株式会社M.and.Agency

株式会社M.and.Agencyは、日本のアウトドア・スポーツ産業の発展を促進することを目的として、次の3事業を展開しているベンチャーである。

●アウトドア・スポーツメディア事業
次の3つのWebメディアを運営。
・『Greenfield』：アウトドア・スポーツの総合Webメディア。キャンプ、登山、アウトドア・スポーツ、環境保護、釣り、安全・危機対策、学びといったカテゴリーで、場所や道具、遊び方、関連知識や、フィールドで活躍するスペシャリストやアウトドアグッズのクリエイター等の情報を幅広く発信。広告配信やタイアップ広告でマネタイズしている。

・『Event. Greenfield』：アウトドア・スポーツイベント情報サイト。全国の様々なアウトドアのレジャーやスポーツのイベント情報を、主催者等が投稿できる。集客に困っている小規模事業者がWebの知識等なくても簡単かつ低コストで情報発信を可能に。

・『Training. Greenfield』：アウトドア・スポーツに関するトレーニング情報サイト。全国の様々なアウトドア・スポーツのインストラクターやトレーナー、ガイド、団体等が集客を目的にトレーニングプログラムや講座情報を投稿できる。

●EC事業
アウトドア・レジャー・スポーツ用品を主な領域とするECを「楽天市場」「Amazon」「Yahoo!ショッピング」の各モールおよび自社サイトで運営。著名ブランドではなく、「ガレージブランド」と呼ばれる日本のニッチなメーカーを重点的に取り上げ、定価販売にこだわっている点が大きな特徴。
「ECモールでは、値引き販売による価格競争が常態化し、小規模のガレージブランドの発展が阻害されている現状があります。当社では、メーカー様の商品の魅力や作り手の想いが伝わるように、市場で商品をきちんと紹介し適正な価格で販売できるチャネルの提供を通じて、Win-Winの関係で発展していけるECを目指しています」とsales & marketing責任者の白石秀太氏は説明する。

●ロケーションスタジオ事業
千葉県の南房総に、1200㎡のハウススタジオ、キャンプ場を所有し、アウトドアシーンの撮影に特化した素材制作をおこなっている。芝庭、レンガチップキャンプ場、野営キャンプ場の3シーンを用意し、撮影美術としてキャンプ用品も700～800アイテムを揃えているので、商品に合わせたコーディネートが可能。
サービス内容としては、クライアントから撮影する商品を預かり、写真や動画を撮影し完成素材を成果物として納品をしている。同社内のディレクターやADが、カメラマンやフードコーディネーター等、外部のプロフェッショナルをアサインし、制作チームを編成して対応。カタログやEC、広告等の使用目的に応じ、撮影イメージの企画提案から行っている。
その他にも、ロケ地としてスタジオを貸し出したり、CMやTV番組のコーディネート等も展開している。
今後は一般向けのウェディングや記念イベント、さらにはアウトドア活動を通じたチームビルディング等の企業研修といった用途にも広げていく。

同社の特色は、これら3事業が相互にシナジーを発揮し合える関係性があることだ。

同社は、2016年11月、代表／CEOの野村修生氏が設立した。野村氏は、不動産会社やITベンチャー、投資会社勤務等の後、証券化アレンジャー業務やベンチャー支援を手掛ける企業の創業を経て、IT特化型HR事業会社をスタートさせる。その間、子供時代から様々なスポーツやアウトドアに親しみ、生活の一部となっていた野村氏は、一貫して日本のアウトドアやスポーツ業界をウオッチしてきた。

「好きなことを仕事にできたらいいという単純な思いに加え、学生時代から抱いていたこれらの業界への疑問が、創業の原点になりました。アウトドアや、スキー・スノボやサーフィンといったスポーツを楽しむ人口はなかなか増えず、産業規模も小さい上に、アウトドアやスポーツ用品メーカーは海外ブランドが多くを占めている状況です。日本の優れた作り手やインストラクター等はなかなか日の目を見ることができず、この世界で頑張っている人の地位や収入は向上しません。ならば、事業活動を通じてこういった人達の力になっていこうと、IT特化型HR事業会社を運営の傍ら、当社を創業することにしました」（野村氏）。

その当初から、メディアとECを手掛けることは決めていた。とはいえ、IT特化型HR事業会社はようやく軌道に乗ったところで大きな資金力はなく、このような事業がどこまで収益化させられるかは全く分からなかった。また、自分の好きなことを好きなように貫くためにも、他資本を入れるつもりはなかった。そこで、完全な自己資本での低空飛行でスタートすべく、土台ができるまでは人材を採用せず外部の力を借りながら自分一人での運営を決めた。

まずは創業直後にYahoo!やAmazon、自社サイト等でECを立ち上げ、2017年3月から総合Webメディア『Greenfield』開発に着手し、ライター3名でスタート。同年7月にローンチ後、3年で約5000記事をリリースする。2019年には『Event. Greenfield』『Training. Greenfield』の試験運用も開始。2020年にはロケーションスタジオ事業も立ち上げ、同年にスポーツ庁の「Sports in Life」に加盟し、スポーツエールカンパニーの認定も受ける。

こうして創業3年半ほどで事業基盤ができ、外部メンバーは50名を突破。2021年から社員採用を開始。2023年2月現在10名を擁するが、今後採用に力を入れ、内製体制を充実させ組織力を強化していく方針だ。

同社の掲げるテーマは、次のとおり。
「自然と学び　遊ぶをつなぐ」
アウトドアやスポーツ分野のパートナー企業や、プロフェッショナルの支援や協力を得て、人々のより良いライフスタイルへの貢献と共に、日本のアウトドア・スポーツ産業の発展を目指す。
そのためにも、日本の優れたガレージブランドを海外にも広めるべく越境ECや、ロケーションスタジオを足場にしたアウトドア活動を通した教育や企業向け研修等の教育事業にもチャレンジしていく構えだ。

同社の組織体制は、Web事業とEC事業、LocationStudio事業の3つに分かれているが、実際はタスクごとに両事業からメンバーがアサインされてプロジェクト単位で業務を推進する体制だ。したがって事業部の垣根はなく、人材も少数なので、ECのバイヤーとロケーションスタジオの営業やディレクターを兼務するといったマルチタスクのメンバーも少なくない。

その背景には、野村氏の「“デスクワーク”と“フィールドワーク”の両方を磨き上げる」というマネジメントポリシーがある。野村氏は次のように説明する。
「当社のビジネスは、WebやECなどオンライン上のサービスを展開しておりますが、対象ジャンルはアウトドアスポーツです。メディア取材ともなれば専門家の方を相手にフィールドで行われ、LocationStudio事業においては野外での撮影コーディネートを強みとしています。もちろん職種によりますが、当社の事業特性上、フィールドワークも非常に重要となってきます。

フィールドワークという点では、ロケーションスタジオのグリーンキーピングやロケ撮影現場でのフィールドスキルなど、デスクワークとは全く異なる適応能力を発見する楽しみがあります。マルチタスクは本人の希望や適性に応じて柔軟に決められるが、「こうした幅広い業務フィールドは、当社の魅力ではないか」と野村氏は話す。

なお、同社にはアウトドアが好きなメンバーはもちろん、「何となく関心があり、入社後好きになった」というメンバーもいる。
「アウトドアが好きかどうかは、決して入社の条件ではありません」（野村氏）。

社内の親睦を深めることを狙い、試験的に「登山部」を発足させて、自由参加で登山に親しむ活動をスタート。そのほか、社員はそれぞれ好きなアウトドア活動に誘い合って楽しんでいるという。
人材育成においては、アウトドアやスポーツ、事業運営に関わる資格取得の全面的な支援や、社員が講師となって得意分野を教える勉強会等を開催。
働き方は、少人数のためチームワークが基本。「今後はチーム単位で自由に働き方を決めていけるようにしたい」と野村氏。このように、メンバーがやりたいことを自由に決め、責任持って運営するボトムアップ型のマネジメントポリシーも同社の特徴だ。したがって、KPIも各自が決め、その重みに応じてインセンティブを支給する形を取っている。

同社が求める人材像について、白石氏は次のように話す。
「当事者意識の高い方、事業の幅が広く手を挙げればチャレンジできる環境はあるので、手を挙げたことに対しては責任持って最後までやり切れる方にぜひ応募していただきたいと願っています」