株式会社バージョン・ラボ

株式会社バージョン・ラボは、静岡県掛川市を拠点に、自社パッケージの開発と販売、サポートを主事業とするIT企業である。1989年7月の創業以来、地元静岡県を中心に堅実な事業運営を続けている。

現在の主力製品は、通信販売の受注管理システム『fun order』だ。食品製造業を中心に、全国約200社（2024年4月現在）で稼働している。最大の特徴は、オフライン、オンラインを問わず、あらゆる販売チャネルの受注から出荷までを一元管理できることだ。楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazon等のECモールや、「カラーミーショップ」「makeshop」「ショップサーブ」「futureshop」といったECカートシステムに対応するとともに、電話注文、FAX、ハガキ等のオフライン注文、さらに実店舗での販売にも対応する。

『fun order』はECが普及する以前から、カタログやチラシ等の紙媒体を使った通信販売が盛んに行われていた製茶業界の販売管理システムとして開発されたシステムをベースに、あらゆる業界に対応できる汎用システムとして開発された製品だ。そこが一般的なEC販売管理パッケージとの差別化に繋がっている。電話やFAX等で受け付けた注文を入力し、出荷するまでを一元管理。電話と連携するCTI機能を実装しているため、電話で注文を受ける時の対応もスムーズにでき、ミスも防げる。また贈答向けの注文管理機能も実装。贈答履歴が蓄積されるため、次回オーダー時に「誰に何を送ったか」といった問い合わせにも即座に対応可能だ。

このようなお茶の通信販売向けに開発した機能が、自社で製品を作り、販売する食品製造会社等にも重宝がられているのである。

またデータの利活用機能も充実している。全チャネルの販売データの集計・分析機能や、販売促進管理機能を備え、DMの効果測定もできるため、商品計画や販売戦略の立案にも活用可能だ。クラウドPOSレジとのデータ連携によって、実店舗と通信販売のデータを集計し、販売促進に活用できるため、オムニチャネル化の実現にも一役買う。

このように充実した機能に加え、基幹システムとの繋ぎ込み等、顧客ごとのカスタマイズ要望に柔軟に応えていることも競合他社との差別化要因の一つだ。特にメーカーの場合、生産管理や資材管理、出荷管理等のシステムと連携する要望が多い。オンラインとオフラインの注文を一括で管理できるシステムは他にも存在するが、そのほとんどが大手向けの高価なパッケージである。中小向けがあったとしてもカスタマイズ非対応の製品が多い。それに対し同社の『fun order』はパッケージ本体の価格は低めに設定し、顧客ごとのカスタマイズ要望に応えている。

代表取締役・大場拓也氏が語る。

「コロナ禍を機に、通信販売の機能を見直そうという動きがありました。従来使っていたシステムに不具合や不満があり、ご相談に来られるお客様が少なくありません。基幹システム等のパッケージを販売するシステムベンダーから、セットで提案したいという引き合いも増えています」

同社は設立以来、静岡県の地場産業である製茶業に特化した業務システム『茶宴』を軸に発展してきた会社だ。『茶宴』は製茶業の仕入れから製造、販売、在庫管理までワンストップで管理できる。製茶業は他の農産加工産業と比べ、特殊な計算や商習慣を持つ産業だ。そのため、一般的な販売管理システムや在庫管理システムでは対応が難しい。そういった特殊性ゆえ、業界に特化した業務システムが誕生し、広まっていった。現在では静岡県に限らず、京都や九州等、お茶の主要産地で使われている。導入件数は、製茶業向けシステムとして業界トップクラスだ。

そのような製茶業界における認知度の高さから生まれたのが、『fun order』のベースとなったお茶の通信販売向け受注管理システムだ。インターネットがなかった時代だったため、電話注文やFAX、ハガキ等で受け付けた注文を管理するシステムとして誕生。ただし製茶業界だけでは市場が限られているため、より広い業界に向けて販売ができるよう、お茶の販売でしか使われない機能を省いて汎用化したシステムを『通販天国』という商品名でリリース。オフラインの注文だけではなく、ECの販売管理機能も付加し、少しずつ現在の形へと近付けてきた。

販売を開始した当初は、『茶宴』によって認知が広まった製茶業界とは異なり、なかなか導入が広まらなかった。しかし、EC化が進み販売チャネルが多様化するに連れ、一元管理できるシステムを探し、問い合わせてくる通販事業者が増加。2010年代に入ると、システムベンダーからの引き合いも増え、農産品や水産品の加工食品や健康食品をはじめとする食品系の通販事業者を中心に、徐々に全国へと広まってきた。その間、数回のメジャーアップデートや製品名の変更を経て、現在へと至っている。

「この数年間は特に増収増益が続いています。しかし、北海道や四国、九州等、通販事業者が多い地域でまだ導入されていない地域もありますので、市場開拓の余地はまだまだ残っています。実際にお客様に使っていただくと、“便利になって助かった”という声を沢山頂きますので、引き続き、通信販売事業者の方々に貢献できるシステムを提供し続けたいと考えています」（大場氏）。

『fun order』『茶宴』共に、Windows OSのバージョンアップに合わせたシステム更新や、細かい機能追加・修正、約5年ごとのメジャーアップデートから、導入時のカスタマイズや導入後の運用サポート等は全て自社内で行っている。従業員数は、営業やバックオフィスも含めて合計10名。今後のさらなる事業拡大に向け、開発体制、サポート体制共に充実させる計画である。

設立から35年、堅実な経営を行ってきた同社。現社長の大場氏が10年前に経営を引き継いで以来、世代交代が進んでいる。開発を担っているのは、東京のシステム開発会社で官公庁や通信会社等の大規模プロジェクトを経験してきたCTO・福島幸宏氏を筆頭に、新卒採用の20代を含む若いチームだ。今後は、開発と共に顧客との折衝等も担える中間層を迎え、開発体制の強化に取り組む。

「少人数で事業を行っていますので、主体的に考えて動ける方を求めています。また、お客様との距離も近いので、コミュニケーション力は必須です」（大場氏）。

同社の魅力は、自社パッケージの開発に特化していることだ。パッケージの開発から、導入時のカスタマイズ、導入後の運用サポートまで100%内製で行う。少人数で組織の階層が浅いため、一人ひとりのアイデアや意見が反映されやすい。ベンダーを介した案件を含めて、エンドユーザーと直接コミュニケーションを取るため、ユーザー評価をダイレクトに実感しながら業務に取り組める。

また、誰もがアイデアや意見を出しやすいよう社内チャットを導入する等、風通しの良さを確保している。

さらにライフワークバランスも取りやすい。100%内製の自社製品で、仕様検討の段階からユーザーとコミュニケーションを取って調整するため、納期のコントロールはしやすい。そのため、残業や休日出勤はほとんどない。

社屋を構える敷地には駐車場も完備しているため、マイカー通勤も可能だ。毎日、長時間満員電車に揺られずに済むのは、地方都市ならではのメリットだ。

『fun order』は定期的なバージョンアップに加え、今後はクラウド化等、新規開発プロジェクトも控えているため、自身が持つ技術やアイデアを生かす機会は十分にある。落ち着いた環境で腰を据えて働きながら、自分らしく力を発揮したい、キャリアを積みたいと考えている人には好条件が揃う。同社は、U・Iターンを含め、静岡県内での就労を希望するITエンジニアの応募を待っている。