起業する前のキャリアについて教えてください。
新卒で銀行に入行し、本部営業部でシステム系のデータのマネジメントを手掛けていました。金融機関は情報産業なので、データ管理によるお客様のアセット状況の把握や営業の効率化がミッションでした。そのような中、インターネットによる技術革新のビッグウェーブがやってきました。銀行には情報が沢山あり、その管理が煩雑だったのですが、インターネットの技術を応用したら、案外簡単にデータベース化に成功したのです。 そこからネット系のプロジェクトは、私が任されるように。例えば、融資や稟議に関するシステムは、2000年前後に私一人で開発したもの。現在も使用されているシステムの原型となっています。また、銀行合併時のマネジメントシステムも開発しました。当時、ベンダーに頼むと5億円規模のビッグ・プロジェクトでしたが、私は「ムチャ振り、歓迎!」というタイプ。かえって闘志が燃えて、3カ月で完成させました。
起業を考えたのは、何がきっかけでしたか?
エンジニア経験を重ねるうちに、「あの人の困りごとを解決したい」と相手の笑顔を思い浮かべながら開発するようになっていました。それが、もっと多くの人の力になりたいという思いに繋がり、独立を決意。起業の準備として、会社の仕組みを知るためにコンサルティング会社で約2年間修業し、2003年に当社を設立しました。以来、ネットとデータベースを使って情報を繋ぐシステムやサービスを、お客様のニーズに合わせてスクラッチ開発で提供しています。 不動産領域に踏み込んだのも、お客様のご要望がきっかけです。「不動産業で一番大事なのは仕入れだ。いい仕入れができる情報探知機を作ってくれ」という一言からでした。優良物件が手放されるのは、相続税等で資金が必要になる時。それなら登記簿謄本をデータベース化すれば良いのではないか、という発想から、現在の『不動産チェッカー』に繋がる『不動産レーダー』が生まれました。
今後の会社のビジョンについて、どのようにお考えでしょうか?
ネット業界の変遷は速く、大手プラットフォーマーであっても、10年後にそのポジションを保てるか分かりません。当社の『不動産チェッカー』は業界から大きな反響を呼んでいるプロダクトですが、このまま不動産に特化しようとは考えておらず、マーケットと語り合いながら、他領域にも事業を膨らませていく考えです。 というのも、ビッグデータは分析の方法を変えることで、様々な価値を生み出せるからです。当社は、日々「これができるなら、あれもできるのではないか」とトライ&エラーを繰り返しており、その成果の一つひとつがライブラリとなっています。このライブラリを他領域にも活用することで、様々なプロダクトが製作可能です。AIによるデータ分析にも積極的に取り組みます。それによって、よりライブラリを充実させつつ、幅広い領域に事業を展開していく予定です。
お仕事で大切にしていることは何でしょうか?
私達の仕事は、複雑さとの戦いです。お客様の要望にやみくもに応えるだけでは、システムはどんどん煩雑になり、重たいものになります。そうならないように、アーキテクトをいかにシンプルに、分かりやすいものにするかという点に注力しています。 また、シンプルにするためには、お客様の業務やお困りごとの本質を突く必要があります。そのためには、お客様のことを深く知らなければなりません。当社は、お客様と直接取引しているため、そのチャンスが多いと言えます。何より、「あの人の笑顔が見たい」という思いが強くなったのも、相手を深く知ろうとしていたからだと思います。 このようにして余計なものを最大限省いたシステムは、課題の本質に届くソリューションになります。そのため、様々なデータ分析に応用できるライブラリにもなるのです。今後も当社は、シンプル化する技術と深い顧客理解の合わせ技で、新たなシステムやサービスを開発していきます。
御社への転職を検討する読者にメッセージを。
当社で働くメリットは、新しいことに対し、新しい技術でスクラッチ開発できる点です。ゼロからのものづくりなので、どんどん実験してほしいと思います。 実験ですから、失敗も付き物です。一般的に、「失敗は悪いもの」という印象があるかもしれません。しかし、当社は真逆。「失敗しないことがカッコ悪い」という考え方です。なぜなら、失敗しないのは挑戦していない証拠です。失敗から気付きや学びがあり、良い質問が生まれます。「失敗するな」と言われたら、“仕事”ではなく単なる“作業”になると思います。 特にスピーディーな開発は、早く失敗して、早く次の手を考えることから実現するもの。その高速サイクルが、新たなイノベーションを生むのです。この考え方は、シリコンバレーのカルチャーにも通じます。ぜひ“日本のシリコンバレー”で、共に成長していきましょう!