まず、略歴からお教えください。
1985年に日本アイ・ビー・エムに入社し、一貫して営業に携わりました。1999年12月、IBM本体はネットワーク事業をAT&Tに売却し、AT&Tグローバル・サービスが設立されます。当時私は大阪で大手電器メーカーのグローバルネットワークづくりに関わっていたのですが、当初同社に出向となりました。日本アイ・ビー・エムに残る選択肢もありましたが、2000年3月に正式に転籍しました。お客様から転籍するように要請されたこと、また、現地化が進む“マルチナショナルカンパニー”のIBMにあってネットワークサービスだけが真にグローバルにビジネスができていたことが主な理由です。しかし当時の国内でAT&T は知名度が低く、もっと戦略的に動く必要があるとの問題意識から、上層部に色々な提案をしました。その結果、2003年1月に東京本社の事業企画本部長に就任します。 日本アイ・ビー・エム時代から、アメリカでつくったサービスをそのまま売るだけでなく日本独自のサービスを提案していたので、日本独自のサービス開発をする必要があり、その責任者も兼ねることになりました。日本アイ・ビー・エム時代に、既存のキャリア回線を借り、その上にソリューションを乗せて提供するビジネスを手掛けていたのですが、世界のAT&Tでそういったサービスを手掛けているところはほかにありませんでした。実際にはWAN以外にもセキュリティサービスやデータセンターサービスなどを作りました。その後、2008年7月に営業本部長になり、2009年3月に退任となったトップの後継者に選ばれ社長に就任しました。 そして2010年9月のIIJによる買収で当社が発足し、私も移ることにしたわけです。AT&Tからは「残れ」と言われましたが、3分の2の社員と事業が移る以上、自分が残るわけにはいかないという思いが最大の理由でしたね。もう一つ、AT&Tは外資系企業としてグローバルガバナンスを強めていたので、日本独自の動きが取りづらくなっていたという理由もあります。
自社の強みはどういったところにあるとお考えですか?
現状の強みと、これからつくっていく強みがあると思います。まず前者においては、当社は企業のお客様に対して主にWANをベースとしたコラボレーション基盤やソリューションをご提供しているわけですが、マルチキャリアとしてお客様に最適なキャリアを選び、組み合わせたベストソリューションをご提供できる強みがあります。また、IIJグループとして、IIJの手掛けるクラウドソリューションもご提供できます。 これからつくっていく強みとしては、新しいビジネスのアイデアをお客様に提案し、併せてIT基盤やシステム、さらにはビジネスオペレーションまで一貫して手掛けさせていただくサービス体制づくりを検討しています。 ITサービスを手掛ける会社は、どこも企業のIT部門に対して商売をしています。クラウドかオンプレミスかといった機能や利便性の違いなどはあっても、結局はコスト競争に収れんします。そこで我々は、企業の事業部門に対し、縮小傾向にある日本市場においてますます難しくなる収益拡大のお役に立てるビジネスのアイデアを提案し、付加価値の高いサービスを手掛けることで、他社にない競争優位性をつくろうと考えているわけです。
今後に向けて、社員にはどういったことを求め、期待していますか?
当社がスタートした時、社員とともに経営理念をつくりました。その1つめには、次のように書かれています。「私たちはお客様のベストパートナーとして、お客様のビジネスに対して新しい価値を生み出す創造的なソリューションをローカルおよびグローバルに提供します。」 我々がやりたいことがここに集約されているわけで、社員にはこれを推進してほしいという思いに尽きますね。そのことが、2つめとして次のように書かれているわけです。 「私たちは一人一人がプロフェッショナルとしての自覚と誇りを持ち、絶え間なくスキルや人格を磨き、前進します。」 そして、これを実現させるために、3つめ以降が次のように書かれています。 「私たちの最大の強みは社員そのものであり、社員のプロフェッショナル意識とスキルを向上させていくための支援をしていきます。」 「私たちは社員の能力や人格に基づき公正に、かつ適正に処遇していきます。」 「私たちは高い倫理観と高潔なる精神をもって、誠実かつ公正な企業活動を遂行します。」 「私たちは、健全な利益を生むと共に、私たちの家族や世界中の人々から称賛される会社になることを目指します。」 まさに、この企業理念にすべてが書かれているということです。
人材育成の具体策としては、どういったことをお考えでしょうか?
「育つ人材は勝手に育つ」という思いがあり、そういう人材がいかに勝手に育つ環境をつくるかが大事だと思っています。研修プログラムも揃えてはいますが、それよりも意欲やリーダーシップがある人材を、新しいビジネスを開拓していくタスクにアサインして、アドバイスを与えつつフォローアップしていくということが大切だと考えています。そのようにして育てたコア人材を組織の各所に置き、その周りの人材を彼らが育てていくという組織づくりをしていきたいと考えています。
最後に、オフタイムの過ごし方についてお聞かせください。
家でトイプードルを飼っていまして、土日は朝夕の2回、散歩に行くのが日課となっています。犬の意思を尊重して引っ張られて行きますので、冬場は1回1時間半くらいたっぷり歩きます。最後のほうは、そろそろ帰りたいからと私が引っ張るわけですが(笑)。いい運動になっていますね。