どのような経緯でオリジナルプリントのビジネスにたどり着いたのですか。
起業した当初は、印刷の素材を販売していました。ところが途中で大きな商社が参入してきて立ち行かなくなったため、全国の同業者を見て回ったりして市場調査をしているうちに、「世界に一個しかないオリジナルのものがほしい」というニーズに気づきました。ニーズは確実にあるのに、収益率が悪いから、誰もやらない「一点もの」ビジネス。どうしたら実現できるだろうと試行錯誤し、まず利益を上げるための仕組みを作ることにしたのです。印刷も自社で行ない、さらに納期を極限まで短縮する。受注から納品までのステップを徹底的に検証し、1秒単位で無駄を省いていきました。その結果、一点の注文でも収益をあげられるモデルが完成したのです。 今、デザイナーさんの作品を自由にTシャツなどに印刷するWeb to printサービスを展開していますが、実はアメリカのものを真似したわけではなく、アナログ時代から挑戦していました。最初は、価値のあるデザインを集めた“デザインの銀行”をやろうと思っていたのです。当時はネットがなかったので、デザイン画を預かったら引き出しで保管していました。ところが集めたものの見てもらう仕掛けを作れなくて、結局失敗しました。「UPSOLD」ができたのは、ネットが普及し、スキャナーなども安価になったおかげなのです。
世界展開の展望を教えてください。
2008年の調査では、Web to printの普及率がアメリカで50%、ヨーロッパで30%、日本は4%でした。この数字を伸ばしてきた実績とノウハウをもとに、今後世界で十分に戦えると思っています。 その際にポイントとなるのは、自社で製造工程を持つことでしょう。日本でもUPSOLDの競合サイトはいくつかあるのですが、印刷から配送まで手がけているのは当社だけです。 工場を持つからこそ、スピードと品質を追求することが可能です。今後、世界に出たときには、たとえばアメリカの同業者がライバルになります。彼らは、注文から4日で日本まで商品を届けてきます。距離を考えたらすごいことです。しかしわれわれは、品質面で圧倒的な優位性を保ちながら、アメリカを超えるスピードを叩き出せると思っています。また、注文を受けるWebサービスについて、いかに世界中の人々に興味を持ってもらえるものを提供できるかがポイントになってくるでしょう。
これまでの仕事人生で、一番印象に残っていることは何ですか。
数年前ですが、二日間で6,000枚のTシャツを仕上げて納品したことです。この実績がベースになって、「スピードならイメージ・マジック」として、業界の“駆け込み寺”のような存在になれたと思います。
10年後に社長自身はどんなことをしていたいですか。
先のことは考えず、とにかく今のことに集中するというのが私のやり方です。もちろん、事業における3年後、5年後の展望はあります。間違いなくグローバル企業として活躍しているはずですし、上場も果たしていることでしょう。しかし、自分自身がどうなっているかということは、まったく分からないですね。10年前も、今の姿をまったく想像していませんでしたから。