株式会社ヴァンガードテクノロジー

システム開発ベンダーの、株式会社ヴァンガードテクノロジー。愛媛県松山市の本社と東京オフィスを事業拠点として、SESを主体に自社サービスも手掛けている企業だ。

●SES事業

エンジニア数40名弱の規模で、従業員数1,000名以上の大手SIer3社をはじめ、準大手SIer等約10社をアクティブな取引先として擁し、うち約70%を直取引（エンドユーザーに対しては2次請け）という高次の商流を確保している点は特徴的と言える。
エンドユーザーとしては、銀行や保険会社、決済代行会社等の金融系のほか、通信キャリア等の大手企業が主体。中には10年以上の継続的な常駐を続けている現場もある。
「お客様との会合を重ね、エンジニアの状況をヒアリングして即座に改善に繋げることはもちろん、常駐先のニーズに最適なエンジニアを提案・提供することを心掛けてきました。こうした姿勢が強固な信頼関係に繋がり、長いお取引に結実していると自負しています」と執行役員の富永和宏氏は胸を張る。

エンジニアの技術力向上に関しても、手厚い資格取得支援等でバックアップし、顧客評価に繋げている。
また、同社にはCobolによる銀行の基幹システムを手掛け続けている60代のエンジニアも健在。長く働ける“エンジニアファースト”の風土も、エンジニアが安心して力を発揮できている大きな要因だ。

●自社サービス事業

トータルブランディングサービス『Garatt』（ガラット）の提供。
『Garatt』は、ホームページの構築を主体に、SNS広告、ロゴ、名刺、会社案内パンフレット、商品パッケージ、ECサイト構築等のブランディング要素をトータルに取り扱い、顧客ニーズに則した戦略立案から制作、運用までを一括して提供する。
2021年頃から本格的に提供を始め、現在はショップやサロン等の店舗や中小企業を主体に顧客を集めているところだ。
自社サービスにも力を入れているSES企業としても特徴的と言えるだろう。

同社の設立は、1998年10月。システム開発会社でエンジニアをしていた清水賢吾氏が、同僚であった大野裕之氏と共に独立、創業した。以来、清水氏が代表取締役、大野氏は取締役を務めている。

同社設立の経緯について、2007年に中途入社した富永氏は次のように説明する。
「当時、システム開発業界は長時間労働が慣例となっていて、両名の勤務先も例外ではありませんでした。そうした環境に問題意識を持ち、主役であるエンジニアが働きやすい会社を自分達でつくることを志したと聞いています」

設立以来、“エンジニアファースト”の組織風土づくりに取り組み、年間休日140日・平均残業時間5～6時間／月という業界トップレベルの水準を維持している。

そんな同社が掲げるミッションは「関わる人を豊かにする」というもの。関わる人とは、開発するシステムのユーザー、直接の取引先であるSIer、そしてエンジニア等の社員や家族である。
「エンドユーザーの求めるシステム開発にマッチしたエンジニアのアサインを通じて、高品質の成果物を最適な形で提供する。その結果、利益を創出し、関わる誰もが満足できる結果に繋げることができると考えています。そのためにも、エンジニアが最良のコンディションで働ける環境づくりにこだわっています」（富永氏）。

今後の成長戦略としては、引き続きSESを主体に取り組んでいくとともに、独自サービスの開発に力を入れていく方針だ。その背景や考えを、富永氏は次のように話す。
「SES事業を成長させていくには、エンジニアの数を増やしていくことが条件となります。引き続き採用に努めていきますが、世の中のエンジニア不足はなかなか改善されないでしょう。AIが代替するまでに、まだ時間もかかると思います。そこで、自社サービスのラインアップを増やし、収益の幅を広げていくという考え方です」

同社では、2019年頃からホームページ作成サービスを始めてSESに続く収益軸を新規に設けたが、これを2021年に『Garatt』に発展させ、グロースに取り組み始めているところだ。
また、目下SES案件のマッチングシステムを開発している。「まずは自社で使い、機能を磨き込んで他のSES会社に外販していく予定」と富永氏は言う。こうした自社サービス開発に、SES事業のエンジニアを活用していくことはもちろんである。

そして、SES事業と自社サービス事業の売上比率を5：5まで持っていくことが当面の目標だ。
「自社ブランドのサービスを展開し、“ヴァンガードテクノロジー”の社名が世の中に広く知られるようになることを目指したいと思っています」と富永氏は意気込む。

2024年10月現在、同社の社員は41名。うちエンジニアは90%を占めている。女性比率約25%は、システム開発業界にあっては少なくないだろう。
そして、同社の特徴は年齢層の幅広さ。エンジニアは20代から60代までが揃っている。
「60代のベテランはCobolによる銀行のシステム開発現場に固定的に入っているので、普段の業務で若手と交わる機会はほぼありません。一方、月1回の帰社日に全員が集まるので、その機会に若手がベテランから技術等を教わる場となっています。若手もベテランもフレンドリーな人ばかりなので、フラットにコミュニケーションを取っていますね」（富永氏）。

人材育成に力を入れている同社では、新卒採用にも積極的に取り組んでいる。新人は入社後3カ月間のビジネスマナーやプログラミングの基礎学習を経て、現場に配属後も3カ月間のOJTが受けられる。
その後のスキルアップ策としては、情報処理技術者試験等の国家資格からベンダー系の資格まで、50種類以上の資格取得を支援する制度を設けている。取得の難易度に応じて、受験費用の半額補助から毎月の資格手当（1万円～10万円）の支給まで幅広く対応している。

そして、特筆すべきは“エンジニアファースト”の組織風土だ。
同社の年間休日は140日。120～129日が多くを占める中、同社の休日の多さは群を抜いている。月平均残業時間も5～6時間と非常に少ない。こうした勤務時間が確保できている理由について、富永氏は次のように説明する。
「エンジニアの稼働時間が多い現場は、営業がお客様に改善の要望を出します。2カ月ほど経過しても改善されない場合は、エンジニアを引き揚げることも辞しません。もちろん、話し合いの上でですが、それで取引が打ち切られてもエンジニアの方を重視するという覚悟で臨んでいます」
直近2年間の退職者ゼロ、5年間でも数パーセントという少なさがその効用を物語っていると言える。

そして、組織風土づくりの基軸として、次の8項目の行動指針を共有している。

・人との繋がりを大切にする
・責任感とプロフェッショナル意識を持つ
・オープンなコミュニケーションを心掛ける
・チームとして一致団結して取り組む
・モラルを持った行動をする
・年功序列ではなく成果主義で評価する
・一緒に働きたいと思う人を集める
・一緒に働きたいと思える環境を作る

これらの項目は、人事考課の指標や、毎月の帰社日や年に数回の懇親会の開催等を通じて実行・促進を図っている。

そんな同社が求めるエンジニア像について、富永氏は次のように期待を寄せる。
「自ら考えて必要な行動ができ、リーダーシップやマネジメント力を発揮できる方にぜひ加わっていただきたいと願っています！」
SESでスキルを磨き、自社サービス開発にもタッチできる可能性がある上に、ワークライフバランスが図れる同社は、エンジニアにとって魅力的な存在に違いないだろう。