日機株式会社

日機株式会社は、工作機械に組み込まれる部品を主な取扱品目として事業展開しているメーカーである。
大阪本社、台湾工場の2拠点体制で事業を展開し、国内のみならず、中国、米国、ヨーロッパ、東南アジア等、グローバルに販売先を広げている。

同社が扱う製品は、工作機械の刃物（ツール）と材料（ワーク）を削る際に発生する熱の冷却するためのクーラント液（切削油）を噴射するクーラントノズル、刃物の回転軸を安定させるための精密ロックナット、防塵防水耐油機能を備えた産業用LED照明の他、
マグネット関連製品や電材関連製品等、多岐にわたる。
工作機械部品を供給するサプライヤーの中でも、配管系、駆動系、さらに照明に至るまで幅広く扱うのが同社の特徴である。

その中で、近年、売上を伸ばしているのが工作機械の機内照明だ。工作機械の機内照明とは、目視やカメラで加工具合を確認する際に用いられる照明である。
クーラント液が飛び交う工作機械内で劣化や故障を防ぐため、耐油性や防水性を高めている。現在は、“工作機械内の照明と言えば日機”と言われるまでのポジションを確立している。
台湾工場の工程管理を知る課長・橋本和典氏が語る。

「防水、耐油の基本はケーシングです。以前は、大手照明メーカーも参入していましたが、いずれも撤退しました。
理由は設計や開発にかかる苦労に比べて、リスクが高いからです。当社も何度も失敗を繰り返しながらノウハウを蓄積し、
品質を安定させられるまでになりました」

過酷な環境に耐え得る仕様が求められるのは、工作機械の機内照明だけではない。工場内に立ち込める油煙は樹脂の劣化を加速させる。
工作機械に取り付けられる多層式警告灯も、材料を変える等、試行錯誤を繰り返して、油煙や振動の影響を受けにくい製品に仕上げられた。

機械に取り付ける照明だけではなく、作業用の照明も製造している。例えば、検査やきさげ作業を行う際に使う、面発光LED照明。
従来の蛍光灯に代わって普及したLED照明のギラギラした光では、細かい傷やバリ、色ムラを発見しづらく、目が疲れやすい。
そういった声を受け、LED特有のギラツキがなく、ちらつきやムラのない自然な光を演出した面発光LED照明や、その技術を生かしたLED拡大鏡を生み出している。

同社の強みは、顧客のあらゆる要求を実現する製品開発力と価格競争力、品質の高さだ。
技術的な知見を持った営業が顧客のニーズを拾い、大枠の仕様を決め、台湾工場の技術スタッフが細部を固めてプロトタイプを作り、何度も試作を重ね、最終製品に落とし込む。
顧客の要望は断らずに必ず持ち帰るのが基本方針で、他社の要望と抱き合わせる等、実現可能な方法を検討する。
現在の幅広い製品ラインアップは、そういった製品開発を積み重ねてきた結果だ。
また、国内の大手工作機械メーカー各社と直取引できている理由も、そういった取り組みが評価されているからだ。

大手工作機械メーカーから信頼される商品開発力を強みに、1988年8月の会社設立以来、右肩上がりの成長を遂げてきた同社。コロナ禍にも大きな影響を受けることはなく、収束後は再び成長軌道に戻し、過去最高売上を更新している。そんな同社が近年、力を入れているのが、WEBを活用した新規市場の開拓である。

元々耐油性・防水性の高い照明には自信を持って販売していた同社だが、既存の取引先以外にも認知を広げ、ブランディングを強化するため、2017年にWEBサイトを整備し自社ECサイトを立ち上げた。現在は、各種ECモールにも出店している。

意外だったのは、工作機械メーカー以外の多種多様な業界から、問い合わせが増えたことだ。例えば、食品加工機メーカーからは、食肉の加工機内の照明が腐食する問題の相談を受けた。初めての経験だったが、筐体やメッキの組み合わせを何種類も試して解決し、現在は安定供給している。また不動産会社から、マンションに取り付ける、防水性が高い照明に関する相談が舞い込むようになった。さらに工作機械の不具合を知らせる用途で開発された多層式警告灯は、スーパー等のレジや工場内の昇降機、さらにスロットマシン等に採用されている。

他にも、AIを使った画像処理の装置ラインや半導体工場、射出成形機メーカー、プレス機メーカー等、従来では考えられなかった分野への導入が増えた。そういった潜在的なニーズを掘り起こし、裾野を拡大する計画である。

「EC事業を立ち上げて7年、問い合わせのあった案件を、しっかり刈り取れる体制が整ってきました。今後は、ECサイトにアップした標準品が売れる仕組みを構築することが課題です。それができれば、与信管理や帳票類の発行、決済等が簡素化できます。小口のお客様にとっても購入しやすくなります。その仕組みを整えた上で、新しい市場に切り込んでいきたいと考えています」（橋本氏）。

このような計画を推進するため、WEBマーケティングの取り組みも強化中だ。リスティング広告の予算を増やすとともに、コンテンツの充実を図る一方で、ECサイトの品揃えも拡充する方針を掲げる。LED照明やクーラントノズル、ナットだけではなく、配管、継ぎ手等、総合的な品揃えを目指し、マーケットリサーチを進めている。

これらの業務に携わるのは、営業部内に構えるWEB事業部の社員達だ。ただし、増え続けるタスク量に対し、リソースが不足し始めていることから、採用活動にも注力している。

現在、WEB事業部は2名。いずれも40歳前後で、業界経験の豊富な人材である。今後は10名規模にまで増員する計画を掲げている。求めているのはWEBディレクターやWEBマーケターの経験者だ。少人数のため、自身も手を動かしながら、事業を牽引できるリーダー層、マネージャークラスを確保し、体制を整えた上で、作業を前に進める若手の採用にも着手したい考えだ。

大阪本社に勤務する従業員は約21名。小規模のため、部署間の垣根がない、風通しの良い環境が定着している。一つの建物の中に、営業、内勤営業、商品のアセンブリや梱包・出荷を担う商品管理部等、全ての機能が集まり、透明性のある事業運営が実現している。経営者との距離も近く、相談もしやすい。

最大の魅力は、安定した経営基盤だ。自己資本比率が高く、新しいことへのチャレンジもしやすい環境だ。
「成果というのは売上です。当社はクリエイティブの人間に対しても、成果を求めます。もちろん、事業拡大に向けて人にお金を払うことは惜しみません。成果が上がれば、その成果に見合っただけの待遇は与える方針です」（橋本氏）。

同社が求めているのは、自発性と問題解決能力、柔軟性を兼ね備えた人物である。特に柔軟性は、インハウスの制作部門、マーケティング部門では不可欠な要素である。同社は事業会社のため、経営者や他部署の社員はWEBやデジタルに対して精通しているわけではない。スムーズにコミュニケーションを図るためには、相手が言うことを一旦は受け止める必要がある。周辺の関係者と時間をかけてでも調整をしながら、ゴールへとたどり着く根気強さが重要だ。

「当社は創業から37年が過ぎ、現在、転換期を迎えています。将来的には、既存のお客様だけでは、存続していくことは難しいでしょう。ただ、当社はしっかり利益を残している会社です。今こそ新しい事業に資金をつぎ込みたいと思っています。ゼロから何かを生み出すチャレンジをしていきたい。そんな志を共有していただける方がいれば、ぜひ力を貸してください。ご応募をお待ちしています」（橋本氏）。

安定した経営基盤を背景に、グローバル市場への展開にも注力している同社。WEB事業部の基礎が固まれば、海外に向けた情報発信や越境EC等、WEB部門が果たすべき役割はさらに拡大する見込みだ。WEB事業部は経営者直轄の部署でもあり、経営者のそばでビジネスの経験を積めることも魅力だろう。その一方では、事業会社のインハウスのため、自分達でタスク量をコントロールし、余裕を持って業務を進められる環境もある。これまでの経験を生かして事業拡大に貢献したい人、または、ディレクターやマーケターとしてステップアップできる環境を求めている人は要注目だ。