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インタビュー画像株式会社INAP Vision 代表取締役CEO 川島 祐一朗 新卒でCTOの三窪と同じ企業に入社。官公庁を中心にエンジニア・PMに携わる。27歳でシステムインフラ会社を設立。30歳で単身シリコンバレーへ渡米し、マーケティング・戦略コンサルティングを学ぶ。帰国後、CTOの三窪とともに株式会社INAP Visionを操業。

川島社長のINAP Vison創業までのキャリアを教えてください

新卒でSI会社に入社し、おもに自治体のシステムのインフラエンジニアをやっていました。 27歳で、その会社のチームメンバーと一緒に1社目を起業しました。当時は会社経営について何もわからない状態。本を買ってきて勉強したり会社経営の先輩に教わったり、手探りのスタートでしたね。 その後、経営が安定化して自分も動けるようになったときに、改めて会社経営について学ばないとまずいな…と思ったんです。グローバル化を視野に入れ、最先端の情報の発信源であるシリコンバレーに行こうと決めたんです。 まず、「日本がどれくらいイケてるのか・イケてないのかを知ろう」と、アジア圏や南米など先進国と途上国のIT市場を見て回りました。各国のIT市場の情報を携え、30歳でシリコンバレーに渡り「いよいよ本番!」となったわけです。 会社経営を学ぶためにAppleやGoogleなどいろんな企業に「社長秘書をさせてほしい」と電話やメールでアタック。当然、素気なく断られるわけですが、その中で「協力してあげるよ」と言ってくださったのが、シリコンバレーにある米国法人で指揮をとっていたChatWorkの山本社長(当時)でした。 マーケティングや経営コンサル、プロジェクトマネジメント、人の採用・評価など、あらゆる面で従来の日本の常識が通用しなくなってきていることがわかったのは、大きな収穫でした。その情報を持って日本に帰国し、弊社CTOの三窪とともにINAP Visonを立ち上げたんです。

INAP Visonを創業しようと思った背景は何だったのでしょうか?

日本のIT会社には保守的な人が多い傾向にあります。しかし、日本が世界に追いついていくためには、今のままでは無理。攻めのエンジニアを揃えないといけないと思ったんです。IT会社でずっとサラリーマンとして働いてきた三窪も同じ考えを持っており、一緒に会社を作ることになりました。 実は、私はもともとIT会社に入りたくなかった人間です。 というのも、10代の頃にサーカス団として働いていたときの経験が影響しています。たとえば、演技が終わってお見送りしていると、「まだ帰りたくない!」と駄々をこねるお子さん。その様子を見て、お金を払ってお子さんを連れてきたお父さんは、なんとも満足そうな顔をするわけです。 そのお父さんの嬉しそうな顔が、本当にステキで。夜中までピエロの練習をしたり雨の中でテントを立てたり、そんな苦労が一瞬で報われる。そんな仕事をしたいとずっと思っていました。 一方で、人の感情を介さないITの仕事は、とてもドライで味気ない世界だと思っていました。ATMで1万円出金の操作をして1万円出てきても、感謝の気持ちはありません。それが当たり前。でも、その後ろ側ではエンジニアが大変な思いをして働いているわけです。正直なところ、「エンジニアはなにを生きがいにやっているのだろう…」と不思議に思っていました。 INAP Visionの理念である「おどろかせよう」は、そういった私の実体験から来ています。 動くシステムを納品することは当たり前。落ちないシステムや速いシステムも重要ですが、たとえば、高齢者のユーザーに合わせた画面設計や使い勝手など、プラスαの価値を提供する物作りをしていくこと。 お客さまの期待をいい意味で裏切って驚きを与えられる物作りを続けていくことで、お客さまの満足度向上はもちろん、エンジニアの生きがいにも繋げていきたい。会社創業の背景には、そういった想いもありましたね。

『さんかく60』というビジョンには、どういった想いが込められているのでしょうか?

さんかく(三角)は、「顧客満足度」「パートナー満足度」「従業員満足度」の3つを。60は、その3つがバランスよく均等に成り立っている状態、正三角形の内角60°に由来しています。 かつて、「お客さまは神様」という時代があり、その後に企業がこぞって「従業員満足度No.1」を謳う風潮がありました。「顧客満足度」に偏ると、結果的に従業員の給料を下げたりパートナー企業を安く買い叩いたりすることに繋がってしまう。また、「従業員満足度」に偏ると、「当社は残業しませんので」とパートナー企業に負荷をかけたり、お客さまにしわ寄せがいったりしてしまいます。 お客さまと従業員とパートナー企業と、3者の満足度を等しく向上させていくことが重要なのです。 また、「さんかく60」は従業員の評価軸にも取り入れていて、「顧客満足度」「パートナー満足度」「従業員満足度」、それぞれ1位の従業員の表彰もしています。 いろんな取り組みや評価について、若手でも納得できるような仕組み作りは意識して取り組んでいますね。

従業員が納得できる評価制度。具体的にはどのような工夫をされているのでしょうか?

給与が決まる評価制度において、「自分がどう評価されてこの給料なのか、よくわからない」というのは、よくある話です。弊社の場合、スコアが何ポイントであれば基本給がいくら相当なのかを従業員に明示しています。評価軸の大項目は「コンセプチュアルスキル」「技術スキル」「ビジネススキル」の3つで、さらに各スキルに設けられた中項目について、本人と上司が評価をつけ、スコアを算出する方法をとっています。 自分が何に強くて何に弱いのか、何をどれだけやれば評価が上がるのかが一目瞭然ですし、過去の自分のスコアも全部見られるので成長度合いがわかる。さらに、「このスコアを上げるには、この研修に参加するといい」「このスコアが高いのは○○さん」という情報も見えるようにして、「この研修を受けよう」「○○先輩をマネしよう」などとスキルを上げる手段まで可視化しています。 同じ会社に一生勤め続けることが稀になった現代。上司に教育してもらうというより、自分の市場価値を自分で上げていける環境が必要です。従業員のスキルアップを推奨する会社はたくさんありますが、そのための道具や環境は組織が提供するべき。従業員が居心地よく過ごしながら成長できる仕組み作りにこそ、私たち役員のリソースを使っていきたいと考えています。 ー組織の考えとして掲げている「ZOOポリシー」もユニークですが、どういうポリシーなのでしょうか? 従業員それぞれの特性に着目し、強みを伸ばしていくという考えに基づき、組織のあるべき姿を動物園にたとえたのがZOOポリシーです。 従来の昭和的な組織は、同じことができる兵隊を量産するという考え方です。同じ研修制度、同じ福利厚生、同じ賃金規定と、すべての従業員を一緒くたに扱おうとするのは、もう通用しないと思っています。 たとえば、いっぱい働いてお金がほしい方もいれば、家庭との両立のために休みが必要な方もいる。草食系の方もいれば、肉食系の方もいるでしょう。草食系の新人に肉食系の上司をつけると、その新人は精神的に追い詰められますし、その反対の場合、肉食系の新人は物足りなく感じてしまいます。 従業員それぞれの得意分野を最大限に活かすこと。そして、年齢や立場によっても変わってくる、従業員が「今」欲しているものを大切にすること。それがZOOポリシーの目指すところです。

ーINAP Visionが目指す「これから」を教えていただけますか?

1つ目は、「DXといえばINAP」と言われるポジションを目指して、来年あたりに看板を一気に変えようと考えています。 今の私たちのポジションは、どちらかといえばシステムインテグレータで、ハードもソフトも両方扱うという状態。先頭にお客さまと会話するコンサルがいて、後ろ側に開発とインフラがいるような構図になっています。今後は、この構図がおそらく変わるだろうと考えているんです。 これからのIT会社は「あれもこれもできます」というのではなく、たとえば「DXといえばINAP」と言われるポジションにならないと、お客さまを「おどろかせよう」の実現は難しくなってくると考えています。 ITからITCの時代になり、次はDXにより新しい価値を創出する0→1の世界になってきています。お客さまにサーバーを売ったりプログラミングやエンジニアを提供したり、「もの」を売る従来のITはやめよう、と。お客さまの課題解決・価値創出に繋がる「こと」を商売にしていくのが、今後の弊社が目指す姿です。 2つ目は、今年から取り組んでいることですが、新入社員の教育制度を大きく変えようとしています。 人間をパソコンに置き換えたときに、すべての基礎となるハードの部分を「マインド」と捉えます。その上のOSにあたる部分が「社会人基礎力」、最上部のソフトにあたる部分が、人間でいう「専門スキル」にあたるという考え方です。 まず健康なマインド(ハード)であることが大前提で、その次に必要なのが社会人基礎力(OS)。ここには、人の話をしっかり聞いて理解したり、自分の考えを言葉で伝えられたり、といったことも含まれます。これらのハードとOSが弱ければ、いくら優秀なソフトを積んでもパソコンは重くなる。つまり、健康なマインドと社会人基礎力をしっかり整えた上に、専門スキルを載せていこうという考え方なんです。 役員やマネージャー・従業員にも、「新入社員は技術力を身につけなくてもいいです」と全体会議で発表しました。新入社員には、「いっぱい遊んでいっぱい失敗して、いっぱい迷惑をかけなさい」と伝えていますね。 3つ目としては、社内のグローバル化を促進したいと考えています。 私自身、シリコンバレーで働いて、いろんな国のいろんな文化の人たちがいるからこそ、新しいアイデアが出てくる様子を目の当たりにしました。似たような学歴の似たような人たちだけが集まっても、いいアイデアは生まれないと思っているんです。教育手法やマネジメント手法などにおいても、今までの型にはまらないよう、あえていろんな国・文化の方を採用しています。 先月は、ネパール出身の方が入社されました。社内に食事をするスペースがあるのですが、そこでメンバーの出身国にちなんで、ネパール料理やフィリピン料理を作ってみんなで食べたり。異文化に触れる機会を設けて楽しんでいますね。 多様性ということで言うと、弊社には今、ディフェンス寄りのエンジニア・マネージャーがたくさんいます。ですので、今後はオフェンス寄りの、興味がないことはやらないけど好きなことはとことんやる、いい意味でオタク気質のある方々に入っていただきたいと思っています。

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