なぜ「風景」で起業されたのですか?
起業のきっかけは私の原体験から来ています。自然豊かな北海道で生まれ育ち、就職のため上京したときに、窓から見える灰色の風景に「なんだこのコンクリートジャングルは」と大きなショックとギャップを感じました。当たり前だと思っていた風景の価値を再認識したのです。 例えば、地元を離れて働いている人、病院から出ることができない人、窓のない場所で長時間過ごさざるを得ない人。様々な場所で、いつか眺めたいあの風景や、心に残る思い出の景色は求められていることに気づきました。 アップルやコンサル会社で働きながらもその想いは強くなり、なにより私自身が欲しいものを自分の手で作りたいと思い、プログラミングを学びながら「窓」の試作を重ねました。そろそろ会社にしようと考えたとき、6月1日がなんと風景の日(景観の日)だとわかり、「これはもう起業しろってことだろ!」と勢いではじめました。
はじめから事業は順調だったのでしょうか。
いいえ、全く売れませんでした。試作品を持ち歩きながら「新しい窓をつくって風景を届けます!」と営業に回りましたが、「風景を売る…?」とあまり理解されませんでしたね。事業計画を見せても「ビジネスにならなそう」という反応が正直多かったです。 まずはとにかく数を当たろう、名前を売ろうとピッチコンテストや展示イベントにも積極的に立ちました。まだ設置事例はなかったので、はめ込みでつくった写真ボードを持って「風景を連れてくる新しい窓です!」と宣伝していると、あるIT企業役員の方が足を止めてくれて「面白そう。うちのオフィスリニューアルしているから今度見に来て」と言って下さり、それがはじめての導入につながりました。 そこからは実物を見た方が、「いいですね!これはどこの製品?」と紹介が紹介を呼んで実績も増えていきました。おかげさまで現在10期目になりますが、当初はビジネスとしての勝算はありませんでした。ただ、自分が欲しいと思うものだから、きっと他の人も欲しいはずだ。この製品があればもっと世の中は良くなるはずだ。という確信はあったので、ここまで続けて来れました。
会社として大切にしている価値観を教えてください。
会社では4つの価値観を行動指針として定めています。 *以下抜粋 ①Draw Blue Sky ひとの心を動かす未来を描く。 ②Reality In Focus 鮮明なリアリティを追求する。 ③Be A Owner 自らの責任と覚悟を持って進める。 ④Do The Right Thing 正しい心に従う意思と勇気を持つ。 前半二つは、自分たち自身がワクワクするような製品やお客様の目が輝くような提案をしよう、だからこそ実現性としてもビジネスとしても精度の高い基準を持とうということです。「風景を連れてくる。風景を作り出す。」という一見夢のような仕事をしているからこそ、圧倒的なリアリティが必要だということです。 そして後半二つは、ビジョンを実現するスタンスについての言葉です。当社は外部からの出資受けず、自己資本での経営を行っています。意思決定も自由にできます。だからこそ「正しい心」に従うことが大事だと考えています。ビジネスは大きければ大きいほど良いという考え方ではなく、自分たちのビジョンや信念と合っているか、自分の仕事のスタンスとしてやるべきかを常に考えています。
どのような資質を持っている方が活躍できそうですか?
やはり私たちのビジョン、そして実際の事業に共感してくれる方ということになるでしょう。 当社の社員には、美しい風景に囲まれて育ったという共通点があります。北海道、山梨、伊豆、大島…等、出身は様々ですが、例外なく風景がきれいな場所なのです。もちろんそのバックグラウンドを応募条件にしているわけではなく、結果的にそういう社員が集まっているだけです。何も世界遺産に登録されるような絶景でなくてもいいのです。ごく普通の名もなき風景であっても、その風景を「きれいだ」と捉えられる感性が備わっている方は、活躍するための資質を持っているでしょう。 あとは仕事に対してオーナーシップのある方、あるいはもっとオーナーシップを持ちたい方も向いていますね。 自分の仕事は自分で決めたい、どんな戦略を描いてどんな攻め方をするか、自分で考えて決めて動くのが好き。そんな方は間違いなく居心地がいいと思います。逆にいま組織のなかで不完全燃焼している、組織の縦や横の壁を息苦しく感じている方にとっても、その実力を最大限に発揮できる環境になると思います。
最後になにか趣味があれば教えてください。
娘との散歩、カメラ、猫と遊ぶ、サウナですかね。自分ひとりの時間や、家族と過ごすことが好きです。 私は家族と自分自身が一番大事だと考えています。もちろんビジネスは大事ですが、社員の健康を損なわないこと、会社のブランドを守ることが最優先事項だと考えています。 当社が外部からの出資を受けていないのもそのためです。爆発的な成長ではなく持続可能な繁栄。小さな会社で大きな仕事。こういった考えは、もしかすると一般的なスタートアップとは異なるかもしれませんが、私自身や一緒に働くメンバーが大切にしている価値観です。