株式会社Xアーキテクツ

ITエンジニアが自分らしく働ける透明性の高い労働環境を目指して、株式会社Xアーキテクツは2022年9月に名古屋市で設立された。いわゆる「高還元SES」を名古屋で広めることをミッションとしているベンチャー企業だ。

企業が使うシステムを開発するSI（システムインテグレーション）業界は、長年にわたって“多重請負構造”と“SES”で成り立ってきたのは、エンジニアなら誰もが知るところであろう。企業からシステム開発を受けるSIerを「元請け」と呼び、元請けのSIerにエンジニアを“技術力”の名で貸し出しているシステム開発会社を「2次請け」、さらにその2次請け会社へエンジニアを“技術力”の名で貸し出している「3次請け」。時には、4次請け・5次請け……と続いている。

この多重請負構造があるおかげで、SIerやシステム開発会社は大きなリスクを負うことなくプロジェクトを推進できる。しかし、現場で働くエンジニアからすれば、多重請負構造があるおかげで年収が上がらず、キャリアアップが阻害されるリスクが高まる。そんな中多重請負構造からエンジニアを救い出そうと考えているのが、株式会社Xアーキテクツなのだ。

「外資系の大手SIerで働いていた私は、多重請負構造がもたらす不自然な業界の慣習をたくさん見てきました。例えば、元請けのSIerが8億円で請けた案件を、1億円で4社の2次請けシステム開発会社に流す。2次請けの会社がさらに3次請けの会社から5000万円で“技術力”の提供を受ける。40人のプロジェクトで元請けのエンジニアはたったの3人。残りの37人は2次請け・3次請けの会社に所属するエンジニア。3人で4億円を持っていく元請けはもちろん、2次請け・3次請けの会社もエンジニアから“マージン”と称する利益を得ています。8億円のプロジェクトを進めているエンジニアの年収はいくらでしょうか？」（代表取締役・梅田 源）

エンジニアに「高還元」を約束するXアーキテクツ。エンジニアが収入をアップさせて、豊かな人生を歩めるようにするため、4つの観点からこれまでのSES会社とは違う経営を志す。

一つ目は「高還元」。SES業界のマージン率は平均36％といわれている。80万円の単価で働くエンジニアの場合、税引き前の給与金額は「約51万円」。ここから所得税や住民税などを控除され、手取りは「約40万円」といったイメージとなる。

Xアーキテクツでは「マージン率20%以内」を目標に掲げており、その分エンジニアの給与が上がりやすい。顧客から受け取る単価情報、会社運営において必要な販管費も社内で共有し、フェアで透明性の高い賃金制度を作ることで、エンジニアが納得して働くことができる環境となっている。

二つ目は「教育制度・紹介制度」。エンジニアがスキルアップすると市場価値が上がり、SESの単価が上がるため、どのシステム開発会社も資格取得のサポートや資格取得手当を支給している。またIT業界ではIT資格を取得すると一時金が支給されるのが一般的。その点、Xアーキテクツはエンジニアが資格を取得すると「毎月の手当」が増える。エンジニアの努力を“買い取る”のではなく、給与に反映させベースを上げるというわけだ。

紹介制度（リファラル採用制度）においても、知り合いのエンジニアを紹介すると一時金が支給される制度が一般的だが、Xアーキテクツでは、紹介した人材が稼働している限り毎月「リファラル採用手当」を支給している。

三つ目は「案件選択」。Xアーキテクツではエンジニア自身が案件選択の主導権をもっており、自身が描く「キャリアプラン」に沿って働くことができるため、スキルアップ・ステップアップ・収入アップにつなげられる。さらに、Xアーキテクツは、エンドユーザーへのエンジニア提供と、元請SIerでの案件までしか扱わないと公言している点も特徴的だ。

四つ目は「法令遵守」。多重請負構造の慣習のなかで、多重派遣や偽装請負などグレーゾーンでの取引下で働いているエンジニアがたくさんいるのが実情だ。Xアーキテクツでは、コンプライアンスを守る法令順守のSESを宣言しており、法令で指定されている必要な書類を取り交わし、順法精神を高く持って業務にあたっている。

名古屋地域で働くエンジニアの待遇改善を目指しているXアーキテクツ。では、「高還元SES」はなぜ可能なのだろうか？
その答えは、親会社である株式会社テスクにある。Xアーキテクツを立ち上げた梅田代表は、テスクの代表取締役社長でもある。

「当社が高還元SESを実現できるのは、テスクと多くの資産を共有しているからです。Xアーキテクツの営業や採用担当者は必要最低限の人数にします。リソースが足りない分は、テスクのメンバーがサポートします。バックオフィスもできる限り簡素にして、テスクと一緒に処理できるように組織を設計します。オフィスもテスクの自社ビルなので固定費はかかりません。そして、代表の私は無給です。」（梅田氏）

Xアーキテクツの案件も、テスク案件を軸に固められる。流通業の基幹業務システムの構築に特化した開発会社であるテスクは、直販体制を強みにしている。下請け仕事を一切受けず、日本全国のエンドユーザーからの直請け案件ばかりをこなしている。

「テスクの業績が好調なこともあって、Xアーキテクツのメンバーにもテスクのプロジェクトをサポートしてもらいます。その他、テスクのクライアント先への技術力の提供や、クライアント先の社内DX推進を内部から支援する案件など、元請けの案件も予定しています。また、中部地区の多くの一般企業への技術力の提供も想定しています。テスクの仕事、テスククライアントの仕事、中部地区の一般企業の仕事、、、この3パターンがあれば、稼働率も高められます。あとはエンジニアの希望に添って、必要な案件を探すことも考えています。」（梅田氏）


親会社であるテスクの案件を中心にSES事業を始めることは非常に大きな意味がある。

「名古屋で高還元SESを始めれば業界が変わります。もしテスクが名古屋のSI業界で事業展開する会社なら、業界全体のことを考え、“忖度”しなければならないかもしれません。しかし、テスクはエンドユーザー直請けでやってきた会社ですので、名古屋のSI業界とは関係性が薄く、業界に気を遣う必要はあまりありません」（梅田氏）

高還元SESは、エンジニアにもエンドユーザーにも、そして親会社のテスクにもメリットがある。だから、梅田代表は名古屋で初めての高還元SESを立ち上げる決意をしたのだ。

「優秀なエンジニアがみんな高還元SES会社で働けば、中部地方のIT業界は変わっていくと考えています。東京では高還元SESの会社が現れていますが、名古屋にはまだありません。年収500～700万円のエンジニアの年収を600～800万円に引き上げます。さらに、Xアーキテクツでスキルを磨けば1000万円プレイヤーを十分に目指せると思います」（梅田氏）

Xアーキテクツは生まれたばかりの会社で、まだ所属エンジニアもほとんどいない。通常、SES会社の立ち上げフェーズの会社には「経営が安定しない」「仲間が少ない」「福利厚生が充実していない」などデメリットがある。しかし、ここでも親会社のテスクがあるおかげで、SES会社の立ち上げ期のデメリットも解消される。

「福利厚生は上場企業のテスクと同水準。テスクの案件にアサインされている間は、テスクのオフィスで働くことになるため、仲間もたくさんいます。テスクは社員間の交流を大切にしている会社。社員旅行、ビアガーデン、ソフトボール大会など、一年を通してさまざまなイベントもあります。チャレンジを推奨するカルチャーがあるため、若手もベテランも新しい仕事にどんどんチャレンジしています」（梅田氏）

テスクはエンジニアへの投資を怠らない会社でもある。資格取得支援や快適なオフィスの提供は、エンジニアの働き方を豊かにすることで、会社に還元されると考えているからだ。

2020年9月に完成したテスクの本社オフィス「TPBビル」は、「2021年度　第34回日経ニューオフィス賞」の「中部ニューオフィス奨励賞」を受賞した、創意と工夫にあふれ快適かつ機能的なオフィス。広いカフェテリアや屋上にテラスもある。屋上テラスではバーベキューもできるとか。Xアーキテクツで働けば、名古屋でも有数の恵まれたオフィス環境で働ける。

「エンジニアがスキルアップすれば、会社の利益にもなります。働きやすい環境を提供すれば、エンジニアは長く働いてくれる。エンジニアへの投資は会社に取ってメリットしかありません」（梅田氏）

この先も、多重請負構造やSESがなくなることはないだろう。全国のSES業界を変えることはできないかもしれないが、名古屋のシステム業界で働くエンジニアを一人でも多く幸せにできると、Xアーキテクツは考えている。

「名古屋への移住も大歓迎です。東京・大阪に次いで、日本で3番目に経済規模が大きい街。生活で不自由することはありません。それでいて、東京に比べ物価が安くて広い家に住めます。通勤時間1時間以上の人は名古屋には少ないです。東京の方がエンジニアの年収相場が高いのは事実ですが、高還元SESで年収を上げれば、東京で暮らすよりも豊かな生活ができるかもしれません」（梅田氏）