株式会社ヒット

屋外広告専門の広告会社である、株式会社ヒット。同社は、新たに屋外広告動画制作チームを立ち上げ、日本に存在していなかった職種「屋外専門CMプランナー」となる人材を求めている。

2022年7月29日、東京・渋谷のハチ公広場前スクランブル交差点に面するビル4棟に設置された合計8面の大型デジタルサイネージに、“超巨大秋田犬3Dカラクリ時計”の映像が放映された。毎時0分に渋谷駅前の当該ビルが“時計台”に変貌し、その中からハチ公と同じ秋田犬の子犬が飛び出して時刻を知らせるという趣向である。“HIT”のロゴが描かれたフリスビーをくわえた犬が左端のサイネージから顔を出し、首を振ってフリスビーを投げると、間のビルのサイネージをフリスビーが通過し、右端のビルのサイネージに表れた犬がキャッチするという“シンクロ映像”も放映された。この模様はテレビのニュース番組で取り上げられて話題となった。それだけでなく、海外メディアでも紹介され、動画投稿サイトの当該動画は百数十万回再生されている。

このデジタルサイネージは、ヒットが所有する屋外広告メディア。“超巨大秋田犬3Dカラクリ時計”は、大型デジタルサイネージ7面で常時連動放映を行う『シンクロ7シブヤヒットビジョン』と、日本最大級の広告用デジタルサイネージの『シブハチヒットビジョン』という同社のメディアをアピールすべく、同社がプロデュースしたデモンストレーション動画である。

同社では、海外の先行事例を国内で展開すべく、2019年に大型屋外ビジョンでの“肉眼3D”広告放映の研究をスタート。3Dメガネをかけなくても立体的に見える動画である。2021年7月には、“肉眼3D”放映に適したL字型ビジョン等、6面の大型デジタルサイネージを東京・表参道のビルに設置。この『OMOSANシンクロ』は、特に外資系企業に着目された。
日本では、デジタルサイネージによる屋外広告にはテレビCM素材を放映する場合がほとんどであったが、海外では専用素材を制作するケースが多い。加えて、『OMOSANシンクロ』のサイズはテレビの16：9ではないため、専用の素材がより効果的という側面も海外企業にフィットした形だ。

そこで、『OMOSANシンクロ』で放映する広告クリエイティブの相談が同社に寄せられるようになり、外部の制作会社と連携して対応。これが評価され、同社は新たなサービスとして展開することにし、『シンクロ7シブヤヒットビジョン』を設けたという経緯である。
「“超巨大秋田犬3Dカラクリ時計”は一つの例ですが、このように画期的な“肉眼3D”によるシンクロ広告動画を企画・設計するプランナーを集め、本格的に事業化します。当該職種は、日本ではこれまで存在していませんでした。まさにパイオニアになれるチャンスです」と、経営企画本部事業企画室マネージャーの渡部雄満氏は呼び掛ける。

同社は、1991年2月、代表取締役会長の松丸敦之氏が株式会社ヒットコーポレーションとして設立する（2008年に現社名に変更）。複数の看板をパッケージ化したセットボードやLEDを活用した大型デジタルサイネージをいち早く導入する。例えば、首都高速デジタルLEDボード。従来の屋外広告は1年間掲出するという契約が一般的であった。こうした長期間であると、ブランディングには効果的であっても「新発売」等の短期的キャンペーンには不向き。そこで同社は、デジタル化によって短時間で表示を変えられるようにした。現在では首都高速沿いの15面のLEDボードで、集中的・連続的に広告表示ができるようになり、これによって、首都高速の利用者にインパクトのあるキャンペーン広告を可能にしている。同様のデジタルLEDボードは、大阪・新御堂筋にも設置している。

また、屋外広告とスマートフォンを繋ぐ位置情報広告サービス『HIT-movi』のサービス展開等、常に業界をリードする革新的なチャレンジを続けている。2019年の大型屋外ビジョンでの“肉眼3D”広告放映の研究開始も、この文脈に位置付けられる。

同社の強みは、「媒体開発力」と「営業力」にある。
媒体開発力は、まずはいかに良い場所のビルに広告スペースを確保するかが問われる。同社は、広告を掲出する場所の目利きとビルオーナーとの関係を構築するノウハウに長けている。
営業力としては、大手広告代理店ルートだけでなく、業界では珍しい直販部隊も設けてクライアントを開拓。「営業力の強みの源泉は、“良い場所に良い広告面を持つことができる”という媒体開発力です」と渡部氏。

こうした強みにより、大手広告代理店はもちろんのこと数々の錚々たる顔ぶれのナショナルクライアントとの直接取引実績を持つ。

そんな同社の経営理念は、「屋外広告のリーディングカンパニーとして世界を変えるメディアを創造する」。これを実現すべく、次の5項目のビジョンを掲げている。「このビジョンは、迷った時等の判断基準にもなっている」と渡部氏。

・未来を見据えて発想し、理想を現実にする
・常にクライアント目線に立ち、“最小の予算で最大の効果を発揮する”提案をする
・変化を歓迎しよう。リスクや失敗を恐れずチャレンジし、成功への糧とする
・高い倫理観を持ち、透明な企業活動を築く
・ダイバーシティの考えに基づき、社員お互いが尊重し目標を達成する

そんな組織の中に新たに設置されるクリエイティブチームのカルチャーづくりについて、責任者の渡部氏は次のように話す。
「全員がよくしゃべり、お互いに発信し合うことでクリエイティブなカルチャーをつくっていきたいと思っています。各自が新たな情報を収集し、ブレストやディスカッションで刺激し合い、アイデアやプランを創出するチームです。そんなカルチャーづくりに理解・協力してくださる方に来ていただきたいと願っています」

なお、同社全体として残業時間は月平均10～15時間と少ない。
人材育成の観点では、新卒者をデイリーでフォローアップする半年間の研修期間を設けているほかは、社員間のコミュニケーション促進にも力を入れ、OJTで実践を通じてスキルアップを図っている。

日本初の「屋外専門CMプランナー」として活躍できるチャンスは見逃せないだろう。