株式会社TERAZ

株式会社TERAZは、フリーランスのエンジニアをSES（システムエンジニアリングサービス）にて提供する会社。2020年12月に設立され、2023年9月現在、約80名のエンジニアが同社からシステム開発会社やITサービス会社に提供されている。

フリーランスのエンジニアを集めるために、サイト『リモーターズ（Remoters）』を運営している。IT・Web系に特化したフリーランス案件を取り扱い、「全国どこでも、安心できるリモートワークを。」をコンセプトに掲げ、在宅ワーク（リモート）案件を専門にしている。

「コロナ禍に奨励されたリモートワークですが、特にWebクリエイティブ職やIT系技術職のリモートワーク実施率は平均よりも高く、求職者もフルリモート案件を求めている現状があります。ITエンジニアやWeb系の職種はフリーランスで働く人も増えており、フリーランス×リモートの案件に対するニーズの高まりに応える形で、『リモーターズ』を立ち上げました」（代表取締役・今中更氏）。

フリーランスエンジニアへの単なる案件紹介ではなく、同社と業務委託契約を結んだ上で、SESとしてクライアントの案件に参加する。もちろんリモート案件なので出社することはほぼない。

「クライアントがエンジニア不足に困っている現状で、地方在住のエンジニアをフルリモートで都内の会社のプロジェクトに参画してもらうことで、不足するリソースを『リモーターズ』でカバーしたいと考えています。フリーランスのエンジニアにとっても、当社が間に入ることで、クライアントとのクッションの役割を担い、確定申告等の税金関係、経費等についての相談にも乗ります」（今中氏）。

フリーランスエンジニアが『リモーターズ』でSESエンジニアとして働くことで、フリーランスと会社所属のエンジニアの中間的な働き方ができる。

「フリーランスエンジニアは自由に働いて稼げる、というイメージを持っている人もいますが、その一方で案件を探したりクライアントと良好な関係を維持するのに努めたりと、エンジニアのコア業務以外で面倒なことやリスクも伴います。『リモーターズ』に登録して働くことで、フリーランスと会社所属の“いい所取り”な働き方が実現します」（今中氏）。

リモート案件とフリーランスエンジニアを繋ぐ同社では、現在、同社の正社員として働いてくれるエンジニアを募集している。「リモート×フリーランス」という同社のビジネスモデルに反する求人に映るかもしれないが、「リモート×フリーランス」の生み出す役割を期待しているという。

「コロナ禍が落ち着いて、リモート案件が減少に転じています。ITエンジニアやWebクリエイティブ職でも同じような傾向にあり、『リモート×フリーランス』の仕事を増やして、世の中の働き方を柔軟にしたいと考えている当社としては、この傾向を黙って見ているわけにはいかず、『リモート×フリーランス』の案件を増やすための努力を始めました」（今中氏）。

リモート案件が減少している背景には、クライアント側にフルリモートエンジニアの使い勝手に関する懸念がある。常駐するエンジニアに比べ、コミュニケーションコストがかかる。クライアントとフリーランスエンジニアの間に常駐エンジニアを入れて、コミュニケーションをスムーズにすることで、フルリモートエンジニアの活用機会を増やしていく戦略だ。

「当社の正社員エンジニアには、クライアント先で当社のフルリモートフリーランスエンジニアのハブのような役割を期待しています。同じように、カスタマーサクセスの部署を作って、クライアントのニーズや困りごとを受け取る専門部署にしようかと考えています。これまでSES業界では“営業”がクライアントとエンジニアの間に入って調整をしてきましたが、営業とカスタマーサポートと常駐エンジニアが密に連携を取ることで、クライアントに高い価値を提供したいと考えています」（今中氏）。

同社は、SES会社として創業したわけではない。スタートアップのプロダクトを受託開発する会社を目指していた。しかし、並行して進めていたSES事業で同社へのニーズが高まり、現在はSESを主力事業に据えている。

「伝統的なSESを事業にしたいわけではありません。当社だからこそ生み出せる価値をクライアントに提供したいと考えています。パートナー企業は沢山ありますが、一方で事業会社とのコネクションを広げて、WebシステムやWebサービスの開発時に、当社のエンジニアを参加させられる環境を構築したいと考えています。SaaSのアジャイル開発案件にSESエンジニアがフルリモートで参加する。そんな時代を作りたいです」（今中氏）。

同社は「社会に新しい価値を創り出す。」をミッションに掲げている。同社が新しい価値を提供する先は、フリーランスエンジニアとクライアントの双方だ。フリーランスエンジニアに対しては、「フリーランス×リモート」の働き方を安心して選択できる土台を提供していく。加えて、フリーランスエンジニアのキャリアについても、登録時や案件紹介時に丁寧なヒアリングをし、キャリアプランを一緒に考え、つくっていけるように心掛けている。

一方、クライアントに対しては「エンジニアの売り手市場」の中で、安定して技術力を確保できる環境を提供しようと考えている。

「エンジニア不足が常態化した結果、SIerによってはSESエンジニアを客人扱いしているところもあります。エンジニアがいないと困るのは理解しますが、当社としてはクライアントこそお客様に当たるので、当社が提供するSESエンジニアと一緒に価値を生み出せる関係を作りたいと考えています」（今中氏）。

エンジニア不足による売り手市場は、エンジニアにとって喜ばしい状況だが、IT業界全体を考えた時、行き過ぎては業界全体へマイナスに作用すると、今中氏は続ける。

「売り手市場だからエンジニアはどんどん自分を高く売ろうとする。クライアント側から見た時、必ずしも良い面だけではなくて、バリューを提供されていないのに高いお金だけを支払っているケースも見られます。SESという事業は、IT業界の調整弁です。エンジニア売り手市場の新しい調整弁を新たに作る必要を感じています。SESというビジネスモデルもあちこちで制度疲労を起こしています。これからの時代に即した新しいSESのカタチを模索していきたいです」（今中氏）。

新しい価値の創造に向けて、同社は現在、営業4名、社員エンジニア2名の体制で、約80名のフリーランスエンジニアの案件に対応している。早い段階で正社員10名体制にして、フリーランスエンジニアの規模に合わせて拡大する計画だ。

「正社員には当社の成長、事業拡大にコミットする意識を持ってほしいです。SES業界で新しい価値を創造するというミッションは、やりがいのある仕事になるはずです。エンジニアとしてこれまでに培ったスキルと経験で、そんなやりがいのある仕事にチャレンジしてください。組織面もまだこれから整備が必要。会社の制度設計や福利厚生等も一緒に作っていきたいです」（今中氏）。