まず、略歴からお教えください。
17歳の頃から、「ebay」で商品を仕入れて「ヤフオク」で売るというビジネスを始め、2年で500万円ぐらい貯めたんです。高校大学の一貫校に通っていましたので、大学受験がないメリットを活かそうという動機です。当時、特にやりたいこともなかったので、そのお金で世界を回り自分の将来の方向性でも考えようと、大学在籍時に半年ほどヨーロッパをぶらぶらしました。その時に、どんなことよりも足を踏み入れたことのない場所に入る時のゾクゾク感がたまらなかったんですね。これが一番の快感でした。そこで、シンプルに人生の目標を“行ったことのない場所をなくす”と決めたんです。 そのためにはお金や時間、健康な身体が必要です。ざっとシミュレーションしてみると、日本の超一流企業に入っても無理だとわかりました。45歳までにリタイアして、ある程度の資金を稼ぐ必要がある。起業するしかありませんでした。 けれども、自己評価はそんなに高いわけではなかったので、先輩に相談し最も厳しいといわれている外資系の経営コンサルティングファームに入って修業することにしました。 その5年間は死にそうにきつかったですね。上司を殺したいと思うほどでした。今ではそのおかげで現在の自分があると実感しています。当時の上司に感謝しているほどです(笑)。 その後、2社起業し、「Repro」のモデルとなる製品に出合い、現在のCTOの三木を誘って当社を創業した、という流れです(企業詳細タブ参照)。
Reproを起業して、何を目指そうとしているのでしょうか?
実は、日本の将来に危機感を持っています。ソニーの盛田昭夫さんや井深大さん、ホンダの本田宗一郎さん、パナソニックの松下幸之助さんといった人たちが戦後築き上げた資産を、今の日本人は食い潰しているのではないかと。このままでは、自分たちの子どもや孫の世代が日本に希望を持てなくなるという危機感があります。ならば、自分たちの世代がもう一度蓄えをつくらなければならない。そこをちゃんとやっていきたいという思いが強くあります。 ですから、我々もまずアメリカに進出します。盛田さんや本田さんもそうしたようにです。彼らも当初は当時の日本品質についてさんざ馬鹿にされたと思いますが、それで努力奮闘した結果、今ではトヨタのように世界No.1となった日本企業も出ています。 なぜそう思ったかと言うと、Orange fabという国際的なインキュベーションプログラムに参加した際、東南アジアのベンチャーの人から「日本のベンチャーってダサイよね」と言われたことがきっかけです。日本のベンチャーはドメスティックで、世界を目指そうなんて意気地がないと。当社は違うと反論しましたが、でも事実だなと感じました。日本は間違いなくITベンチャー後進国です。東南アジアにも負けている。しかし、技術力とか、アイデアとか、熱意とか、日本のベンチャーにもポテンシャルはあると思うんです。それを自社が実証してみせる。「平田にできるなら、自分にもできるかもしれない」と思ってもらえばいいという思いです。 自分はそんなに能力が高いとは思っていませんが、その代わり人一倍努力しているとは自信を持って言えます。目標に向かって、やり切るだけです。
では、社員には御社を通じてどんな存在になってほしいと考えていますか?
私は2回起業しましたが、結果的にうまくいきませんでした。会社をたたんだ経験もありますが、悲惨なものです。社員は愚痴を言って去り、自分を信用して取引してくれた人を裏切る形になりますから。ですから、3社目のReproは何としても成功させます。社員には、そのために自分の役割にコミットすることを求めています。コミットできない人は、他社のほうが幸せになれるでしょうから、はっきりそう言います。そのコミットは、はっきり言って厳しいレベルですが、その代わりクリアすれば誰もが味わったことのない成功体験を積めることをコミットします。
平田さんにとって仕事とは?
社会貢献です。仕事は人生の中で最も長い時間関わるものです。その仕事の目的を「1人でも多くの人を幸せにすること」に置くと、意識も行動も変わるんです。このことは自分が身を持って知りました。最初の2社の起業がうまくいかなかったのは、「自分の成功」が目的化していたからです。失敗してそのことに気づき、意識を変えてから人間的にも経営者としても成長することができました。 私はメンバーに「Reproで働く自分のDNAを引き継ぐ人を必ず2人つくって、“鉄の三角形”をつくってほしい」と要望しています。そうすれば、当社の意思を持って卒業するメンバーが逓増していきます。そうやって成長したメンバーが卒業後、何人幸せな人を増やすかということが、究極的な目標であり自分の仕事のように思っています。
最後に、オフタイムについてお教えください。
頭と身体のリフレッシュのため、基本考えることを放棄し(笑)、感じたことをするように意識してます。そのため、1人で過ごすことが多いですね。眠たければ寝ますし、海や山が見たければぷらっと外出するみたいな感じです。