Airitech株式会社

システムのトラブルシュート業務に専門特化し、そのほか機能改善、システムコンサルティング、開発・支援といった事業を展開することによって成長を続けてきたAiritech株式会社。ITシステムに関して、システムダウンや機能障害といったトラブルの解決、また開発プロセスにあるシステムのパフォーマンス改善という業務に関して、前職の会社員時代から取り組んできた代表取締役・山﨑政憲氏は、そのビジネスとしての可能性を感じたことから2017年に同社を設立した。

「これまで当社は、システム運用に関するトラブルに直面したお客様からのニーズに応え、そのトラブルシュートを行うことにより大きな信頼を頂いてきました。そして、トラブルシュートの成功が“こういう時はどうすればいいか相談したい”“新たな開発を行いたいので手伝ってほしい”という新たなニーズに繋がり、ノウハウを蓄積すると同時にお客様との接点を増やしながら事業を拡大させてきたというのが、これまでの当社のあゆみということになります」（山﨑氏）。

システムトラブルに直面する顧客からの要望に対し、現場での迅速な対応と高い技術力によって応えながら、感謝と信頼、そして新たな課題解決に関するニーズを獲得してきたことが、同社のビジネス展開における成長要因だったということだ。それと同時に、このトラブルシュートという事業に専門特化してきたことは、自社の技術力向上と新規事業展開を支える要因にもなったと、山﨑氏は語っている。

「トラブルシュートに特化することで、業種業界を問わず様々なお客様との接点ができますし、何よりも多様な技術、多様なシステムに携わることができる。つまり、トラブルシュートという業務を皮切りにすることで、高い技術力を発揮する次の展開が可能になるということなんです。現在当社では、ビッグデータやAIを活用する新たなサービスによるビジネスにも着手していますし、事業の裾野を広げる取り組みにもトラブルシュートの実績が最大限に活用できている状況です」（山﨑氏）。

システムの開発においては、少なからずトラブルに直面することはあると山﨑氏は語る。しかし、一つのプロジェクトに半年から1年という期間で携わることになる一般のエンジニアに比べ、常にトラブルに対応し続ける同社のエンジニア達の経験値は必然的に高くなり、その環境が難易度の高い技術の習得に繋がっているというのが山﨑氏の見解だ。システムトラブルという課題解決のスペシャリスト集団である同社だからこそ、他社では叶わないノウハウの蓄積と技術力向上が可能になり、その特異性こそが同社の最大の強みになっているということだろう。

トラブルシュートの専門企業として、他社にはない技術力の深掘りを続けてきた同社では、今後の成長を目指した取り組みの一つとして「プロセスマイニング」技術を活用した業務効率改善に関する事業への注力を積極的に進めている。自社のノウハウを生かす領域は様々存在すると予想できる状況において、なぜプロセスマイニングというフィールドに着目したのか。その理由について、山﨑氏は次のように語っている。

「私達がトラブルシューティングに取り組む際には、あらゆる事象を徹底的に測定しながら数値化して改善を目指す、というコンセプトで業務を実施してきました。なぜなら、手当たり次第にプログラムやシステム設定を変更したり、ハードウェアに手を加えたりということを行っても、思うような改善効果は得られません。必要なのは、測定数値からボトルネックを明確化し、ピンポイントで改修の手を入れる、ということなんです。この業務スタイルは、企業活動における業務改善にも活用できると考え、新規事業としての注力を始めたということなんです」（山﨑氏）。

企業のビジネスにおいては、業務効率を向上させる際には各部門・各部署へのヒアリング結果をもとに施策を決定するケースが多いはずだが、その手法には「主観に左右される」というデメリットがあると、山﨑氏は指摘する。その手法では効果の有無が判断できないと考えていた山﨑氏は、プロセスマイニングという考えに着目し、関連する製品やツールを活用しながら事業を展開することを決めたのだという。

「ビジネスプロセスや業務を測定できるツールというものを探し続けてきましたが、その中で出会ったのがプロセスマイニングという考えでした。まさに私が求めていたツールであるプロセスマイニングという技術は、これまでシステムを相手にしてきた私達の“性能改善”に関する知見を、企業活動そのものをターゲットにすることができるんです」（山﨑氏）。

顧客企業が今後何をするべきか、という方向性を指し示すのが同社のプロセスマインングサービスの目的だと語る山﨑氏。その目的に沿った“品揃え”として、ビッグデータ分析やAIの活用というものにも積極的にチャレンジし、なおかつシステム開発やトラブルシューティングといった分野でのサービス充実化を図っているのが、現在の同社の姿なのである。

2022年8月の時点で8期目の終了を迎える同社には、現在約150名の社員が在籍。期内には社員数170名という規模に拡大することを目指していると語る山﨑氏は、今後の同社が目指す企業としての在り方について次のような考えを示している。

「設立当時、私は“5年で200名”という規模を目指していました。その目標の達成が見えてきた現在は、社員数500名という次の展開も視野に入れています。その状況の中で、社名の由来にもなっている当社の特徴である風通しの良さは維持していきたいというのが私の考え。規模が拡大しても、一人のエンジニアが何かに躓いた時には仲間達に気軽に相談し、会社全体で物事に立ち向かっていくという文化は大切にしたいですし、社員数が500人、1,000人になっても、部門の垣根を越えて協力し合う技術者集団という当社の価値は残していきたいと考えているんです」（山﨑氏）。

“風通しの良い組織”を表す社名も山﨑氏が独断で決定したものではなく、創立メンバーからの意見を募った上で承認されたという。その経緯にも、同社にある一体感やオープンな雰囲気が表れていると言えるだろう。そして、これまで大切にしてきた風通しの良さに加え、何よりも“顧客に満足度の高い成果を提供する”という共通認識も失うことなく、今後の事業に取り組んでいきたいというのが、山﨑氏の思いなのである。

「“こんなことまでできるのか”という驚きを提供し、満足していただくことこそ、当社で取り組む仕事の面白さだと思っています。お客様が数カ月にもわたって解決できずに悩んできたことを一瞬で解決できる、作業に5分かかっていた処理を3秒で終わらせるということを技術によって提供し、喜んでいただくことが私達の役割。お客様先に出向き、トラブルの改善や業務効率の改善に取り組む中で、現場の人間関係を解きほぐすような役割も担いながら、課題解決に取り組むという当社の仕事に、大きな醍醐味を感じていただけたら嬉しいですね」（山﨑氏）。