ネットチャート株式会社

ネットチャート株式会社は、電気通信事業者IIJの100%子会社であり、ICTインフラ構築やセキュリティプロダクト提供、医療・ヘルスケアICT、研修・教育等、幅広い事業を展開している。中でも事業の柱となっているのが、ICTインフラ構築事業であり、特徴の一つといえるのが、「ゆりかごから墓場まで」一貫したサービスを提供している点だ。

「お客様がインフラ環境を使って何を実現したいのか――その目的に最適なインフラ環境を模索して提案するところから設計、機器の調達、工事、そして必要のなくなったパソコン等IT機器の廃棄まで全て対応しています」（代表取締役社長・楠本和弘氏）。
法人の場合、パソコンは産業廃棄物となり、最終処分まで把握することが義務付けられている。そのため、きちんと廃棄処理したことを証明する証明書が必要になる等、処分するだけでも手間がかかる。そこまで含めて丸ごと対応してくれるところは、クライアントから好評だという。

ただ、それ以上に評価されているのが、工事品質だ。同社はこの業界で30年以上にわたって蓄積してきたインフラ構築に関するノウハウをマニュアル化し、動画にしているという。そもそも同社は、ネットワークインフラ企業ならではの実践に即した質の高い講座等を提供する研修・教育事業を行っており、人材育成に関する見識も深い。
こういった知見を集約してつくられたマニュアル、社内育成制度、チーム制による先輩からの実践的な指導等を通じて、工事品質を高めるスキルを着実に受け継いできた結果が、工事品質に表れているわけだ。

工事品質へのこだわりは、自社でLANケーブル等の部材を開発している点にも感じられる。例えば、超細径LANケーブル『eco-patch』は“よれにくい”構造になっている。「それがどうした」と思うかもしれないが、データセンター構築ともなると何千、何万というLANケーブルを接続することになり、「よれを直す」というひと手間が省けるだけで、作業時間が大幅に削減できるのだ。作業時間の短縮はコストの削減になり、同社の競争力強化に繋がっている。

同社はIIJの子会社であるが、クライアントと直取引を行っているPJも多い。その比率は、IIJ案件が4割であるのに対し、ダイレクトユーザー案件が6割に達しており、ユーザー数も2,000社を超えている。この実績こそが、同社の競争力の高さを物語っているといえるだろう。

さらに、事業所の移転やレイアウト変更、工場の新設、海外進出等が発生すれば、必ずインフラ構築が必要になる。サービスのクラウド化や電子帳簿保存法への対応等、新たにインフラ環境を整備、構築しなければならない状況はこれからも続いていく。この環境下で、同社の高い競争力は大きな武器になるはずだ。

今後、確実に伸びていくIoT分野においても、同社は既に実績を築きつつある。例えば、顔認証や異常温度検知と入退室管理、勤怠管理システムと連携させたセキュリティソリューション『SenseThunder』や、既設のIPカメラと接続して高度な人物解析を実現する『SenseNebula』等のソリューションサービスの提供を行っている。
「これからはIoTだといわれていますが、インフラを構築するのは簡単ではありません。その実現には、ネットワークと電気、リレー回路に関する知識が求められるからです。当然、顔認証システム等のプロダクトに関する知識も不可欠。恥ずかしながら、当社もインフラ構築の一部を外注しているのが現状ですが、現在社員教育に力を注いでおり、内製化に向けて歩を進めているところです」（楠本氏）。

また、IIJの子会社ということもあり、先進的な技術や大規模プロジェクトの経験を積むこともできる。例えば、現在IIJグループのクラウド基盤を活用して、村田製作所がインドネシアで交通量を見える化する「トラフィックカウンタシステム」によるデータ提供サービスを展開している。これはカメラやセンサーを駆使して、現地各道路における自動車のトラッキングから車種、混雑状況、天気等の情報を収集、データ化するのだが、そのIoTインフラ構築を担っているのが、ネットチャートなのだ。
「現在のところ、ジャカルタで二百数十カ所にカメラやセンサーを設置していますが、政府案件であり、今後エリアを拡大していくことも決まっています」（楠本氏）。

インドネシアは島が非常に多いのだが、ここでも同社の長距離無線+広域Wi-Fi技術が生きている。以前はISDNしかなくメールも使えなかった初島をWi-Fi化したのも、現在、辺野古で進められている工事現場でIoT機器が使えるようWi-Fi化しているのも同社だ。
「LANケーブルは最長100mという制限があるため、熱海から島までLANケーブルで結ぶことはできません。光ファイバーを通すとなると配管工事も必要になり、300m敷設するだけで1,000万円もかかってしまいます。でも、当社の長距離無線+広域Wi-Fi技術であれば、3分の1ほどの費用でWi-Fi化が実現できるため、お客様に喜んでいただいています」（楠本氏）。

IIJが国内26カ所、海外ではアメリカや中国、ASEAN地域等で展開しているデータセンターの構築も同社が行っている。このように、先進的な技術領域に触れるIoT関連プロジェクトや大規模なICTインフラ環境構築等、多様なプロジェクトを手掛けている同社であれば、幅広い経験と知見を身に付けることができるといえるだろう。

同社は、2018年から2022年度までの5年間で従業員が121%に増え、150名ほどになった。ところが、離職率は約5%と、IT業界では驚くほど低い。その理由は、同社が「長く働き続けてもらうための環境整備」に力を入れているからだ。

例えば、テレワークは当然。子育て中の社員のために、コロナ禍前からキッズルームを設置している。親=社員の了承を得て、大画面モニターとゲームも入れていて、子供達に喜ばれているとか。バーベキュー等の社内イベントも活発で、社内にはお酒が常備されている。業務終了後、二人以上であれば、自由にお酒を飲んでいいことになっているそうだ。取材日も社長が宮古島で購入してきた古酒の樽を開けるイベントが開催される予定で、60名ほどが参加するという。
「別に強制参加でもありませんし、先に帰っても構わない緩いイベントです。社員同士、居酒屋へ行くことも多いのですが、お店となると参加するのに抵抗のある社員もいるでしょう。でも、社内であれば、気軽にちょっと顔を出すこともできます。それだけのことで社員同士の距離が近くなるならいいじゃないですか」（楠本氏）。

代表自身がこういう考え方なので、社内では皆、「さん」付けで呼び合っている。役員同士も社員同士も役員と社員も非常に仲が良く、気軽に話ができる雰囲気があるのも同社の特徴だろう。

このような明るい社風だからだろうか、活躍している人達はみんな元気で、何事にも興味を持って自分から取り組む傾向が強いという。
「新しく入ってくる人も、自分から動ける人、自分の発想をぶつけてくれる人がいいですね。専門知識は入社してから学べる場があるので、インフラに関する基礎的な知識があれば十分です」（楠本氏）。

自分から興味を持って動くことは、さらに成長していく上でも大切な要素だと楠本氏は続ける。
「業界の進歩の一歩先を行くことができれば、当社はもっと大きくなれます。そのために必要な布石は、これからの5年間で打っていくつもりです。そこに寄り添ってもらえる心強いメンバーが加わってくれたら嬉しいです」

IIJの子会社という強固な事業基盤の下、気心の知れた仲間達と一つのチームとなって、自社のさらなる成長と自身の成長を目指していきたい――そんな人には魅力的な環境が同社にはある。