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インタビュー画像矢﨑航 矢崎総業(株) 代表取締役副社長 戦略事業担当(AI デジタル・モビリティ・スマートシティ) 矢崎グループ創業家出身の若手経営者。 矢崎総業の創業者、矢﨑貞美の孫にして、前会長の矢﨑裕彦の次男。3人きょうだいの末っ子で、長兄は矢崎総業(株)代表取締役。学生時代までスポーツに打ち込んだ体育会系の明るい人柄は、グループ内で人気。知らない人間はグループ内にいないとか。

これまでのキャリアを教えてください。

新卒で矢崎総業に入社し、私のビジネスパーソンとしてのキャリアはスタートしました。他社の場合、創業家の人間は、いったん外に出て社会人経験を積むことも多いようですが、私は大学を出て新卒で矢崎総業に入社しました。 大学までスポーツに打ち込んできた体育会系の人間で、卒業後の進路として「海外」を意識していました。矢崎グループはグローバルカンパニーなので、英語ができなければいけないからです。海外に行きたいと希望したら「矢崎に入って海外で働いてほしい」といわれ、海外支社で働くことに。最初はボストン、続いてカナダ。一度帰国した後ドイツに6年勤務しました。矢崎の海外転勤は5年が基本スパンです。最初の1年で仕事や生活に慣れて、最後の1年は引き継ぎがある。メイン業務に打ち込めるのは実質3年という考えからです。 矢崎電線株式会社で電線事業部の事業部長を経て、2012年に設立されたグループ子会社「矢崎エナジーシステム」の初代社長に就任し、2020年に新設されたAI・デジタル室の室長も兼務することになりました。(2024年現在室長は丹下)

矢崎グループでどんな仕事を手掛けてきましたか?

ワイヤーハーネスが矢崎グループのメイン事業ですが、それ以外にも電線事業やガスメーター事業など自動車会社をお客様にしない事業があります。私は2つの事業を半々に経験してきたキャリア。今は矢崎エナジーシステム社長です。 2012年にグループ内の自動車メーカーをお客様にしない事業を一つにまとめて、矢崎電線株式会社から社名を変更したのが、矢崎エナジーシステム。矢崎電線株式会社を母体に、ガス機器事業部、計装事業部、環境システム事業部を合わせた会社で、グループ内の組織改革の一環で設立されました。その初代社長が私です。 ワイヤーハーネスなど自動車メーカーをお客様にする矢崎グループのメイン事業と、日本全国の代理店を通じて商品を販売する事業ではビジネスモデルが異なります。競合他社とコンペはあるといっても、自動車がモデルチェンジをするまでの約5年間は取り引きが継続されるビジネスと、日々競合との勝負が続く市場で戦うビジネスとでは、組織の在り方や考え方も違うはずです。

AI・デジタル室の室長に就任した経緯は?

私が社長を務める矢崎エナジーシステムには「デジタルタコグラフ」という製品があります。エンジンの回転数を測定し、自動車の速度変化や走行距離、運行時間など測定する装置です。タコグラフはアナログ方式からデジタル方式に代わって、今は取得したデータをネット、いわゆるクラウドにアップする方式になっています。法律もデジタルに優位になったことも手伝い、矢崎グループ内に自動車走行に関するデータがたまっていきました。 POS(Point Of Sale)システムのデータをマーケティングに活用しているように、POD(Point Of Driving)のデータを使って、新しいサービスができないか矢崎エナジーシステムのメンバーと議論を重ねました。AIを使ったビッグデータ解析が次のビジネスの主戦場となるなか、矢崎グループは他社にないビッグデータを持っていることに気が付きました。 しかし、矢崎グループにはAIのノウハウがありませんでした。そこで、外部の人材を登用して、デジタルの可能性を探るためにあれこれと勉強する社内プロジェクトを立ち上げました。それが、「室」に格上げとなり、発案者の私が「初代室長」に就任しました。 ちなみに「POD(Point Of Driving)」は私の造語です!

矢崎グループがAI・デジタル事業に進出する理由は?

矢崎グループは外から見れば盤石に見えるかもしれませんが、ゲームチェンジャーの登場という漠然としたリスクを常に意識しています。Amazonの登場で、シアーズ、トイザらスなど、アメリカの大手企業は経営破たんしました。アメリカで働いていたころ、その現場を目の当たりにし、既存事業が好調でもいつ現状を根底から覆す企業やサービス、プロダクトが現れるかわからないのを肌で知りました。 AI・デジタルは、矢崎グループにとって「やらないと負ける」領域だと認識しています。「やれば勝てる」ではなく、チャレンジしてもユーザーや社会が求めているソリューションを提供できないと勝てません。これまでにも、矢崎グループ内の各所で、独自にAIへの取り組みやデジタル化の推進をしています。けれども、互いの連携ができていないためノウハウが分散してしまい、効率よく進めているとはいえませんでした。 そこで、グループ内からAI・デジタルにチャレンジしている事業と人材を一堂に集めて、AI・デジタル事業を加速させる体制を構築しました。ゲームチャンジャ―が現れても、それと対抗するのでなく、うまく吸収する考えで矢崎グループの発展に貢献します。

AI・デジタル室をどんな組織にしたいですか?

チャレンジをする人たちが集まる組織でありたいです。AI・デジタル室では「チャレンジ」を全面的に押し出して、ベンチャー企業並みのスピード感を持って新しいビジネスを創造していきます。メンバーが自由に働ける環境づくりを率先し、その成功体験を矢崎グループ全体の前進に活かすことができればと考えています。 矢崎グループが築き上げてきたものには、残すべきものと変えていくべきものがあると思っています。社是のように組織の基礎となる部分を変えないで、時代の流れに合わせて変えるべきものは勇気を持って変える必要があります。特に、みんなで一致団結してモノづくりに励みましょうといった日本的経営は、現代日本の基礎を作りましたが、今後の日本はライフスタイルも変化して働き方も多様化します。AI・デジタル室の使命として、日本的経営の良さを残しつつ、新しい時代にマッチした働き方を追求していきたいです。

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