ご略歴をお教えください。
1988年に大学を卒業し、アルプス電気株式会社に入社しました。入社した1年後に100%子会社だったカーナビやカーオーディオメーカーのアルパイン株式会社が東証2部に上場し独立するとともに、私はアルパインに転籍となりました。以来30年間、エンジニアとしてカーナビゲーションシステムの開発に携わっています。海外進出も手掛けました。 なお、アルプス電気とアルパインは経営統合し、2019年1月にアルプスアルパイン株式会社になりました。 90年代はカーナビが急速に普及していった時期で、当時は数十社という大半の大手電機メーカーが軒並み参入していました。市場が右肩上がりを続ける中、非常に楽しい仕事生活を続けられたと思います。 当社は2018年10月、アルパインの100%出資子会社となり前任社長が経営に携わっていましたが、2019年6月に赴任先のドイツから帰国したタイミングで、私が後任に指名されました。
今後、御社をどういった会社にしていきたいと考えていますか?
アルプスアルパインの100%子会社ではありますが、その色をまとわない、いわば“出島”的な独立性を持った会社にしたいと思っています。この会社には、親会社にはない、小規模だからこその小回りが利くところや、稟議などの手続きが少ないことによるスピード感といった良さがあります。これを生かして、まさにベンチャー的に親会社が不得意なことやできないことにどんどんチャレンジし、存在感を示していきたいですね。 とはいえ、100%出資するほど期待している親会社の業務をハイレベルにこなすのはもちろんです。一時期数十社が参入していたカーナビ市場で現在生き残っているのは、アルプスアルパインはじめ3~4社程度。アルプスアルパインが生き残っている強みの要因は、自動車メーカーの要求に愚直に応え続けてきたこととともに、カーナビだけでなくディスプレイや通信ユニットといった周辺装置とのインテグレーションに力を入れてきたからだと自負しています。これをソフトウェア面で支える当社の存在は、グループにとってなくてはならない存在です。ですから、70%ぐらいは親会社の業務に力を割き、残り30%は自由に新しい領域にチャレンジし続けたいと思っているところです。
市川さんの仕事観をお聞かせください。
人生そのものですね。ワークライフ・バランスといったことは考えたことはありませんが、人生を楽しむには、仕事を楽しめることが不可欠だと考えています。仕事を楽しくするためには、人から言われて動くのではなく、自ら動くことです。 私の場合は、アルパインのカーナビ製品の欧米展開を主導しました。自社の製品に搭載する地図データを現地のものに替えアプリケーションソフトを改造すれば海外でも通用すると、アメリカへの進出を提案したのですが、「そんなの無理」と最初は誰も動かなかったのです。そこでチームを組んでアメリカに渡り、現地の地図情報会社に当たってアメリカの自動車メーカー向けの製品開発を現地のホテルに籠って行ったのです。次にヨーロッパにも出ようと、ドイツでの開発も行いました。こういったフロンティアスピリッツが仕事を楽しむには重要ではないかと思います。そもそも、未知の場所に導くナビゲーションに関わっているんですから(笑)。
社員に対して、どういった存在になってほしいかの思いをお聞かせください。
当社の本社がある札幌は住みやすいせいか、みんな出て行こうとしないんです(笑)。私としては、もっと海外に出て行って見聞を広める武者修行をしてきてほしいと願っています。一部、1991年の創業時代から在籍している社員の中には野武士的な人もいるにはいるのですが、若い社員にも積極的なフロンティアスピリッツを期待したいです。せっかくグローバル企業であるアルプスアルパインの子会社になったので、親会社の海外拠点も活用できますし。 私がこう言うのは、今の自動車をめぐる“CASE”(Connected、Autonomous、Shared 、Electric)の波に、日本は2周は遅れているとの危機感から。アメリカや中国を始めとして、進んでいる現状をこの目で見て、CASEにも関わる一員として何ができるかをぜひ考えてチャレンジしてほしいですね。
読者へのメッセージをお願いします
当社は大手企業の100%子会社ですから、安定性はバツグンです。ちょっとやそっとのチャレンジによる失敗でグラつくようなことはありません。そこが普通のベンチャーと一番違うところと言えるでしょう。そして、当社の強みは創業以来の位置情報技術にあります。“位置情報×センサー”“位置情報×IoT”といった領域は、CASEだけでなく様々な世界でホットに注目されている最先端技術です。そのほか、サウンドの技術も再注目されていますね。こうした技術開発に安定した環境で伸び伸びと思い切りチャレンジできるのは、当社の大きな魅力ではないかと自負しています。 さらに、当社は優しくて人当たりのいいメンバーぞろい。ギスギスしたところなど微塵もなく、楽しく仕事ができることも請け合います。ぜひアクセスしてください。