notari株式会社

日本初のInstagram専用分析ツール「Aista」の進化版「Slooooth」、Instagram運用を支援する「Sloooothメディア」、次世代IT職種転職エージェント「TechClips」などを提供しているnotari株式会社。

「Aista」は、2015年6月に「通常版」をローンチ後、1カ月で約180社が導入するなどの成果を挙げた。そして7月に有料会員制の「プレミア版」を導入、マネタイズを開始し軌道に乗せた。主なユーザーは、広告代理店やInstagramをマーケティングに活用する事業会社だ。

「2017年5月現在、ユーザーは約2,000社を突破し、“日本最大級Instagram専門分析ツール”となりました」と同社を創業したCEOの今城博史氏は胸を張る。現在（2024年時点）は、「Aista」の進化版「Slooooth」を提供している。「Slooooth」は、Instagramの自社や競合のアカウントの分析および、市場動向の調査という大きく2つの機能を提供するツール。様々な分析が可能であるが、同社の強みとしては、そのバックボーンを支える「ソーシャルビッグデータ」であるとも言える。

「日本国内でもユーザー数がまだまだ増加しているInstagramは、いわば写真を投稿して“プチ自慢”をするSNS。ユーザーが、日常生活でどんなブランドの商品をどのように使い、どんな感想を持っているかを探ることができます。また、クチコミが派生する情報源にもなっています。そのように貴重なマーケティングチャネルといえるInstagramで市場動向の調査分析や自社アカウントの最適化を行える『Slooooth』は、これからのマーケティングに不可欠なツールの一つといえると思います」（今城氏）

生活者の情報を凝縮したと言えるInstagramの収集データを更に分析、解析し、これからも新しいサービスに結びつけていきたいと考える。「上げた収益は、どんどん新しいサービス開発に投じていきます」と今城氏は意気込む。

新サービスの開発ポリシーは、「エンジニアが誇りや情熱をもって仕事ができる」だ。そのポリシーは創業当初から今も変わらない。大まかな事業の方向性はあるが、サービスのアイデアや詳細を考えるのは、同社のITエンジニアだ。

エンジニアと日々過ごす中、また採用を繰り返し行う中で同社は「ITエンジニアにとって最適な環境とはなんだろう？」と考え始める。そして「現在のITエンジニアを取り巻く環境は実は恵まれた環境ではないのではないか？」「欧米に負けないサービスを日本発で発信するためにはどうしたら良いのか？」ということを考え始める。

「IT業界にいると気づかないですが、実はエンジニアの圧倒的多数は派遣エンジニアであり、言語、フレームワーク、経験によっては40才頃から緩やかに苦しい環境が始まっていくと感じました。またその構造自体が日本の技術レベルを十分に発揮されていない可能性があるとも感じました」（今城氏談）
そこで同社は次世代IT職種専門の転職エージェント「TechClipsエージェント（テッククリップスエージェント）」を2017年6月から開始。現在ではIT事業会社中心に1000社との取引を行なっている。

TechClipsエージェントの最大の特徴は何と言っても「キャリアコンサルタントがITエンジニアである」ということだ。キャリアコンサルタントは専任で、元エンジニアもしくは、現在も自らプログラムを書くメンバーだ。「大事なことは求職者の方にとって最適なキャリアは何か？ということを同じエンジニアの目線で共に考え、共に歩むことだと僕たちは考えています。せっかく自分が生まれた国ですから、日本がIT大国と誇れるように頑張っていきたいと思っています」

2014年12月に同社を設立した今城氏は、大手広告代理店系のネット広告代理店やWebサービスプロバイダで営業やプロデューサーとして働き、そこでWebサービスをつくりあげるエンジニアという職業の素晴らしさを実感する。

「しかしながら、アメリカなどと比べると日本のエンジニアの地位はまだまだ低いと感じました。一方、人材不足もあって、ちょっとできるだけでも一人前扱いされたり。日本では、エンジニアをきちんと評価できている会社は非常に少ないと感じたのです。また、私は日本という国が大好きなのですが、ものづくりが得意な日本にもアメリカなどにひけを取らず優秀なエンジニアがいるところを見せたいと思いました。ならば、エンジニアが思う存分活躍できる環境を自分がつくろうと考え、起業したのです」

社名の「notari」は、与謝蕪村の名句「春の海　終日（ひねもす）のたり　のたりかな」から取った。
「うららかかな春の日、穏やかな海では波がゆったり寄せては返すを繰り返しているという、のどかな情景を詠んだ句です。IT業界では、長時間労働が慢性化しているハードな環境で精神も病んでいる人が多いといわれています。そんな業界にあって、当社はこの情景のような“あったかい”風土を築いて、エンジニアに『ここで働きたい』と思ってもらえるような会社にしようとの願いを込めて命名しました。ローマ字表記にしたのは、海外展開も意識してのことです」と今城氏は説明する。

前述のとおり、新サービスの開発ポリシーは「エンジニアが誇りと情熱を持って仕事に取り組めること」。まさに、エンジニアがやりがいを持って開発に打ち込める環境を創ることが同社の企業目的なのだ。企業運営方針はすべてそこに立脚している。
例えば、組織。社長の今城氏も一営業担当として仕事をしている。

「サービス開発の大枠やローンチのタイミングは経営者の立場で決めるものの、サービスの内容や仕様、つくり方には、私はあくまでもメンバーの立場で意見を言うだけ。ほぼ完全に任せています。礼儀は守りつつも、フラットかつ率直に意見を言い合える環境ができています。」

今城氏が、メンバーは社長の指示などより自分がやりたいと思って取り組むほうがはるかに高いモチベーションで臨め、早くよいものができると体得しているからにほかならない。現に「Aista」は概念設計後2週間というスピードで開発できた。

また、「メンバーが責任持って業務を遂行することは、何よりの人材育成策」と今城氏。失敗を問わず、なるべく多くの機会にできるだけ大きな裁量を委ね、チャレンジさせることが人材教育の基軸だ。
定期的なミーティングも設けていない。少数組織を意識的に作っているため、必要があればその都度声をかければ済むからだ。

現在も社員数を組織が筋肉質である状態を保ちながら増員をしており、「Aista」のみならず、様々なサービスを作っていきたいと考える。
そんな同社が求める人材像は、「ビジネスマンとしての意識や信頼性が高い、プロの人材」と今城氏。
「エンジニアやスタッフに甘くする会社が数多くあります。しかし、そうならないための体調管理はビジネスマンとして当然の心得。チームに迷惑をかけることも考えてほしいと思います。私は、そんなプロと仕事をしたいと思っています。プロとは、経験や技術の多寡だけではありません。自分自身の行動や言動に責任を持つ人のことを言います」

TechClipsエージェント自体は社内にあるものの、カンパニー制を取り、社員自らが収益を管理している。ゆくゆくは事業部の多くをグループ会社化し、子会社の経営も社員にまかせていく方針だ。
「自分で将来起業したい人、自分のアイデアを形にしたい人、そういった人がチャレンジし続ける会社にしたいですね。小さく筋肉質な状態のチーム、会社が相互に連携を取りながら業務を行い、個々人の意見を形にできていくことが私の理想です」