株式会社アイロベックス

株式会社アイロベックスは、業務システムの受託開発を手がける会社だ。加えてシステムの改修や保守、自社プロダクトの開発、Webサイト制作なども行う。社員数は約30名。同社の特徴は何といっても、1990年1月に設立されたということだろう。創業25年目。大手のSIerなどを別にすれば、世の中に無数にあるシステム開発会社のなかでは格段に古いほうだ。「受注の際に、つぶれそうにないからお宅に決めたと言われることが、よくあります。そんなにみんな、つぶれているのかしら」。こう言って豪快に笑うのは、本部長の杉山淳子氏だ。

同社は、杉山氏がプログラマー、SEとして7年余りの経験を積んだ後に起こした会社だ。バブル崩壊後の平成不況も経験しながら、長らく富士通系列の下請けとしてシステム開発を手がけてきた。杉山氏がもともと業務システムを手がけていたことから、起業後も業界は様々ながら、企業の基幹システムの開発をメインに請け負ってきた。

そして二度目の転機が、2008年のリーマンショックだ。企業のIT投資が激減するなかで同社の仕事も減り、曲折を経て自社で案件を取ってくるようになった。その時点ですでに創業から20年近くが過ぎ、実績もあればノウハウもある。Webサイトなどを通じて問い合わせを受けるなかで、適切な提案ができる点などが評価され、徐々に案件も増えていった。そして、ひとたび受注すれば確かな仕事ぶりで信頼を得て、さらに別の案件や別のお客様を紹介してもらうことも多い。そのような好循環を築き、下請け脱却から約5年経った現在、同社の事業は順調に推移している。

アイロベックスの強みは、やはり25年の実績に裏打ちされた適切な提案とそれを実現する技術の高さだろう。「お客様は、言ってしまえば素人さんなので、これだけのお金を出せば夢のようなものができるのではと期待しがちです。でもたとえば今、Accessベースで1、2人しか使っていないようなもので対応していたのが、いきなり全社レベルのシステムになると規模感が全く違う。10倍のシステムなら10倍の労力をかければできるというものではなく、必要なテクニックやノウハウは30倍、100倍かもしれません。その怖さやリスクをどれだけお客様が理解し、同時にウチがどれだけカバーできるのか、お客様がどこまでならついて来られるのか、そこを見極めて提案することが大事です」（杉山氏）。

闇雲に技術に走ったり、必要以上の提案をしたりするのではなく、クライアントに無理をさせず、だが業務は確実に改善する―その落としどころを見出すことが重要だ。真にクライアントの視点に立ち、誠実に対応することにかけては、25年の経験値がものをいう。実際、提案書が高く評価されることは多く、世の中全体のITリテラシーが上がり、必ずしも金額だけの勝負ではなくなっている今、勝ち残っていく自信はあるという。

社員にもプログラムや設計の技術だけではなく、企業の経営を理解し、提案ができるコンサルタント的な資質を求めるようになっている。業務の難易度は高いが、様々な業界にふれる仕事のおもしろさ、やりがいもまた大きい。

同社の確かな提案力と、実際に構築する技術力に対するお客様の信頼は絶大だ。「残念ながらどんなシステムも永遠には使えませんので、何回も作り直しながら長いおつきあいをしているお客様も多いです。すごく信頼されていると感じますし、その分こちらもしっかりやらないといけません」（杉山氏）。技術と経験値、そしてその結実としての信頼。単純なようでいて鉄壁の強さが、同社にはある。

アイロベクスの経営理念は「卓越した技術によって新しい価値を創造し、取り巻くすべての人々と共に幸せを創るリスペクトカンパニー」だ。「取り巻くすべての人々」には社員も含まれる。誇りと尊敬を持てる会社をつくるために、同社には10項目にわたる行動指針もある。そこには「実行力」「高い志」「誠実」といった言葉が並ぶ。杉山氏の話を聞くと、まさにこれらを実践することで、同社が今日まで成長してきたことがわかる。

社内にはデザイナーもいて、ノベルティーグッズなど何かと制作することが好きな会社だ。この理念と行動指針も、カードサイズのリーフレットにして社員に配っている。実はカードサイズのクレドにはいろいろあり、『アイロベックスSE行動指針』『アイロベックス社員の誓い』という至極まっとうなものに交じって、『アイロベックス飲み会幹事「心得集」』なるものも。「ビールをピッチャーで出すお店を選ぶべからず！」「飲み放題金額が1000円以下はあやしいと思え！」などの言葉が大真面目に並ぶ。「飲み会に3回続けて失敗したので作りました」と、またも豪快に笑う杉山本部長の下、仕事も一生懸命なら遊びや飲み会も一生懸命な社員たちの姿が目に浮かぶ。

本部長が女性だからということも関係あるのか、同社の社員の女性比率は約40％。システム開発会社としては高いほうだろう。社内は明るく華やかだ。とはいえ「みんな、プログラム大好き人間」（杉山氏）というだけに、華やかというよりはサバサバとしたさわやかな雰囲気といったほうが近い。若い社員が多く、和気あいあいと楽しそうだ。でももちろん、決してゆるい会社ではない。社員たちは皆、切磋琢磨しながらプログラムの技術を高め合い、育ってきた。

だがアイロベックスはこれから次のステージに進むにあたり、技術だけではないプラスアルファも求めている。それはコンサルタントの資質と志だ。業務システムの会社から一歩踏み込み、経営を支援する会社としての方向性を打ち出すなか、新たな人材を入れてさらなる成長を目指す。IT技術と経営の視点で多くの会社を支援したい―そんな気持ちを持つ人にはピッタリの会社だ。