株式会社レオンテクノロジー

サイバーセキュリティの診断・対策・事故調査、運用保守・監視を手掛ける株式会社レオンテクノロジー。同社は特定のパッケージソフトやシステムをあえて持たず、「顧客のニーズに応じたオーダーメイドの技術提供」に軸足を置き、顧客にセキュリティ技術そのものを提供する「ホワイトハッカー集団」である。サイバー攻撃やハッキングから顧客のビジネスを守るために、顧客と密なコミュニケーションを取りながら課題発見・企画・解決に繋げている。取引先には、航空会社、ゼネコン、日用品メーカー、インターネット銀行、エレクトロニクス商社、食品総合商社、医科大学等、業界や規模を問わず様々な顧客が名を連ねる。同社の技術力・解決力が顧客から高く評価され、紹介に次ぐ紹介で引き合いが急増中だ。従業員数41名と少数精鋭体制を貫きながら成長を続け、2023年に18期目を迎える同社は、現在新しい仲間を必要としている。

同社のセキュリティ事業は三つの領域で構成されている。
◆診断：顧客が把握できていないサイバーセキュリティの脅威を発見し、明確化するサービス
◆対策支援・助言：可視化した脅威を最小化するためのアドバイス・技術支援を行うサービス
◆インシデント対応（フォレンジック）：サイバーセキュリティ事故に対する調査と対応支援を行うサービス

さらに、顧客のニーズに応じて費用対効果に優れたセキュリティ対策システムの開発も手掛けている。このことから分かるのは、同社は「サイバーセキュリティに関する顧客の課題をワンストップで対応できる」体制ということだ。従業員41名（うち技術部門は2/3）という規模で全て完結させている同社は、それだけでも優位なポジションにあると言えるだろう。

もっとも、初めからそのポジションを獲得できていたわけではない。2005年の設立当初は、セキュリティに力は入れながらも、開発～保守をメインの事業としていた。

「2011年の東日本大震災以降、企業がBCPやサイバーセキュリティに関心を払うようになり、潮目が変わりました。そこで当社も思い切って他の事業の受注を止め、サイバーセキュリティ一本に絞ったのです。2013年には開発案件はゼロになりました」（代表取締役社長 守井浩司氏）。

そして直近5年で確たるポジションを築き、経営が安定。「サイバーセキュリティはレオンさんに」という顧客が増えているのだ。

「診断」「対策支援」「フォレンジック」の3領域をワンストップで手掛けられるのは、同社のセキュリティエンジニアが3領域全てを網羅できる技術力を持っているからである。もちろん、初めから全てを網羅するセキュリティエンジニアが揃っていたわけではない。エンジニアにスキルアップを促しているのは、同社の仕組みである。

同社では細かなチーム分けをしていない。技術部門に関しては、診断を行うチームと対策支援・フォレンジックを行うチームの二つに“一応”分かれている。それは「まず診断から」という顧客ニーズが多いためであり、業務上の垣根はないと言っていいだろう。診断によって顧客の課題が特定した後、診断を担当したエンジニアは対策支援やフォレンジックのエンジニアと連携。プロジェクトを組成し、課題解決に当たる仕組みになっている。顧客の課題ごとに組成されたプロジェクトには様々なエンジニアが出入りすることで、自らにサイバーセキュリティに関する知見を蓄積していく。だから診断・対策支援・フォレンジックをカバーできるエンジニアが育っていくのだ。

「サイバーセキュリティは“総合格闘技”です。サイバー攻撃を仕掛けてくる相手は、パンチ、キック、締め技、何を繰り出してくるか分かりません。そんな相手に対して『自分はキックにしか応戦できない』というわけにはいかないのです。不得意があるのはやむを得ないとしても、相手の技に対する情報は常に仕入れて、判断できる環境を整えておく必要があります。それにはチームを細分化してセクショナリズムに陥ることは避けたい。ですから担当を越境してプロジェクトを組成してもらっています」（執行役員 前田竜佑氏）。

セクショナリズムに陥れば、自分の持ち場で得られた知見のみが頼りなので、顧客に提供できる技術も先細る。同社はその逆を行くことで顧客からの評価を得ているのだ。

このような環境は、優れたエンジニアを引き寄せる。子供の頃、利用中のチャットサイトがハッカーによって荒らされる様子を見てセキュリティに興味を持ったエンジニア。学生時代にステガノグラフィーやワンログインパスワードを、大学院でバグ発生時の修正フロー等を研究したエンジニア。SESで開発実務を、自社開発でプロジェクトマネジメントをそれぞれ経験したエンジニア。今、彼らはそれぞれの方法でスキルアップを行い、市場価値を高めている。

自らの成長に貪欲なセキュリティエンジニアに対して、同社は投資を惜しまない。エンジニアからの「こういうことをやりたいので予算が欲しい」という申請があれば、（少なくとも現時点まで）まずOKが出るという。

例えば、シニアセキュリティエンジニアの北川慎人氏はオフィス内に「北川ラボ」を設けた。これは顧客からの依頼で様々なサイバーセキュリティを検証するために、限られた人しか入れないワークスペースである。さらに、より作業に集中しやすい環境にするために、防音壁も導入。費用は全て会社が負担した。また、新卒入社2年目のあるセキュリティエンジニアは、マルウェア解析を行うために、数十万円もするコード分析ツールを購入したいと申請し、認められた。

「お客様と同じ環境を再現するために同じ製品を全て購入し、設定をいじったり攻撃をかけたりしたい、という要望は珍しくありません。場合によっては数百万円もかかりますが、今のところNGを出したケースはないですね」（前田氏）。

そのほかにも書籍やセミナーの費用負担はもちろん、「WinとMac両方持ちたい」という要望にも応えている。資格取得時に受験料や資格手当を支払うケースは一般的だが、同社では合否が決まる前に受験料もサポートするという徹底ぶりだ。さらにオフィスにはサンドバッグや麻雀卓、カードゲーム等、仕事に直接関係のないアイテムも会社の費用で置いている。

このような環境を整えている背景には、初めに触れた「顧客のニーズに応じたオーダーメイドの技術提供」という方針がある。この方針を現場で体現しているエンジニアは、誰一人欠けても顧客との繋がりに悪影響を及ぼす。同社のエンジニアは、いわば同社のブランドなのだ。

「彼らの市場価値はとても高いので、どこに行っても通用するでしょう。そんな彼らに『それでもレオンテクノロジーで頑張りたい』と思ってもらうために、できるだけ居心地の良い環境を提供したいのです」（前田氏）。

同社のエンジニアは会社の計らいに甘えることなく、「他社には出せないような優れた診断結果報告書を提供したい」「早く若手を育てて、自分は新しい領域の研究開発に携わりたい」「セキュリティに対する顧客の意識をもっと高めたい」と前のめりだ。そんな一人ひとりのバイタリティこそが同社の技術力・解決力を高め、顧客のビジネスを守っているのだと感じた。