株式会社DNPハイパーテック

株式会社DNPハイパーテックは、京都を拠点とするソフトウェア開発会社だ。研究開発型企業やベンチャー企業が集積する京都リサーチパークにオフィスを構え、少数精鋭の組織で独自性のある事業を展開している。設立以来30年間、一貫して自社パッケージ製品の開発を行ってきたが、現在は、Windowsパソコンやスマートフォン上で動作するアプリケーションを不正な解析や改ざん行為（クラッキング）から守るセキュリティ対策製品『CrackProof』に全リソースを集中している。

『CrackProof』のユーザーはアプリケーション開発企業だ。ゲーム開発会社をはじめ、銀行やメーカー等の各種業界で導入されている。こういったアプリケーション開発企業では近年、様々なクラッキング被害が報告されている。業務用アプリケーションの海賊版流通、機器の不正制御、本人認証の不正回避、エンタメコンテンツ等の不正使用などである。

特に深刻なのがスマホのゲームアプリだ。クラッキングによって不正ツールが作られ、課金回避や不正操作、改造アプリ、エミュレータ上での解析・改ざん、位置偽装といったチートが横行している。解析ソフトや解析環境を紹介するサイトまであり、知識がないユーザーでも簡単にチート行為ができてしまう。

こういった状況があるためアプリケーションを開発する上でセキュリティ対策は不可欠だが、実際にはプログラムを作る上で十分なセキュリティ対策を実装することは、労力や時間、コストが嵩むため容易ではない。そのような悩みからアプリケーション開発者を解放するのが『CrackProof』だ。

開発済みのアプリケーションを、『CrackProof』のクラウドサーバにアップロードし、変換処理を行うことで強固なセキュリティ処理が施されるため、開発段階でのセキュリティ対策機能の組込み作業が大きく削減される。『CrackProof』で処理されたアプリケーションをダウンロードし動作確認すれば、アプリケーションを安全にリリースできる。『CrackProof』は、Windows、Android、iOSに対応しており、それぞれ製品ごとに年間契約でライセンス提供している。

現在、アプリケーションにセキュリティ対策機能を提供する製品は珍しく、『CrackProof』の堅牢性は導入先から高く評価されている。また、100％自社内開発の国産品のため導入後の技術サポートも充実しており、ユーザーの安心感にも繋がっている。

同社は1994年5月に京都で創業した会社だ。創業者はアイデアマンで、先駆的なIT製品を多数リリースしてきた。早くからセキュリティ対策技術に着目し、2005年にリリースしたのが『CrackProof』だ。
当時、スマートフォンは存在せず、Windows全盛の時代。Windows向けアプリケーションをターゲットとしたクラッキングが後を絶たず、セキュリティ対策に苦慮するソフトウェア開発者を支援するために『CrackProof』の開発に至った。

もともとは開発者のパソコンにインストールして使うオンプレミス型のサービスとして提供されていたが、クラウドサービスへと移行。爆発的なヒットのきっかけとなったのはスマートフォンの普及だ。ゲームを含めたアプリ開発の市場が急拡大する中、iOS版、Android版をリリースしたことで、導入数が飛躍的に伸び始めた。近年はさらに、製造業における産業機器や家電などのスマートフォンアプリとの連携、金融機関のバンキングアプリなど、導入シーンが急激に伸びて顧客層も拡大している。

2015年7月には大日本印刷株式会社（DNP）に全株式を譲渡して、新たな事業体制をスタートさせた。それによって大手メーカーとの取引もスムーズに行えるようになり、成長に拍車がかかっている。

代表取締役社長・友村潤一氏が語る。

「当社はこれまで、幸いにも地道に足で稼ぐような営業活動を行わずに導入数を増やしてきました。WEB経由の問い合わせをきっかけに『CrackProof』を採用していただくケースが多いのですが、例えば主要得意先であるゲーム業界では人材の流動が激しく、過去に『CrackProof』を使っておられた方が、転職先でもお使いいただくということもあります。」（友村氏）。

独自のセキュリティ技術を強みに参入障壁の高いビジネスを展開し、年間ライセンス契約によるサービス提供で安定した収益基盤を築いた同社。“セキュリティ対策技術の提供により、社会に安全・安心、そして信頼を届ける”というミッションと、“世界に選ばれるアプリケーションセキュリティツールのリーディングカンパニーになる”という企業ビジョンを掲げる。今後もこのミッションとビジョンに沿って事業を発展させていく計画だ。

研究開発部門に所属するエンジニアを中心に、営業、技術サポート、マーケティング部隊が一体となりユーザー企業の課題解決に取り組む。特にサービスの心臓部分である開発部門は、常に新たな対策や機能開発が必要とされており、外注先を使わずに、設計から開発、検証に至るまで社内一貫体制で計画的な開発を行っている。

現在の課題は開発リソースの拡充である。ますます高度化するクラッキング行為からクライアントが開発するソフトウェアを確実に守りつつ、拡大するニーズにも応え続けるためにエンジニアの採用を強化している。

同社がエンジニアに求めることは、一般的なソフトウェアの開発スキルだけではない。研究者マインドを備えプログラミングに没頭できること、セキュリティ対策への関心も重要な要素だ。

「プログラムを作ることが大好きで、開発に長く関わりたい。そんな技術者は大歓迎です。一方、セキュリティ対策技術に対して強い関心を持ち、技術習得に対する意欲はもちろんのこと、開発業務や日常生活においても、セキュリティに対しどのような意識で取り組んで来たのかも、評価の対象としています」（友村氏）。

同社が培ってきたセキュリティ対策技術は独自のものだ。独学で習得しようと思っても、参考にできる情報を入手することは難しい。技術習得のためには、入社後に業務を通して地道に身につける以外に方法はない。覚えが早いエンジニアでも少なくとも1年、平均的には2年間経ってようやく概要がつかめる、さらにある程度独り立ちするには3年の期間を要するという専門性の高い技術だ。

「それだけに得られるものも大きいです。セキュリティ技術を通して世の中に貢献できる。そんな働き甲斐のある仕事です。また社風を一言で言えば技術志向が強い専門家集団です。物静かで大人しい人が多いですが、打ち合わせに入れば各自しっかりと意見を述べます。このような当社に共感していただける方をお待ちしています」（友村氏）。

受託開発や派遣、準委任など、自社製品以外の業務は一切行っておらず、自社内で計画的に開発しているため残業時間や臨時出勤は皆無に等しい。DNPグループの安定した経営基盤の上で、業務に集中できることも魅力の1つである。平均年齢は30代半ば。女性のエンジニアも活躍する。京都に拠点を置く“アプリケーションセキュリティツールのリーディングカンパニー”。充実したエンジニアライフを送るには絶好な環境が同社にある。