新卒で入社されたのは、学生時代から会社を継ぐ意志がおありだったのですか。
いいえ。入社した理由は生まれ育った環境の影響が大きいと思います。ただ、入社するまで、弊社がやっているような仕事があることすら考えたことがありませんでした。 経営を継ぐことを明確に意識し始めたのは、リーマンショックの時です。エッセンシャル・ワーキングなので赤字になることはありませんでしたが、これまでにないような大打撃を受けました。その時に、将来、自分がこの会社を継ぐことに対してリアリティを感じるようになりました。 ただ、リーマンショックで大打撃を受けた要因がどのようなところにあったのか、今後、どのようにリスクヘッジを行うべきなのか等、市場分析や財務分析、経営方針の策定や実務運用について全く知識がありませんでした。そこで経営者の考えを学ぶために、全国の経営者に直接話を聞いてみることにしたのです。1年間で100人の経営者にお会いさせていただきました。 それがビジネスモデルや仕組み造りを考えるきっかけになりました。そして30歳ぐらいまでの5年間でビジョンを固め、そこから、ブランディングを行い、末端のオペレーションの改善や、評価制度、キャリアパス、育成制度、給与体系、従業員の定着率を上げるための仕組み等を、徐々に築いてきました。
ビジネスモデルの構築も、1年間で100名以上の経営者の方々から学ばれたのですか。
その時に学んだことは、どちらかというと経営者の考え方です。マーケットの見定め方は学んでいません。現在のビジネスモデルは、会社の強みを生かして原理原則に則って、いかに粗利を稼ぎながら、社会を良くしていけるかということを考えて構築していきました。弊社は元々、地域住人に寄り添った商売をすることを目的に創業した会社です。困りごと一つ一つに商売の糧が存在し、その解決の積み重ねが現在に至るまでの成長につながったと実感しています。これからもその理念を引き継ぎコツコツと足元を固めながら着実に成長していきます。 私はリーディングカンパニーというものは存在しないと思っています。たまたま事業を行っていて、世の中の役に立って、人々から価値があると認めていただいて対価を得る。その事業の成長途中で、横並びのプレイヤーよりもリードしているということはあるかもしれませんが、未来永劫、そうあり続けるということはあり得ないと思っています。 そういった地に足の着かないような理想論を掲げるのではなく、しっかりとした根拠に基づいたビジョンを掲げ、科学的に、困っている人の問題や課題を解決するために、私の周りのリソースを費やしていきたいと考えています。
社内の雰囲気造りで目指してきたことはございますか。
あまりビジネスライクにはならないよう、自然にコミュニケーションが取れる環境造りを心掛けています。オフィスを新築した際にも空間造りを工夫をしました。人との距離が近過ぎると物理的に摩擦が生じるので、社員同士の適度な距離を保ち、ストレスが溜まらないように、天井を高くして、ゆとりのある空間を造りました。 また、社員それぞれのライフスタイルも尊重し、それぞれの価値観に合致した生活が送れるように支援しています。例えば、あるパッカー車の運転手は、奥さんが岡崎市内でアンティーク家具店を経営していますので、弊社の仕事が終わると手伝いに行っています。パッカー車の運転業務は、12時には終わります。その部分でしっかり役目を果たしてもらえれば、会社としては問題ありません。その運転手にとっては、弊社の仕事は生活の足しにしていただくための会社で良いと思っています。 しっかり目的が達成されれば、あとはプライベートのことなので、我々が干渉したり阻害したりすることはできません。目的を達成していただければ、制服も不要ですし、リモートでも構わないと思っています。あくまで仕事の結果に応じて給与を支払う。弊社の評価制度もそのような考え方で設計しています。 目的が持てればモチベーションにも繋がります。私自身もそうですが、会社はあくまで生活の一部です。社員一人ひとりが事業を通して人生を豊かにしていただきたいと考えています。
採用方針をお聞かせください。
弊社が求めているのは、“言われたからやる”イエスマンではなく、自発的に発言し能動的に動けるプロフェッショナルです。 私自身、経営者としてカリスマ的な存在になろうとは考えていません。主役はあくまでも会社です。お客様は会社にご依頼されるので、その御期待に応えるためにも、品質の平準化に取り組む必要があります。従って、カリスマに付いてくるその他大勢という組織にしてはいけないと思っています。カリスマが辞めた途端に終わる会社には未来はありませんし、持続的な発展は得られません。 従って、これから新規で採用する社内SEの方にもご自身の専門領域で、何をすべきかを見極めてしっかりスキルを活かしていただける方を求めています。我々の事業に賛同していただいた上で、単なる総務屋さんとしてではなく、世の中を良くしていくために専門知識を活かして活躍いただきたいと考えています。
将来、ITの活用領域をどのように広げていくお考えですか。
自然と人間との境界線を管理するためのテクノロジー活用で、最も先進的な取り組みをしている国はオランダです。オランダは九州ほどの面積しかないのに、農産品の輸出でアメリカに次ぐ世界第2位です。つまり農作物を効率良く収穫するための技術が優れているのです。 そのためには野生生物の管理も徹底する必要があります。例えば彼らが耕す広大なプランテーションに野生の鳥やハクビシンが侵入して、作物を食べてしまえば収穫量が減少してしまいます。したがって単に野生動物にエサを与えるだけになってしまいます。 では彼らが何を行っているかというと、農地の周囲に一定の間隔で電柱を立ててレーザーを照射します。すると動物が忌避し逃げることを知っているのです。それを自動化して、動物の警戒心を逆手に取り管理しているのです。 我々もそういった分野でテクノロジーを活用できないかと模索しています。農業だけではなく、自動車のテストコースや工場等にも応用できる技術になるはずです。既にITや機械工学等のテック企業とも打合せをしているところですが、それをするには我々だけが頑張っても実現しません。まだまだ、国内ではも製造業を中心に経済を考える施策から抜け出せておらず、それが国内経済を停滞させる要因にもなっています。地道ではありますが、仲間を募って、啓蒙活動を行いながら、行政を動かせるところまで持っていきたいと考えています。