株式会社ランドスキップ

デジタル窓、デジタル空間演出、デジタルサイネージ等の事業を手掛ける株式会社ランドスキップ。同社は2015年6月1日（景観の日）に「風景を変える」ために設立された。

何もない壁・天井に癒しの風景や空の映像を「連れてくる」デジタル窓『Window Air』やデジタル天窓『Window Sky』、空間演出と情報発信を同時に行う『LOOOK』など、最先端のテクノロジーを活用した他に類を見ないユニークなサービスを展開している。創業10年目を迎える現在、同社の製品は全国の医療機関をはじめ、ホテル、商業施設、オフィスビル、マンション、教育機関など、あらゆる空間に導入されている。

同社のビジョンに共感した大手取引先とのコラボレーションも数多く実現している。NTT東日本との『Window Air』共同販売により、機器・コンテンツ・ICT環境をワンストップで提供することが可能になった。ソニーマーケティングおよびジャパンマテリアルとの事業連携では、4K/8Kの高画質な風景映像の配信を実現。ほかにも国内大手企業との数多くの連携や実績を形にしている。

前項の事例からも分かるように、同社の事業スタイルはBtoB。特にメディカル領域では、デジタル窓のカテゴリーリーダーとして市場をけん引している。BtoCでもマーケットはあるように思われるが、代表取締役 CEO 下村一樹氏はBtoBに軸足を置く理由をこう語る。

「風景を心から求めている人にまずは届けたいと考えています。当たり前にみている風景のある日常は、実はかけがえのないものです。たとえば、外を出歩くことが難しい方、治療で大半をベッドで過ごす方、生まれ育った場所を離れざるを得ない方。そういった方がただ白い壁や天井を見るのではなく、季節の変化を感じられたり、あの風景をこの場所で感じられる環境をつくりたいです。」（下村氏）。

例えば先述したNTT東日本との提携では、ある介護施設に導入した『Window Air』とNTT東日本のWi-Fiを連携し、現地の季節や時刻と連動した風景を配信。夏の夜には花火を映し出す演出も施した。するとある男性入居者が目を輝かせたという。

「既に奥様は亡くなられていましたが、ご夫婦共に旅行好きだったそうで、『Window Air』を見ながらこう話してくれました。『昔はよく旅行に行ったけど、妻がいなくなって、自分も足が悪くなって、外を歩く気にもなれなかった。でもこれを見ていたら何かすごく元気になってきたよ。これはどこの景色かね？』その話を聞いた時、自分のやっていることは間違っていないと確信しました。施設やオフィス等多くの人が集まる空間に製品を置きながら、“一人ひとりの心に響く風景を届ける”を追い求めたいです。」（下村氏）。

このエピソードは、風景を見られない環境に置かれることがいかにストレスフルであるかを物語っている。最たる例が医療機関だ。放射線治療室や人工透析室、医院の待合室のようにそもそも風景がない環境で長時間拘束される患者のペインは計り知れない。そのことに設立当初から気付いていた下村氏は医療機関に粘り強くアプローチ。企業のオフィスやホテル、大規模複合施設への導入実績を築いたこともあり、近年ではメディカルからの依頼が急増している。

ビジネスパートナーや製品の利用者の共感はもちろん大切だが、何よりも欠かせないのは一緒に働くメンバーの共感である。同社のメンバーはどのような共感の接点を持って仕事に向き合っているのか。ここでは3名の入社経緯を紹介しよう。

セールス&マーケティングの田中寛大氏（山梨出身）は大学入学後にバックパッカーとして世界を回り、帰国後、2年生の時に観光施設事業を立ち上げた。その後同社の存在を知り、新卒で入社した。

「世界中のきれいな風景を見て回ったことで、自然というものに興味が湧きました。そこで自然をPRして観光客を呼び込むビジネスを立ち上げたのですが、上手くいきませんでした。そんな私にとって、『風景の流通』をビジョンに掲げる当社はとても魅力的だったのです。社長に頼み込んで入社させてもらい、宮崎県の案件（M.ReT宮崎 人工透析室）では社長と一緒に現地を訪問。お客様が宮崎の風景を使いたいとおっしゃったので、宮崎中を回って風景を撮りました。天井一面にその風景が映し出されたときは感動しましたね。」（田中氏）。

同じくセールス&マーケティングの植田克海氏（伊豆出身）は、都会で働く中で風景や自然を求めるようになったという。

「新卒入社したIT企業のオフィスでは、デザインという概念もないほど、ただデスクとPCが並べられているだけ。地元の伊豆でみていた窓から見える素敵な風景もなく、ただ隣のビルの壁が見えるだけでした。オフィスの閉鎖的な環境や都会の人口的な空間を変えるような商品を探していたところランドスキップを見つけ、これだ！と思い入社を決めました。」（植田氏）。

セールス&オペレーションの高瀬祐美氏（大島出身）は、前職で広報に従事していた時、撮影現場で素材を撮り集めている下村氏と出会う。話をするうちに意気投合し、同社に誘われた。「当時VRに力を入れていた社長に『360度の撮影に興味があります』と伝えたら『手伝ってくれないか』と。当社を設立してまだ数年というタイミングでしたが、社長が自信に満ち溢れていたので不安よりもすごく面白いことができそうという期待の方が強かったです」（高瀬氏）。

それぞれに同社や下村氏と共感の接点を持って入社し、活躍しているメンバー達を、下村氏は「小さなチーム、大きな仕事。」と表現する。「風景の流通」によって誰もが癒される社会を実現する。このビジョンに共感できることこそが、最も不可欠な資質なのかもしれない。