ヴィアゲート株式会社

マーケティングリサーチに特化したイノベーション創造スタートアップの、ヴィアゲート株式会社。2023年2月に設立されたばかりの新鋭である。同社は、ユーザーや消費者のインサイトを調査し、クライアントのコンテンツ改善に役立つプラットフォーム『エモミル』を提供していく。

『エモミル』とは、“エモーション（感情）を見る”という意味からネーミング。スマートフォンのカメラを用いて、Web広告やWebサイトをユーザーが見た時にどういった反応を示すかを計測・分析するというプロダクトである。例えば、Web広告の送り手側が「ここに着目してほしい」と考えていることに対し、実際にユーザーがどの程度その部分を見ているのか、また見た上でどういった感情を抱いているのかを分析。その結果を、広告クリエイティブの改善に役立ててもらうという価値を提供する。
「これまで、Web広告においてはクリック数等の効果測定はできていましたが、なぜその結果なのかがわからず試行錯誤するという実情がありました。『エモミル』によって、どの箇所が問題なのかという手掛かりがつかめるようになります。また、既存のモニター動員型の調査と違い、多数のユーザーを低負担ですぐ集めて調査できるメリットもあります」と、代表の下崎守朗氏は言う。

使われている主なテクノロジーは、スマートフォン内蔵カメラによる視線計測機能と、ユーザーの表情を基に感情を解析するディープラーニング。
「これらのテクノロジーを組み合わせてサービス化したノウハウに強みがあると自負しており、国内では同様のサービスはまだほかに出ていないと見ています」（下崎氏）。

『エモミル』は2023年4月にプロトタイプがリリースされたばかりで、まずは少数のクライアントに提供し、実際に運用しながら機能を作り込んでいくという段階にある。その上で、正式に広くローンチしていく。また、まずは自社アプリによる動画コンテンツとWebサイトの分析から始め、次にクライアント自身のアプリやWebサイトにも組み込めるSDK公開を行う予定だ
「既に、アプリを運営している複数のWebサービス会社から『こういうふうに使いたい』というアイデアやオファーをもらっています」（下崎氏）。

今後の成長戦略としては、調査結果の提供にとどまらず、対象となる動画コンテンツやWebサイトのクリエイティブ改善サービスにも踏み込んでいく構えだ。
「『エモミル』の目的は、コンテンツを改善し、より良い結果に繋げるグロースハックにあります。しかしながら、特に動画広告等コンテンツの改善には多大な手間が掛かり、限られたパワーを割くことが難しいケースが多くあります。そこで、当社が調査と組み合わせながらPDCAを回して最善のクリエイティブに改善するサービスを提供したいと考えています」と下崎氏は意気込む。

同社は映像プラットフォームサービスを提供しているクラウドカメラサービス業界No.1の上場企業、セーフィー株式会社の新規事業をスピンアウトする形で設立された。下崎氏は現在もセーフィーの取締役を兼任している。

『エモミル』を同社にもたらしたのは、某有名メガネ・アイウェアブランドでセルフケアメガネのプロダクトマネージャーを務めた人物。そのセルフケアメガネは鼻当て部分のCOREに2つのセンサーを搭載したウェアラブルデバイスで、センサーが取得した筋電位等の様々な情報をスマートフォンで解析し、心身の状態を計測するという商品。
「その人物は、筋電位よりもカメラで撮影した映像を用いることでより正確な測定ができると、その可能性を追求できる会社として2022年9月にセーフィーに転職してきました。そして、セーフィーの持つテクノロジーと突き合わせて『エモミル』のアイデアを打ち出し、プロトタイプを開発したのです。これがプロダクトとして行けそうだと確信し、事業全体をスピンアウトさせることにしました」（下崎氏）。

同社は、セーフィーから独立性を保って設立された。その理由について、下崎氏は次のように説明する。
「リスクのある新規事業をものにするために、関わるメンバーはサラリーマンとしてではなく、自らの意思で事業を立ち上げていく必要があると考えました。スタート時のメンバーは全員で6名ですが、メンバーはセーフィーから完全に転籍し、肩書には“共同創業者”と書いているのもそのためです」

なお、下崎氏が両社を兼務していることもあり、独立会社であっても強い協力関係にある。「サービス領域は異なるものの、マーケティングや技術開発等において協力し合っていきたい」と下崎氏は話す。

同社は次のビジョンを掲げている。

「データが思いを導く社会へ」

「データが人の決断をサポートする仕組みを作っていきたいという思いが、我々の根底にあります」（下崎氏）。

なお、ゆくゆくは『エモミル』のような独自サービスの提供にとどまらず、様々な新サービスのアイデアを持つ人材をサポートするスタートアップスタジオ事業も展開していくビジョンもある。
「VCは主に資金提供を行いますが、我々はハンズオンでサービスそのものを共に立ち上げていく役割を担っていきたいと思っています。『エモミル』も含めてホールディングス的なスタートアップ集団になることも視野に入れています」と下崎氏はビジョンを口にする。

同社のスターティングメンバーは全員が元セーフィーの新規事業部門という顔なじみで、自ずと距離が近く意思疎通もスムーズという関係性がある。今後人が増えていく中、組織風土づくりの基軸として共有を図っていく価値観は、差し当たって次の2点を打ち出していく。

●透明性
●アジャイル

その考えについて、下崎氏は次のように説明する。
「会社に関する情報は全てオープンにし、自らどうすべきかを判断し動けるカルチャーをつくりたいと思っています。その際も、まずは行動し改善を重ねていくアジャイルなスタンスを取ることを意識し、スピーディーな意思決定と行動を重視していきます」

一方で、スケールさせていくためにも個人主義に走ることなく、チームワークを意識することも重視する。その点で、「働き方としてはオフィスワークも在宅も基本的に本人の自由だが、何か議論したいという時は自然と会社に集まって顔を合わせることが多い」と下崎氏。

また、毎日30分のオンライン朝会を行い、進捗状況等の共有を小まめに行っている。リモートワーク同士の日常的なコミュニケーションも、チャットやWeb会議ツールをうまく使って距離を埋めている。さらに、全員が日々新しいことを学んだ内容は、ナレッジ共有ツールを用いて学び合える仕組みがある。今後メンバーが増えても、一体感や求心力を高めていくために、目指すゴールやビジョンを常に共有する機会もつくっていく。
「先日、私の自宅に全員がお酒などを持ち寄って、ホームパーティー風の決起集会を行いました。メンバー同士、プライベートでも仲がよいということもありますが、今後もこうしたカジュアルな場をつくっていきたいと思っています」（下崎氏）。

そんな同社が求める人材像について、下崎氏は次のように期待を寄せる。
「新しいサービスを生み出す上で、結果がはっきりしないことに日々チャレンジしていくことになります。そうしたことでも前向きに楽しめるような人や、チームを大切にしてお互いに高め合っていけるような人に加わってほしいと願っています」