の特徴だと思います」（小川氏）。

グループとしての安定感とベンチャー気質を併せ持つ同社には、「落ち着いてチャレンジできる環境がある」と小川氏は表現している。そして、同社にはIT領域における業務系システム開発に関する強みもあるということだ。

「Web系のシステムやゲーム等の開発ではなく、当社では業務系システムの分野に集中して人材派遣ビジネスを展開してきたという特徴もあり、そのことが競合他社にはない強みにもなっていると思います。その分野での開発業務を数多く経験してきたエンジニアが経験を生かし、要件に基づいた計画立案から設計書や製造指示書、テスト仕様書までを綿密に構築する。そんな開発ポリシーを貫いてきた当社には、他社をリードする品質の高さがあると、私は考えています」（小川氏）。

安定した経営基盤、ビジネスの変貌に対応した変化への挑戦意識、そしてそれらの基になる技術力の高さこそが、同社が有する他社にはない特徴であり、事業の成長を裏付ける強みになっているということだろう。

今後の事業展開については、エンジニア不足による需要と供給のバランスが悪化しているシステム開発ビジネスの領域において、自社の事業を総合的に捉えた取り組みを進めるという自社の方針を、小川氏は説明してくれた。

「以前は、当社のみならず他社も含めたサービス提供によって人材の全体的な需給バランスは維持できていました。しかし現在は、顧客からの開発ニーズが激増していると同時にエンジニアが不足しているという状況にあり、システム開発に関する“残案件”が顧客企業に滞留し、事業拡大の足かせになっているというケースが多く見られます。そこで当社は、その“残案件”を受託開発案件として受注し、既存のメンバーが自社内での開発プロジェクトに同時並行で関わりながら、生産性の向上を目指すという取り組みを始めました」（小川氏）。

また他方では、サービスやプロダクトの自社開発という活動にも、同社では今後より注力していくということだ。コロナ禍における契約数の減少等にも直面し、人材派遣業界の脆弱性を改めて認識したという小川氏は、自社開発案件への積極的な取り組みはビジネスのリスクヘッジを実現するだけではなく、雇用を守るという効果にも繋がると語っている。その考えが表れている同社の取り組みの一つが、技術者のための拠点として位置付けられている「熊本開発センター」での活動である。

「熊本開発センターは、AIやVRといった最先端技術を駆使した案件の受託開発を行う拠点として、当社では位置付けています。この拠点は、熊本県や熊本市といった自治体との立地協定による助成も受けており、当社が最先端技術への投資を加速させている一つの例と言えるでしょう」（小川氏）。

この開発センターでは、VRを使った面接トレーニングのアプリケーションというプロダクトも生まれており、AIの導入等を実施しながら2023年のリリースを視野に入れた開発が進んでいるという。「人材」「就職」といった自社のこれまでの事業展開を反映させたテーマの下、長年の経験で蓄積した技術的なノウハウ、そして先端技術を組み合わせた自社製品の開発が、今まさに進んでいるのである。

「自社のプロダクトに関しても、やはり“人”に関わるテーマで開発するというのが当社の考えです。アプリケーションのほかにも、エンジニア不足という社会的課題を解決するために、自社のエンジニアを講師とした教室の開催というアイデアもありますし、その教室で使用するツールや育成のための商材等も手掛けていきたい。そうした取り組みによって、当社にしかできない価値提供を行っていきたいと思っています」（小川氏）。

人材や雇用、技術といったキーワードで事業を展開し、将来的なエンジニア育成も視野に入れた自社プロダクトの開発にも力を入れている同社。そのチャレンジに際し、自社のスタッフ達に求める意識とはどのようなものなのか。小川氏によれば、2022年に制定された新たな行動指針に、技術者として大切にしてほしい思いが言葉として表現されているということだ。

「行動指針は、素直であること、情熱を持ち続けること、技術に対する興味関心を持ち続けること、という三つの言葉で表現しています。新たなチャレンジを実行するには情熱が必要ですし、日進月歩でドラスティックに変化する技術要素に対する興味関心が不可欠です。そうした意識を裏付けるのが素直さであり、それらが今後当社で仕事に取り組む技術者に常に意識してほしい要素なんです」（小川氏）。

また、そうした行動指針や理念を社員達が理解し、思いを共有するための試みにも同社では取り組んでいるという。派遣というスタイルで客先での業務に当たるエンジニアに自社への帰属意識を持ってもらう、アソウ・アルファという企業の一員として安心して業務に取り組んでもらう。そのための社内制度整備や、業務調整等も積極的に行っているのが、同社の現状なのである。

「客先での開発案件に関しては、チーム体制で業務に当たるように調整することで、エンジニア達が自分の所属しているのはアソウ・アルファという会社なんだ、ということが実感できるはずです。それから、株主総会で承認された事項をオンラインでの事業報告会という形で展開し、社員全員が方向性を一致させるための情報発信も積極化させています。そのほかにも、イベントの開催や趣味サークルの活動を支援することで、当社では社内の意識共有を図っています」（小川氏）。

変化する社会において新たなチャレンジを繰り返す。その組織が重要視しているのは社内意識の統一であり、自らの拠り所をしっかりと確立した上で安心して業務に取り組んでほしいというのが、同社の考えなのである。その考えには、“人”が “技術”を表現しながら社会に貢献することに価値を見出している同社の特徴が表れていると言えるだろう。

「エンジニアが持つ意欲を技術力の向上に繋げられる、そして情熱のある人をハイレベルな人材に育成することができる。そんな自信が、当社にはあります。これから入社する方にも、新しいこと、自分自身が実現したいことに安心してチャレンジできる当社の環境で、是非力を発揮していただきたいですね」（小川氏）。