株式会社総合オリコミ社

広島県廿日市市にある株式会社総合オリコミ社は、流通小売業の折込チラシ制作を中核とした販売促進支援事業を手掛けている。複数の店舗を持つ大規模なホームセンター、ドラッグストア、スーパーマーケット、ディスカウントショップなどをクライアントに持ち、同社が折込チラシ制作を請け負っている店舗は、全国46都道府県にある。

1975年に印刷物全般の企画・制作プロダクションとしてスタート。創業当初は印刷の版下を作る会社であったが、時代の推移や経済環境の変化に合わせて得意分野を伸ばし、経営資源を集中して成長してきた。

「広島で創業し、中国・四国・九州を広島本社、中部から近畿にかけては大阪支店、関東圏から東は東京支店と、現在は3つの拠点で全国のお客様の販売促進を支援しています。2020年12月現在、スタッフは全国で154名、そのうち86名が正社員です。制作部隊はみんな広島で働いています。売上高は26億円、全国7000店舗と取引があります」（代表取締役　中島良之氏）

大規模なチェーン展開をする企業の折込チラシの制作は、大手印刷会社、あるいは大手広告代理店が一次請けになるケースが多いが、総合オリコミ社ではプライム案件が多数を占めている。

「代理店経由ではクライアントの要望が見えないこともあり、直取引だからこそクライアントに寄り添った柔軟な対応ができると考えています。また、クライアントの意見をフィードバックに制作部隊も成長することができ、社内にノウハウが蓄積されます。当社は折込チラシ制作のシステム化をいち早く取り入れた実績もあり、今後もリアル店舗のデジタル時代の販売促進をサポートしていきたいと考えています」（中島氏）

折込チラシ制作はトラディショナルな業界で、お世辞にもデジタルシフトが進んでいるといえないが、総合オリコミ社は折込チラシの制作過程をデジタル化し、作業の効率化を進めスピーディーで正確な仕事を強みに成長してきた。

「例えば折込チラシに掲載する商品のデータは、たいていの場合、クライアントからExcelで届きます。しかし、これが会社や店舗によってフォーマットがバラバラ。総合オリコミ社では、自社で作ったプログラムでフォーマットを自動で整えます。また、チラシに掲載する商品画像の管理もデータベースで行い、商品画像の検索も簡単に素早く出来るようにしました。昔は商品画像を使いたいと思っても、画像写真の一覧から保管しているフィルムを探し出して、現像して、と手作業が多くありました。今は商品データのExcelから、チラシ紙面に掲載する画像や価格といった素材データを作るまで、ほぼシステムで自動化出来ています。デザイナーはデザイン業務に専念でき、営業はクライアントへの提案や打ち合わせに時間を使えるようになりました。随分とデジタル化されましたが、まだまだITの力で折込チラシ制作は効率化できると考えています」（中島氏）

折込チラシ制作のデジタルシフトに取り組んで成長の原動力としてきた総合オリコミ社だが、今後の成長を考えると更なるデジタル化が必要だと考えている。同社がメインにしている折込チラシは、新聞の購読者数が減少している現在、先行きが明るいとはいえない。折込チラシの制作自体はシュリンクしていくのは自明かと思える。しかし…

「新聞の購読者数が減っており、折込チラシもなくなると思われがちですが、Webでチラシを届けるニーズが増えています。ピーク時に年間10億枚だった当社の印刷部数は、7～8割に減っていますが、チラシ制作の依頼件数は減っていません。Webを使ったチラシ配信サービスが増え、チラシへのニーズは落ち込んでいません」（中島氏）

総合オリコミ社では、Webチラシへのニーズをいち早くとらえて、WEB事業部を立ち上げ、Web広告配信やLINE公式アカウントの運用代行事業も始めるなど、新聞の折込チラシで培ったノウハウを時代に合わせた形で活用している。

「折込チラシというのは、優れたユーザーインタフェースを持っており、限られたスペースで届けなければならない情報をユーザーに届けるための経験値が詰まっています。その折込チラシ制作のノウハウを、Webでの販売促進につなげることで、クライアントも当社も成長を続けられます。また当社は小売り・サービス業チェーン店に特化した数少ないLINE公式アカウント正規代理店。LINE株式会社が定めた条件をクリアした認定パートナーです」（中島氏）

総合オリコミ社は、全国でも早い段階で折込チラシ制作のシステム化に取り組んだ会社。テクノロジーの進化のスピードが早まり、システム化できる点が増えている現状を鑑みて、今後さらに成長していくために新たに外部からエンジニアを迎える決断をした。

「当社は新卒採用をメインに人材育成を続けてきました。現在、中途採用の社員は2名、あとはすべて新卒入社の社員です。しかし、今後の当社の成長を考えると、ITは欠かせないファクター。エンジニアの知恵と知識、経験が当社には不可欠です。社内に新しい風を吹かせるためにも、外部の人材は大歓迎。当社のアセットを活用して、Web時代の販売促進支援で他社との競争に勝ち抜いていく人材を広く募集しています！」（中島氏）

総合オリコミ社では、社内のデジタルシフトを加速させるため社長直属の「経営企画室」を作った。部署や支社の垣根を越えた作業の効率化や新規事業の開発を進めていく計画だ。そのためにエンジニアを必要としている。営業やデザイナーのスタッフが使うシステムを作るのがエンジニアのメイン業務。社内のメンバーがクライアントだけに、開発を進めやすい環境といえるだろう。

「営業やデザイナーのスタッフはITの専門知識はありません。要求はできますが、要件に落とし込むのはエンジニアの役割。詳しい指示があるわけでもなく、自ら考えて動ける人材に活躍してほしいと思っています。エンジニアのスキルで会社の課題解決を進めてください」（経営企画室マネージャー・中道佳彦氏）

エンジニアが少数しかいないため、裁量をもった仕事ができそうだ。

「全体のアーキテクチャは大きいですが、個別のシステムは小さく、一人で最初から最後まで担当できる楽しさもあると思います。要件定義からプログラミング、実装まで手掛けられ、上流から下流まですべて携わることができるので、エンジニアのスキルアップにもつながります」（中道氏）

新しい技術も積極的に取り入れられ、エンジニアとして成長が見込める点も魅力だ。

「外部の勉強会で知り合ったエンジニア仲間は、PythonやNode.jsなど新しい技術を勉強しても自分の仕事はJavaばかりなのに、総合オリコミ社は新しい技術を取り入れられる環境にあってうらやましいといわれます。新しい技術を試すのは大歓迎。自分で学んで試してみたい技術があれば、積極的に提案してください」（エンジニア　小栗潤一氏）

社内向けの開発だけでなく、外部へ向けた自社サービスの開発にチャレンジできる可能性も多分にある。

「どの地域からどれくらいの人が店舗に来店しているか可視化するWebサービス『デジタル商圏マップ』をリリースしました。今後は社外へのサービス提供も積極的に取り組みたいと考えています。社内からの受託開発だけでなく、自社サービスの開発というクリエイティブな仕事もできると、エンジニアのモチベーション維持につながります」（小栗氏）

経営企画室は、自社のデジタルシフトを進めるにあたって「人材戦略」にも取り組んでいる。

「就業規則や制度を見直して、働きやすい環境の整備を進めています。外部からエンジニアを迎えることで、社外からの風を吹かせたい。変えるべき点をどんどん指摘してもらいたいです。働き方を変えるには、業務のIT化は不可欠。今まで10分かかっていた作業がITの力で10秒になれば、それだけ働く時間を削減でき、クライアントへの付加価値に費やす時間が確保できます。またクライアントの課題解決にもITは不可欠です。我々自身が当たり前にIT化を進めていなければ、クライアントへ十分な支援ができなくなっていきます。そのためにもエンジニアを増やしたいと考えています」（中道氏）