株式会社アートピース

「“クリエイティブ×ストラテジー”で確かな成果を」とのスローガンを掲げ、EC総合支援事業を手掛けている、株式会社アートピース。

同社が提供しているのは、ECサイトの企画・構築・運営、ブランディング、ECコンサルティング、Webプロモーション、事業戦略サポート等のEC運営支援全般。クライアントは約10社で、アパレルやジュエリー、バッグ、コスメ、美容、家電といったファッション系のD2Cを得意としている。
「私たちが創るものはサービスやプロダクトそのものではなく、人がリアルとWeb上を自然に行き交いできるよう設計し、それによって生み出される体験を創ります。そして、体験を通して感動を与えられる会社を創造する」（同社のミッション）

「元々は2008年にファッションブランドのホームページ制作やカタログ制作等のクリエイティブを提供する事業でスタートしましたが、そのうちにECの構築や運用代行も手掛けるようになり、さらにクリエイティブだけではなかなか売れないということから、ブランディングやコンサルティングも手掛けるようになりました」と代表取締役の新井哲雄氏は説明する。

同社は、イニシャルでのEC構築による報酬に加え、クライアントとの間で集客や売上の増加に応じた報酬を受け取るインセンティブ契約を結んでいる。このことにより、10年以上にわたってクライアントと共にどうすれば業績が上がるかというノウハウを探求し、ナレッジを蓄積していることが最大の強みとなっている。
「目標から逆算して必要なマーケティングやプロモーション、クリエイティブ、オペレーションの諸施策をワンストップかつトータルに設計・提案し運営することが可能です。同業大手の場合は担当者の力量差で成果も変わると思いますが、当社は一つのチームとして少数のクライアントに深く入り込んでサービスを提供するスタイルなので、高い成果に繋がっていると自負しています」（新井氏）。

その成果は、直近5年間の売上推移が前年比105～113%で推移している点に表れているといえるだろう。

今後の成長戦略としては、今まで以上にECブランディングを軸にECの包括的なコンサルティングにさらに力を入れると共に、越境EC等の海外展開やクライアントの人材教育等の新規事業を展開。2030年までには、自社独自の商品・サービスも開発を行い、自社サービスとして提供していくことを計画している。そのビジョンは「e-Commerceブランディングのリーディングカンパニーとして中小企業の持続可能な成長に貢献する」である。

2022年1月現在、社員数は16名。平均年齢は33歳で、女性60%、男性40%という組織だ。
理念経営を進めているアートピースでは、「行動指針」や「APグランドルール（承認空間をつくるためのルール）」を掲げて組織風土づくりの基軸としている。

「自分の人生を自分でクリエイトできる人間づくり。学びの動機を見つけ出して自ら学ぶ姿勢を大切にする。常に知識をアップデートしながら業務に携わる。」という社風を重要視し、様々な制度や環境を整備している。より働きやすい環境を目指し、週休3日から就業可能という就業スタイルもアートピースならではの大きな特徴だ。

また、具体的な施策としては適材適所の人材配置や採用等の人財戦略が挙げられる。コンサルティング、マーケティング施策、制作から運営まで幅広いフェーズの業務があり、そのため、誰もが成長・活躍できる人材配置を適宜行い、個人の人間力の成長を大切にしている。また、ITセキュリティ等の委員会活動、職場環境改善や生産性向上等の提案制度の導入もしている。

３つ目に、教育体制改革である。全員がITパスポートおよびGAIQ（Googleアナリティクス個人認定資格）、ウェブ解析士等の取得を目指し、取得者には資格手当を支給する。また、資格や業務に関する書籍も会社費用として、自由に購入可能。受講希望者には有料・無料問わずオンラインセミナーなどにも受講可能としている。社員同士の飲食支援や「LOVE休暇」といった福利厚生の拡充等を挙げている。

さらには、昨今の現状からリモートワークも推進しており、ライフワークバランスの充実、企業の生産性向上を目指し、働き方改革による経営改善にも繋げている。

代表がキャンプ愛好者ということもあって、年に１、2回、本栖湖畔でのキャンプや貸別荘でのオフサイトミーティングを行い、リラックスした環境でディスカッションなどする機会も設けている。

アートピースの設立は、2008年11月。フランスでファッション関係の仕事をしていた代表者と、有名アパレルでグラフィックデザイナーを務めていた人、そしてスタートアップでWebデザイナーを務めた後にフリーランスとなっていた新井氏という旧知の3名が「何か面白いことをやろう」とスタートさせた。

しかし、5年目に代表者がほかの事業を行うため離脱、新井氏が代表取締役に就任して翌年に全株式を買い取った。その数年前から業績は頭打ち状態となっており、会社経験のなかった新井代表は、稲盛和夫さんの『生き方』という本に最も影響を受け、盛和塾という経営者団体に参加して経営を学び始める。

そして「全従業員の物心両面の幸福を追求し」「私たちは戦略とデザインでビジネスを加速させる（科学性）」「私たちは創造的なアイデアで新しい価値を社会に提供する（社会性）」「私たちは素直な心で学び成長し続け、感謝の輪を繋ぐ（人間性）」という経営理念を掲げる。
経営者として社員の幸せが一番大切であり、その上で、ビジネスに対する使命と責任を明文化した。

最近ではこうした経営理念を各チームリーダーがブレイクダウンしてメンバーに伝えるようにもなり、より浸透が図られるようになる。
また、メンバーの発言が『私は』から『私たちは』に変わり、物事を決める時に発言の方向性が理念に沿ってまとまりが早くなるなどの変化も。

そんなアートピースが求める人材像は、経験やスキルはもとより、素直で前向きであること。
理念やミッション等に共感でき、一緒に成長してゆきたいと思う人ならば、心地よく働けて成長できる環境がある。