株式会社Eye Universe

株式会社Eye Universeは、美容業界向けに最先端AIテクノロジーを活用した革新的なプロダクト『i Producer』を提供するスタートアップである。

美容業界には、次のような課題がある。
顧客が美容院を替えた理由として、「ヘアスタイルが気に入らない」「接客態度が悪い」が上位を占めている。つまり、指名継続のためには、事前に顧客の好みや悩みなどの「問診」に基づく施術や心地よい接客スキルが重要であるということだ。また、再来店促進には施術後のフォローアップも不可欠である。しかしながら、簡単ではない問診ノウハウは先輩に教わりながらも自ら学んでいくしかない上に、初回来店客の問診時間が3割程度を占めるなど長く、美容院の回転率向上に影響を及ぼしている。また、施術後のフォローアップにも膨大な手間が掛かる。
にもかかわらず、美容業界に関わるWebサービスとして、来店前にカウンセリングを行ったり来店後のコミュニケーションを支援するようなものは見当たらない。あるのは、新規顧客向け予約サイトや予約管理ツールばかりだ。こうした状況を改善すべく開発されたのが『i Producer』である。

『i Producer』は、“バーチャルヒューマンAI”を作成・運用するプラットフォーム。美容師ごとにパーソナライズされ、アバターの姿をした、いわば“クローン”が美容師本人に代わって自動的に問診やアフターフォローを行うことができる。利用の流れは、次のとおりだ。
顧客がサロンのHPや美容師のSNS等のチャネルにアクセスすると、API連携した『i Producer』が立ち上がり、チャット上で問診を開始。そのまま予約まで行う。施術当日、当該美容師は問診の要約を確認して施術を行う。施術後、顧客の悩みなどに関わるアドバイスも自動的に行い、次回の来店に繋げる。したがって、問診やアフターフォローにかける時間を削減し、より多くの顧客に対応できる時間を抽出するとともに、最重要のリピートに繋げる効力を発揮するのだ。これによって、美容院の売上拡大に大いに貢献する。

このAIには、15年以上の美容師経験を持ち、年間1億2,000万円を売り上げる“カリスマ美容師”として知られるEye Universe代表の森越道大氏の全ノウハウがデータとして投入されている。その上に、ユーザーとなる美容師独自のノウハウを投入することでパーソナライズする形だ。
「まずは美容業界向けにスタートさせますが、この『i Producer』はあらゆる業界のエース人材のクローン化による人材育成などにも幅広く展開して行けると考えています。このようなプロダクトは、他業界向けが海外にいくつかありますが、美容業界向けは見当たりません。当社がいち早くスタートさせ、この世界をリードしていきたいと思っています」と森越氏は意気込む。

同社創業の経緯は、次のとおりだ。

森越氏は、進学校に入学する目標を果たすと次の目標を探すようになり、“カリスマ美容師”への転進を決める。美容専門学校を卒業後、有名サロンの「GARDEN」に入社。前述のとおり、年間1億2,000万円を売り上げる“カリスマ美容師”に駆け上がる。
「もちろん施術面も大きいと思いますが、問診やアフターフォローに相当手間を掛け、ブログも10年以上書き続けて集客に繋げてきたのです。こうした地道な努力があっての成果だと自負しています」（森越氏）。

2020年には、「あなた以上にあなたの髪を想う」とのコンセプトを掲げた「SENJYU」チームをGARDEN内に立ち上げる。SENJYUとは「千手観音」から取ったネーミングで、“多くの手で一人の顧客の髪を守る”スペシャリストによるチームだ。それとともに、自身が蓄積してきたノウハウを整理し、仲間の美容師が活用できるようにシステム化する。2022年には株式会社SENJYUを設立して独立し、プロフェッショナルチームが自店舗を持たず、他社と協働する形で全国の美容室で施術を行うスタイルに転換する。

そんな森越氏は、AIが本格的なブームになると、美容界にも活用されるようになると予測。そして、2020年から大学とカリスマ美容師のクローンAIの共同研究を始める。
「美容師は技術やセンスが重要でAI化は難しいと言われていましたが、3年以上の共同研究でクローンAIを形にすることができました。これで、お客様の自宅でのケアなどでいつでも悩みを聞ける“寄り添い型カリスマ美容師AI”が提供できるようになります」（森越氏）。

そして、2023年6月にそのプロダクトとなる『i Producer』の開発・運用やビジネス展開を手掛けるEye Universeを設立したという経緯だ。それとともに、同年4月に（一社）デジタルサロン協会を立ち上げ、美容院だけでなく関連アイテムのメーカーや商社、美容学校等も含めた業界としてデジタルテクノロジーへの取り組みを推進する枠組みをつくった。「美容業界向けのプロダクトとして、外の業界につくらせるわけにはいかないという矜持もある」と森越氏は話す。

『i Producer』の優位性について、日本アイ・ビー・エムやアビームコンサルティングを経て同社にジョインした取締役の南氏は次のように話す。
「美容業界は個人や小規模事業者が乱立していてデータを収集しづらい面があり、参入障壁は高いと言えます。その点、当社は森越という強力なインサイダーが主導し、内部でデータを取って進めることができます。加えて、約3,000名の賛同美容師を集めるデジタルサロン協会という見込み顧客基盤があります。これらは、非常に大きな強みだと自負しています」

今後の成長戦略として、グローバル展開を視野に入れ、権威のある国際的資格運営機関と連携してディプロマの発行・運営も行う。まずは多くの日系美容院チェーンが進出している中国市場がターゲットだ。
「中国では日本流のサービスに付加価値があり、それを証明する資格には高いニーズがあると見込まれています。このディプロマを武器に市場開拓を進めていきます」（森越氏）。

そんな同社は、2026年度に売上20億円・営業利益3.3億円を計画。1億円規模の出資も確実にし、2028年までのIPOも目標に掲げている。

2023年10月現在、同社のコアメンバーは森越氏や南氏など4名、およびAIに精通した技術顧問。それに加えて仲間のエンジニアなどが業務委託として加わり、10名ほどのチームで運営している。

チーム運営の基軸は、次の3つの方針だ。
1つ目は、ユーザーファースト。「SaaSなどのプロダクトは、ユーザーのニーズを徹底的に考えて対応しないと使われない」（南氏）からだ。そして、ユーザーに使われることでユーザーの収益拡大に貢献できることを最終目的としている。

2つ目は、フラットで率直なコミュニケーション。リモートワークで参加するメンバーも多い中、できるだけ多くのメンバーから知見を取り入れることで価値のあるプロダクトやサービスが実現できるとの考えがある。「役職や立場など関係なく、誰でも率直に発言できる心理的にも安全なカルチャーをつくる」と森越氏。

3つ目は、成果に報いること。「現在はエンジニア主体のチームであるが、優れたUI/UXのプロダクトをつくり、ユーザーの評価に繋がる成果を挙げたメンバーにはできる限り高額の報酬で報いたい」と南氏は強調する。

設立されたばかりの同社は、こうした指針をもとにこれから社内制度を整備していく段階にある。今ジョインするスタートアップメンバーは、こうした会社づくりにも中心となって関われるメリットがあるだろう。

なお、マネジメントポリシーについて、森越氏は次のように話す。
「本気でGAFAのような存在になることを目指しています。そのためには、常に時代変化に適応し、組織を変化させ続ける必要があるでしょう。そんな組織運営は、未来志向のあるプロフェッショナルだけが集まって、ワイワイ言い合いながら自律的に進めていくイメージです。また、私はGARDENでもマネジメントを手掛けていましたし、今も自らのSENJYUでマネジメントをしています。SENJYUはスタート以来一人も辞めていませんが、根底には愛情があって、経済面でも精神面でもメンバーを大事にしていると自負しています。このEye Universeでも同様に運営していきます」

社員数が一定規模になった段階で、合宿や社内イベント等で結束を深めていく予定だ。
そんな同社が求める人材像は、次の3点。
①エンドユーザーや業界への貢献を考え、成果を求めて働ける人
②仲間と助け合って膨大な業務に取り組んでいける人
③自らやるべきことを考え、自走できる人
「そして、正直で自責的であり、周囲に愛情を持って接することのできる方。ぜひアクセスしてください！」と森越氏は呼びかける。