日本オーエー研究所を設立するまでの経歴は?
大学を卒業後、商社系の繊維会社に就職。輸出許可をもらうために税関や協会を走り回っていました。当時はコンピュータがなく、テレックスを使っていた時代。輸出に関する書類を作るのも、ものすごく手間がかかっていました。そのうち、貿易関連の仕事にもコンピュータが導入されると耳にし、自費でコンピュータを購入。父親が協同組合を運営していたので、そこで使う販売系ソフトを、仲間と一緒に作りました。26歳のときです。 その協同組合のつてで、完成したソフトをIBMに持ち込んだところ、褒められて「お金を稼ぎたいなら会社を作れ!」とアドバイスをもらいました。そこで、コンピュータを一生の仕事にしようと、28歳で独立。コンピュータを自由に触れる環境が、当時の人にはとても魅力的だったようで、知り合いに声をかけたら5人が集まりました。社員を雇ったものの売り上げが少なく、給料が払えず設立当初は社長の私が外で働いて社員の給料を稼いでいました。社員が30人になるまで、自分の給料なんてありませんでした。それで、創業者なのに健康保険証の番号が30番なんです。
日本オーエー研究所設立後の流れは?
最初の1年間は3次請けの仕事をしていました。3年目に日本電気(NEC)の口座を取って、日本電気の下で電電公社(現・NTT)の仕事を請け負うように。その後、電電公社が民営化でNTTになったとき、NTTに口座を作りました。電電公社の現場や日本電気の頭越しに、NTTの本社へ直接話を持って行ったため、あちこちで蜂の巣をつついたような大騒ぎ。本社が動き出しているため、現場もNOとはいえず、いつしか話は収まり、NTTから仕事を請けるようになりました。 若気の至りもあったかもしれませんが、直接本社に話を持っていったのは正解でした。上に行けば行くほど、こちらの話を真摯に聞いてくれました。「頑張ってください」と励ましの言葉をいただき、取引開始を快諾してもらいました。そして、現在のNTTデータの前身であるNTTデータ通信ができ、そこと取引するようになり、今に至ります。
エンジニアという仕事のやりがいは?
明治維新のために奔走した幕末の志士と同じように、ITエンジニアも時代の大きなうねりの中で、歯車の一つかもしれませんが、確実に時代を転換させていると思います。私たちITエンジニアは、そういうダイナミックな仕事をしています。苦しいこと、嫌なこと、辛いことはたくさんあります。自分がIT業界のプレイヤーであり続ける理由は、世の中の役に立っているという自負です。自分たちがITの時代を作っているのではなく、むしろ反対にITの時代に自分が動かされている感覚さえ感じています。 開発したシステムを使う側はいつも言いたい放題ですが、システム開発は地味な作業ですし、大変なことの連続です。でも、使う側の喜びを想像し、目に見えないユーザーへの責任を負っている感覚を持てば、当社の仕事は国のシステムを作るやりがいのある仕事です。役所の仕事は品質管理がしっかりしており、NTTデータも大手のクオリティを維持するために妥協しません。だからこそ、レベルの高い仕事ができます。
仕事をする上で大切にしていることは?
「過去は追わない。未来を追いかける」 絶対に逃げない、あきらめない、去る人は追わないことを大切にしています。あとは、とにかく「やる」ことです。英語で言えば「DO」ですね。時間をかけて大きなことをやる人間よりも、簡単なことをすぐにやる人間を信用します。行動が早い人間は時に思慮が足りなく失敗するかもしれませんが、それでも学ぶものがあるはずです。オリンピック精神のように、参加することが大事。オリンピックも参加すれば、たとえビリでも記録に残ります。小さい記録でも長く続けると大きな未来につながっていきます。 私もたくさん失敗してきました。お客様にずいぶんと怒られました。でも、あるとき気が付きました。お客様が怒っているのは「こうしてほしい」というヒントをくれているのと同じだと。怒られたことを真摯に受け止めて、同じことを繰り返さないようにすれば、力不足だったこと、失敗したことがクリアできます。すると、怒られるのが大好きになりました。謝りに行ったり責任を取ったりするのは社長の役目。これからも社員のために怒られてきます。
社員に求めることは?
入社するときは「かたき討ち」の心構えで来てほしいですね。みんな妥協したり、あきらめたり、チャンスを逃したり、いろいろあるでしょう。私は自由に会社を経営してきました。ほかの会社で思うように働けないと感じている人は、そのかたき討ちのつもりで自由に働いてほしいですね。自分のキャリア、人生の中で、「なにクソ!」と思ったことがあるはずです。当社で働く中で、それを乗り越えてください。 あと、当社で働いて、ぜひ「正しい自分」を見つけてください。気付いていない人もいるかもしれませんが、自分の中には必ず「正しい自分」がいます。「こうすべき」とわかっているのにできないという経験はありませんか?「こうすべき」と囁いているのが自分の中の正しい人です。正しい自分を見つけて、常に一緒に行動すれば強くなれます。失敗しても正しい自分が「なんだ、出来ないのかよ」と言ってくれる限り、人は成長します。人に言われたり、人を真似たり、人からやらされたりでは成長しません。正しい自分に突き動かされるからこそ、人は成長するのです。