ご略歴をお教えください。
高校時代は宇宙に興味があり、物理学者を目指して大学に入学しました。入学後、宇宙のシミュレーション研究のためにスーパーコンピュータと出合います。スパコンの中に宇宙を再現してビッグバンの発生をシミュレートするといった実験を行いましたが、コンピュータの中に世界を再現する面白さに魅かれました。宇宙に限らず、日本列島を再現して気象や災害等のシミュレーションもできるわけです。すると、徐々に関心がコンピュータに移り、大学3年時に情報理工学系にシフトしました。元々自分は知識欲が旺盛で、一つの物事を突き詰めるだけでなく、色々なことに関心が広がるタイプです。 そして、大学院(情報理工系研究科コンピュータ科学専攻)の頃にAIがブームになり、私も画像解析AIに関わりました。例えば、医療系のプロジェクトでは、カメラで顔を撮影し、その画像を解析して心拍を測定するAIを扱いました。鼓動に応じて血液中のヘモグロビン量が変動すると顔色が変化し、それを捉えて解析するわけです。人の目では認識できない変化も、カメラやAIでセンシングできる。すごい進化だと感じて、こうした道具を使ってあらゆる物理空間をデータ化すれば世の中を変えることができると考え、2015年に大学院を中退してIdeinを創業したという経緯です。
御社を起業して実現できたこととは?
「実世界のあらゆる情報をソフトウェアで扱えるようにする」というミッションを掲げ、それを実現させるためにエッジAIプラットフォーム『Actcast』を開発しました。AIブームの中、AIのアルゴリズム開発を手掛けるスタートアップばかりの中、大規模にデータを運用するインフラがいずれ必要になると着目するところはほぼなかったと思います。そこで当社がいち早く『Actcast』をスタートさせ、今日ではファミリーマートという日本全国に拠点を展開している企業等をお客様にすることができて、約1万5,000台という国内最大規模のエッジAIを展開することができています。想定以上に時間がかかりましたが、マイルストーンはクリアしました。 そのエッジAIからリアルタイムでビッグデータを集めていますが、現状では『Actcast』でしかできないこと。当社を創業した時点では何もない、夢に描いていたことを、ここまで現実化できたのは、大きな進歩だと自負しています。 しかしながら、たかが1万5,000台です。まだまだ夢の途中であり、これから数万台、数十万台と広げ、さらに国内で積んだ実績をベースにグローバル展開し、数百万台のメガプラットフォームを目指します。是非一緒にチャレンジしましょう。
中村さんの仕事観をお聞かせください。
座右の銘は、湯川秀樹博士の「一日生きることは、一歩進むことでありたい」という言葉。私は非常に成長志向が強く、昨日していた同じことを今日もやりたいとは思いません。そんな私にとって仕事とは、自分の成長手段にほかなりません。もちろん、これは私自身のモットーであり、社員にも求めることではありませんが。いずれにしろ、どういう仕事を選ぶかは、即ちどういう人間になるかを決めることだと思っています。 進路を、アカデミアではなくビジネス界に決めたのは、こちらの方が早く進められると考えたから。また、既存の企業ではなく起業を選んだのも、新しいことにリスクを負ってチャレンジするのは、こちらの方がやりやすいだろうと考えたからです。GAFAも全てがスタートアップでした。結果的に、起業を選んで正解だったと思います。
社員に対して、御社でどういった存在になってほしいかの思いをお聞かせください。
Ideinで働いたことが本人の成長に繋がってほしいと思います。そのためにも、当社で長く働いてくれるのはありがたいことですが、ネクストキャリアに転じたとしても「あのIdeinにいた人材」と評価される会社にしなければならないと思っています。 また、シリコンバレーのスタートアップが成長して起業家を輩出するように、スタートアップとは循環していくものだと思います。ですから、当社から次の新しいテーマにチャレンジする人材が生まれてほしいとも願っています。 読者の皆さんに対しては、当社は世の中にない、全くの新しいことを開拓していく面白さと成長環境があるとお約束します。新しいことだけに失敗の連続で辛い局面もあるでしょうが、こういう環境を楽しめる人ならば、一気に成長できるのではないでしょうか。是非アクセスしてください。
オフタイムは、どういった過ごし方をしているのでしょうか?
小学5年と5歳の娘がいて、休日はよく公園等に連れて行きます。自転車が好きなので、やや遠くの色々な公園に出掛けますね。その近くの美術館や動物園にも寄ってみたりして楽しんでいます。 また、個人的にはジャズピアノを弾くことが好きで、仲間とピアノバーを借り切ってみんなでお酒を飲みながら演奏し合って楽しむといったこともしています。その仲間達と古本屋巡りや高尾山にハイキングに行くといったこともしていますよ。