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インタビュー画像2012年12月にカヤックを退社。現在はアメリカのシリコンバレーで活動するiOSエンジニア・堤修一さん(通称:つっつん)です。

堤修一「業界未経験の僕がアップルにスカウトされる開発者になった話」【退職者インタビュー】

-アメリカのシリコンバレーで働かれているとか。 堤:はい。iOSエンジニアとして、スタートアップで開発者向けシステムを つくっています。スタートアップで働くのは初めてですが、 かっちりした仕様書がなくバーッと話してつくって どんどん出すって感じの進め方はカヤック時代と似ていて、 最初から違和感なく仕事に入り込めました。 カヤック時代は「バウンドモンスターズ」や「モンスターを集めてまいれ!」など、 ユーザー向けのゲームアプリをつくっていましたが、 同じように仕様書がなくて、ペアを組んでいた嶋田さんの感覚的な表現を元に、 やりたいことを汲み取りつつわかったら形にして、また話して… という感じでつくっていましたし。 柳澤(面白法人代表):モック主義だよね。うちは以前より規模は大きくなったけど、 大企業のような分担された仕事の仕方にはなっていないから、 スタートアップに行っても充分楽しめると思う。 むしろ、いい意味で混沌とした、スタートアップ感を残した企業でありたいと 思っているからね。ところで今回の帰国って何かあったの? 堤:プライベートな事情で、実は無期限一時帰国というか…。 柳澤:えっそれなら出戻ってきたら? 今開発しているアプリはどんな感じなの? 堤:リリースはもう済んでいて、今は機能追加やメンテナンスなどが中心です。 柳澤:社長にお願いして、もうこのまま日本にいればいいのに。 堤:事情は理解してくれてて、今はリモートで作業しています。

■勉強して勝ち取ったiOSエンジニアの称号

-カヤック時代のことをお聞きします。堤さんは中途入社ですよね。 堤:はい。大企業に合計で7年ほどいたんですが、 やりがいはあるけど心から仕事が楽しいとは思えず、 モヤモヤしていたんです。そんな時に、本屋で カヤックの『会社案内』を見つけてとても共感し、次に働くならここだなと。 プログラムやデザインなどのスキルがなかったので、 ディレクターならいけるかもって応募しました。 そんな状況なので一度目は落ちてしまい、採用の可能性を会社に聞いたら、 やなさんから直接「30歳オーバーで業界未経験だとディレクターとしての採用は難しい。 何か技術を身につけてエンジニアとしてなら」という返事をもらったんです。 そこから学校に通って勉強し、Flash作品をもって再挑戦しました。 無事入社はできたのですが、配属は希望した閃光部ではなく技術部で、 また何もできずに苦労したという続きもあるんですけどね(苦笑)。 柳澤:実績がないので最初は落としたけど、自分で作品をつくって 再挑戦した所に、CTOの貝畑が面白さを感じて採用したんだと思う。 そうだ、技術部から異動したんだったね。 堤:はい。iOSに異動したのは入社して4カ月位の頃です。 技術部であまりにサーバサイド開発ができないので仕事がなくなっていき、 最後にはPHPの入門書を渡されるような窓際状態になってしまって。 -えっ! 堤:でも僕自身は「お金をもらってものをつくる」生活がようやく叶ったので、 楽しくて仕方なかったんですよ。 だから、平日はPHPの勉強、週末はiPhoneアプリの勉強を続けていたら、 だんだんiPhoneアプリの制作依頼が社内から来るようになりました。 その様子を見たリーダーの清さんが、ドミノピザさんのiPhoneアプリ案件を 引き継ぐチャンスをくれたんです。これを逃したらもう死ぬしか…と喰いつき、 いつも胃をキリキリさせて作業していました。怒られることも多かったですが、 このアプリには当時のiPhoneアプリのエッセンスが詰まっていて、 本当に勉強になりました。僕はサーバサイドもFlashもできなかったからこそ、 iPhoneアプリに専門で打ち込めるという、 当時としては珍しいポジションにつくことができました。 「専門でやるからには日本一を目指せ」と言われましたし、 確かにこういう働き方の人は自分だけだから負けられないぞと。 その気持ちは今も大きな原動力になっていますね。 柳澤:それが最終的に技術書を出すような トップクラスのiOSエンジニアになるんだから、 本当に今の時代を凝縮した人だよね。 ジョブチェンジは大変だからよく頑張ったと思います。 サーバサイドのスキルが足りないって話は聞いていたけど、 それも人生の面白さだよ。 ダメな時こそいち早く新しい技術に取り組んだり、 誰もやってない所を見つけてポジションを勝ち取ったりするのは、 ビジネスとも同じ考え方だしね。 堤:入社してすぐの頃、ランチに一緒にいってもあまり話しかけてもらえなくて、 なぜだろう?と思ってたことがあったんです。 でもその後iPhoneアプリの技術が身につくと、 「最近どんなアプリつくってるの?」、「おすすめのアプリある?」とか 話しかけられるようになって、やっとわかりました。 カヤックではみんなつくることが好きすぎて、 「こういうものをつくる人です」というのがないと、 存在が認識されないんだなと(笑)

■エンジニアとディレクターの実績の捉え方

柳澤:去年の12月に海外に行きたいってことで辞めたけど、 その時は何をやるかは決めてなかったよね? 堤:はい。辞めてからは書籍の執筆を含めていろいろなことをやっていて、 そのうちにアメリカで起業する方に誘ってもらい、渡米した感じです。 でも、向こうに行ったらアップル本社や有名企業からたくさんスカウトが来て、 すごくびっくりしましたよ。「Domino's App」や「タップ忍者」、 「バウンドモンスターズ」もそうですが、 カヤックでの実績ってものすごく世界で評価が高いんだなと。 柳澤:「Domino's App」が獲ったのは世界的なカンヌライオンズだからね。 最近「タップ忍者2」というゲームが出たんですが、 「タップ忍者1」は彼と嶋田というプログラマーがほぼ2人でつくったんです。 これはApp Store Best of 2012にも選ばれたし、経歴だけ見たらものすごいよね。 堤:そうですね(笑)。 柳澤:社員全員が複数のプロジェクトに関わるから、 5年もいればいろいろな仕事を手掛けたという経歴ができてくるんです。 ありがたいことに受賞作品や話題性の高い仕事に恵まれていますし。

■受賞歴ってカヤックではほぼメンバー全員の経歴に掲載しますよね。 リーダーやエンジニアだけに掲載する企業もあると思いますが…。

柳澤:それは会社自体の考え方によると思うな。 堤:でも、あれはすごくいいモチベ-ションになりますよね。 かなり関わったのに載ってない時は「載せてくれ」と言うほうです僕。 手間をかけてつくるのは自分がつくったと言いたい気持ちがあるからだし、 その気持ちには正直でいたいと思います。そういうこともあって、 僕は少々無理をしてでも、iOS部分は一人でやることが多いです。 開発は全部自分が担当した、と言いたいですから。 柳澤:それは僕も同じだな。僕もディレクターとして仕事するときは、 スタッフロールには主要なメンバーしか載せないです。 少ししか関わっていない人が入ると頑張った人の努力が薄れるでしょう。 だからメインの人だけでいいと思っている派です。 でも、全社的にはみんなで喜ぼうという社風になっているから、 今は少し手伝っただけの人も載る流れになっているよね。 ディレクターごとに考え方が異なる部分だけど、 キャリアのプラスにしてもらえるしステップアップの推奨にも繋がるから、 それはそれでいいかなと。

引き留めないのにはワケがある

柳澤:自分の成長が会社の成長だと思ってもらうためにも、 カヤックは社員の主体性を尊重して常に応援しています。そう考えると、 退職ってある意味では無責任なことですよね。 リーダークラスだと部下への影響も会社の損失も大きいし。 その中でも僕らが引き止められない理由の人がいて、それが海外志向と独立。 カヤックには今のところは海外支社がないので、 海外で働きたいと辞める気持ちもわかるし、 3人で始めた会社だからスタートアップを体験したいという気持ちもわかる。 だから、この二つは仕方がないんです。 彼も重要な存在だったけど、いろいろ見極めて決めたんだと思いますよ。 ゲームエンジンがUnityにシフトする時だったしね。 堤:それもありますね。「バウンドモンスターズ」の開発も終わるタイミングで、 僕の立場だと次も大きくて難しい案件がくるはずだから、ここしかないなと。 その時に印象的だったのは、海外に行くことをやなさんに面談で伝えたら、 驚きながらも「そうだよね」って共感してもらえたことです。 今後を明確に決めていたわけではなかったけど、 前職の時はなかなか思いが伝わらなかった覚えがあるので。 柳澤:そうそう、本当に海外行った社員って未来をあまり考えないで動くよね。 前回このインタビューに出てくれた西さんの新しい展開も自由だったから、 初めて「そんなラフな感じいいの!?」って思ったよ(苦笑)。 僕は子どももいるし、やっぱりどこかおっさんになったのかな…。 堤:いや、今はそれでいいんですって。 柳澤:自分も元々はその感覚だったし両方の気持ちはわかるんだよ。 でも今は社員や家族の人生を背負っているし、自分都合では動けない立場だから。 そういう責任ある立場で迷惑がかかりそうな人には、僕も全力で止めますよ。 会社の都合云々ではなくそういう人間になってはいけないから。 逆に、制限がない人はどんどんやればいいと思います。 堤:そうですね。 柳澤:うん。で、つっつん。日本にいるならウチに戻ってきてくれないかな…。

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