代表取締役 最高技術責任者　中城哲也氏

“ものづくり”は幼少の頃から好きだったのですか？

そうですね。子どもの頃、欲しいけど買ってもらえないビリヤードの台をつくってみたり、スパイクシューズを縫ってみたりしていました（笑）。高校の頃から、漠然と「スゴいものをつくってみたい」と思うようになり、自由で変人が多く集まっているという印象の京都大学に入学しました。コンピュータのプログラミングなどを学ぶ工学部情報工学科です。2年の夏休みに、たまたま神戸にあるグラフィックソフトの会社がインターンを募集しているのを知って応募し、そのまま居つづけて結局大学は中退しました。あのビル・ゲイツもハーバードを中退していますから、俺だっていいだろうなんて思っていましたね（笑）。 “ものづくり”はずっと好きで、モノをつくっていないと死んでしまうといった感じでしょうか。

神戸のグラフィックソフトの会社では、どんなキャリアを積んだのでしょうか？

20歳から10年間勤めました。一貫して製品開発に携わり、ある一領域を任されていました。退職する2年前から役員にも登用してもらい、年配の人が多い中で“若頭”的な位置づけになりました。相変わらず開発がメインでしたが、会社経営も勉強させてもらいましたね。 その会社は、プロのDTPオペレーター向けの特殊な製品をリリースしていましたが、社長は天才肌でとても面白い人でした。入社して5年目ぐらいに「Live2D」のアイデアを思いついて、独立しようとしたのですが、引き留められて結果的に10年勤めたという感じです。現在は会長になった当時の社長とは今でも飲み仲間ですが、いろいろ刺激を受けています。

独立して会社を創業されましたが、どんな山谷があったのでしょうか？

創業して2年ぐらいで最初の製品をβ版的に出し、そこそこ売れたのですが、後が続かなくなりました。3年ほど売れない期間が続き、倒産寸前に追い込まれました。プログラマーとして数名採用していた社員を生かすこともできず、辞めてもらってまた一人に戻ったのです。そんな時に今のチーフデザイナーである國定（PRタグ参照）が、「製品に興味があるから入社して手伝いたい」と連絡してきました。社員に辞めてもらったばかりだし、展望がなかなか開けない中で採用するつもりはありませんでしたが、無下に断るのも気が引けて「いい結果なら面接する」と課題を出したのです。「『Live2D』を使ってこんなことができるか」という、かなり面倒な課題です。そうすれば諦めてくれるだろうと（笑）。そうしたら、やたらクオリティの高いものを仕上げて送ってきたのです。面接しないわけにいかなくなり、その場でキャラを描かせたら、パッパッといろいろな向きでいろいろな表情を描いて見せた。 ここまでの能力とやる気の持ち主は、もう二度と現れないかもしれないと思ったのです。そして、思い切って採用しました。その数カ月後に、バンダイさんへの導入が決まり、息を吹き返すことができました。國定を採用してようやくクオリティコントロールができるようになったことが大きく作用したともいえます。 まあ、幸運の女神だったかもしれませんね（笑）。

では、社員への思いをお聞かせください。

世の中ではワークライフ・バランスがいわれていますが、当社はもちろん法律や健康を守る範囲内で、社員には仕事にがんばってもらっています。若いうちはやりがいを感じる仕事に打ち込んだほうが成長できるという考えがあるからです。自分も学生時代からそんな感じで成長できたという実感がありますし。もちろん、休みたい時は休んでいいと言っていますが、がんばって成長し、どこに行っても面白い、凄い製品ができる人材になってほしい。 そして、そんな凄い人材が集まる会社にしていきたいですね。そのためにも、社員にはどんどん仕事を任せていきたいと思っています。現にいま、より難しい新バージョンの開発は、チーフプログラマの阿曽（PRタグ参照）に任せています。 本当は自分でやりたいんですが、社長が出しゃばるのもどうかと思い（笑）。

目指す組織像とは、どういったものでしょうか？

「こんな発想があるのか！」と驚くようなアイデアを出す人が増えて、いい意味でユーザーの期待を裏切るような製品を次々に出し続けていくような組織です。今後5～10年は「Live2D」のブラッシュアップとユーザーの拡大に集中的に取り組みますが、その後は全く別の製品を出したいと考えています。実は、アイデアは溜まっているんです（笑）。