株式会社hm solution

株式会社hm solutionは、神戸市に本社を置き、WEBサイトの制作、ECコンサルティング、システム開発などに携わる会社である。代表取締役CEO・濱道崇氏が、2008年8月、自宅で3人の仲間とともに創業。2010年2月に神戸市北区に事務所を構え、その4月に「神戸ホームページ制作センター」を開設した頃から問い合わせが増え、以来、着実に業容を拡大してきた。

2012年11月には神戸市の中心地三ノ宮に本社を移転することで対応エリアを拡大している。2014年度の成長率は前年比300％以上となり、濱道氏が代表を務める親会社の株式会社GMTと合わせると約10億円の売上を達成。2015年は、2月に東京にシステム開発専門の営業所「東京システム開発センター」を開設し、さらに4月にはEC需要の増加に伴いECに特化した「コンサルロケッツ」を立ち上げ、業務内容の幅をより一層広げている。

同社が飛躍的な成長を果たす背景にあるのは、メンバー1人ひとりのプロフェッショナルとしての技術と意識の高さだ。自立した人材が集まり、それぞれが責任を持ちながらも、自由なスタイルで楽しみながら仕事をする。そこには、遊び心と心の余裕を大切にする同社の考えがある。例えば同社の遊び心が端的に表れているのが、業務中のちょっとした悪戯やFacebookのユーモラスな投稿だ。

業務中の悪戯というのは、例えば人の机にあるカッターの刃先にセロハンテープ貼り付けて切れないように仕掛けておいて、持ち主がそれに気づくかどうか様子をうかがう、といった他愛のないものだが、このような悪戯が日常茶飯事に仕掛けられる。
また、Facebookの投稿の中には、女装姿はじめとするコスプレ写真が時々見られるが、これらも業務中などに各自、自由に扮装してアップしている。濱道氏はこういった業務中の行為について次のように語る。

「弊社では優秀なスタッフが揃い、それぞれ責任を持って仕事をしているので、各自のスタイルに完全に任せています。ぎりぎりの精神状態では、思い切った判断や自由な発想が出来ません。遊び心や心の余裕を持つことで、予想もしなかったような大変な局面があったとしても、慌てずに乗り切ることが出来ます。
コスプレなどは、普段やらないことをやることで視野が広がるという意味で、推奨しています。私自身、社員に突然モノマネをリクエストしたりしますが、その相手がどう反応するかで、その人の普段は見えない部分が見えてくるし、本人にとっても、自分の意外な面を発見したり、キャパを広げることにもなります。普段はそこまで深く考えずに、楽しんでいるだけですが、根底ではそういった効果があると考えています。
目線の高い人は苦しくて辛いことをプラスに感じることが出来ますが、それと一緒でこのような一見無駄に見えることでもプラスに捉えることができる人は、自己を高めることが出来ます。急には無理でも、少しずつ変わっていければ、弊社の中では自然にポジションが出来ていきます」（濱道氏）
それぞれの自主性が尊重されることは働きやすさにもつながる。クライアントの目的を達成するというゴールを目指す上で障壁となるような意思決定の仕組みや上下関係は一切排除し、その一方でチームワークを重視し、お互いにフォローし合いながら協力し合ってゴールを目指す。無駄な残業も強要されることはない。海外（インド、韓国）出身のスタッフも活躍していることから、その働きやすさは国籍や出身地などにも左右されないものであることがわかる。

濱道氏が会社を経営する上で掲げるキーワードは“信用”である。

「私はお金は信用についてくると考えています。お客様に信用していただくだけではなく、従業員と会社の信用関係も大切です。その信用を得るためには、会社側も従業員側も“もらっている”という意識が必要です。
お互いに“働いてもらっている”“働かせてもらっている”と考えれば知恵が出ます。反対に“働かせてやっている”“働いてやっている”という考え方はどちらにとっても生産的ではありません。また信用を獲得するには人間力を上げる必要があります。
そのためには、“良いことは人のおかげ、悪いことは自分のせい”という謙虚さを失わないことが大切だと考えています」（濱道氏）

濱道氏が起業した目的は“時代を乗り切ること”だった。これからの時代、大手企業に就職したとしても将来が約束されるわけではない。仮に社長になったとしても、創始者の一族でもなければ、その働きに見合うだけの給料が取れるかどうかも疑わしい。それなら自分たちが作った会社でやるしかない。自分一人では時代を乗り切ることは出来ないが、会社という集合体であれば可能性は高くなる。

何十年後という長期的な視野で考えて、参加した人間がちゃんと生活できる環境を作るためにhm solutionを設立した。資本金なし、人脈なし、経験もほとんどない状態での起業だったが、外部からも内部からも信用を失うことなくやってきた。どんなに業績が思わしくない時期も、支払の滞納や給料の遅配も一切しなかったという自負がある。

こういった創業期の想いがあるため、“良いことは人のおかげ、悪いことは自分のせい”という考え方を共有出来なくなったメンバーは、たとえそれがエース級の存在だとしても引き止める考えはない。
過去、実際にそういう局面を迎えた際も、無理に引き止めることはしなかった。残ったメンバーでフォローし合うことで危機を跳ね返し、業績を一気に伸ばし、業容を拡大した。2014年度の急成長の裏にはそういった背景があったのである。

「力を持ったら錯覚をする人がいます。そういう人が独立したいと言うなら止めません。ただ、その人が時代を乗り切るには、それは決して得策ではありません。弊社のグループ会社のGMTでは、一代で百億の資産を作った方に会長を務めていただいています。私は、そういう経営者の方の知恵を借りて会社を経営しています。その方の助言がなければ、弊社がここまで成長することはありませんでした。この環境を活かして協力し合えば掛け算で大きくなっていく。
私たち一人一人はそんなに力を持っていませんが、会社としてやることによって、社会的に影響力のある経営者にも可愛がられて、様々なノウハウを身に着けていくことが出来ます。自分たちにとってそれが、成長の近道だということさえわかっていれば、数十年後にはみんなで楽が出来る。そこに共感してくれる人同士で頑張っていきたいと考えています」（濱道氏）

別事業を展開するグループ会社を作り、拠点を分散し、サービスを増やしているのは、リスクを分散させるためでもある。そうすることで生まれる気持ちの余裕が、どのような危機的な局面でも、ぶれない判断を可能とするのである。

濱道氏にビジョンを聞いた。

「結局、お客様との信用づくり、それに尽きます。弊社は制作会社なので、お客様に成功していただくことが私たちの成功だと考えています。制作会社にとって、それ以外のビジョンはないと考えています」（濱道氏）

神戸ホームページ制作センター センター長・植山映氏も語る。

「お客様にとってWEBサイトは1つのツールです。売上向上、商品の認知、ブランディングなどなど目的は様々ですが、弊社は、そのようなツールの1アイテムとしてのWEBサイトを制作しています。その際の基本方針としては、単に作るだけではなく、作ったものをどう生かしていくのか、という視点で、お客様の会社に入り込み、話をじっくり聞きながら作っていきます。お客様に成果が出た、と喜んでいただけることが1つの到達点だと考えています」（植山氏）

そのような考えで制作に取り組みながら確実に成果を上げる同社と、クライアントとの関係は長期に渡るケースが多い。クライアントの殆どはもともと規模的には中小零細に属する会社だ。それらのクライアント企業が持続的に業容を拡大する中で、同社に対するニーズは、WEBサイトの制作・運営にとどまらず、SEO/SEMなどのマーケティング支援やECをはじめとするWEBシステムやアプリ開発、さらに業務システム開発などへと拡大してきた。

特にhm solution自体が業績を伸ばした2014年度以降は、クライアントの業容拡大に伴う業務システムやWEBサイトのリニューアルに合わせた業務改善フローの提案と仕組みづくり、新規ビジネスの企画・コンサルティング・マーケティングなどを一気通貫で請け負うケースが増えている。
それに合わせて社員数も一気に2倍にまで増えたが、それ以上にクライアントからの引き合い件数は増え、一件あたりの規模も拡大し続けている。hm solutionでは現在、そんなクライアントからの要望に応えるべく受注体制を強化するために、積極的な採用活動を行っている。自社の基本姿勢に共感できる人材を迎え入れ、新しいステップを踏みたい考えだ。

「あえてビジョンを表明するなら、5年後ぐらいに海外進出を果たすことです。弊社はこれまで、突拍子もない目標を立てて、それに向かって突き進んで来ました。北区にいた頃は借金しかなくて、三ノ宮にオフィスを構えることは夢の話でした。
でも、あえて大きな夢を掲げたら、急に業績が向上して、メンバーの生活も良くなっていきました。三ノ宮への移転は、目標を掲げてから1年で達成し、創業当時から掲げていた自社ビル建設も、すでに実現可能な状態となっています。
それは戦略とはまた別の次元ですが、目標を口に出して、前向きな気持ちで取り組んできたら出来ていました。次の目標もきっと実現出来るはず。そう感じながら、毎日地球儀を見ています」（濱道氏）