株式会社オリエンスト

株式会社オリエンストは、2016年7月、神戸市で創業されたWebシステムの開発会社だ。現在は三宮駅から徒歩10分程度のエリアに事務所を構え、Webデザイナーとシステムエンジニア5名で、外部パートナーと連携しながら業務を行っている。

創業者は代表取締役・豊福圭氏と、取締役・岩下尚之氏の2名だ。豊福氏はWebデザイナー、岩下氏はシステムエンジニアとして、同じWeb制作会社でほぼ同じ時期にキャリアをスタートさせ、同じ時期にフリーランスを経験し、オリエンスト社設立へと至っている。小規模ながら、デザイン制作とシステム開発をワンストップで、しかもスクラッチで開発できることを特徴としている。

創業からしばらくの間は制作会社の二次請けとして、関西の小規模事業者をエンドユーザーとしたWebサイト制作案件で実績を作ってきたが、最近は関東の中堅企業や有力老舗店舗等からの直請け案件のウェイトが大きくなり始めている。

直案件が増えたことで、エンドユーザーに提案できる幅も広がっている。二次請けの場合、間接的なコミュニケーションとなるため、提案できる内容は、一次請けの制作会社から下りてきた要件の範囲内に留まる。しかし直案件であれば、信頼関係を構築した上で自由に提案できる。そこで同社は、Webサイト制作を入り口に、集客や販売に貢献することで信頼を獲得し、裏側の業務効率に繋がるシステム開発へ繋げるビジネスモデルへと移行し始めているところだ。

「Webサイト制作で貢献できる範囲は、集客や販促等、あくまでも企業と顧客との接点に当たる領域のみです。それも大事ですが、そこだけで終わってしまうと発展性はありません。弊社が提供できるソリューションは、そこだけに留まりません。ただ一足飛びに社内のコアとなる領域まで踏み込むことはできません。まずは集客や販促といった部分で成果を上げることで信頼を得て、IT化やDXの領域へと広げ、お客様との関係性も深めながら、弊社自体の発展へと繋げていきたいと考えています」（豊福氏）。

この言葉を裏付ける実績もある。例えばあるDIY資材の輸入会社からはECシステムのリニューアルを受託。年間売上数十万円から1億円規模へと大幅に向上させている。もちろん要因はシステムを変えたことだけではない。クライアント側の取り組む姿勢が変わったことや、フォトグラファーやWebマーケッター、ライター等、外部のプロフェッショナルを巻き込んだことも、成功に繋がった大きな要因である。しかしクライアントやマーケッター、ライターから出てきたアイデア要望を実現できる技術がなければ成果には繋がっていない。

「意識していることは迅速かつ安価に提供することです。それが可能なのは、私自身がイチから作ったECシステムだからです。ECシステムをイチから作ることは簡単ではありませんが、パッケージをカスタマイズしたシステムとは違い、全てを把握できているので、急なオーダーに対しても、スピーディーかつ低コストで対応できます」（岩下氏）。

直案件が増え、提案できる領域が広がったことで、オリエンスト社の業務量は増加中だ。創業以来、豊福氏と岩下氏の二人でWeb制作とシステム構築を請け負っていたところへ、ここ数年間は、コーダー、デザイナーを増やし、制作体制の強化に努めてきたが、それでもオーダーを受けたまま止まっている案件が増え続けている状況である。

今後は直クライアントに対する訴求力を高めたい考えの同社。そこで求められることは、組織的な制作・開発体制の確立だ。これまでのように豊福氏と岩下氏を中心とした属人的な体制では、拡大するニーズに応えることはできない。そこでシステムエンジニアやデザイナーを増員した上で、豊福氏と岩下氏は営業やマネジメント側に回ることで、制作と開発が効率良く回り続ける仕組みを構築していく計画である。

直案件に注力する一方で進行しているのが自社サービスの開発、販売である。既にWordPressと連携して、より手軽かつ柔軟にEC環境が構築できる『Simply Cart』をリリースしているが、さらにWordPress関連の有料サービスを提供する計画を進行中だ。

「WordPressの仕組みを使えば大抵のシステムは作れます。ECシステムもプラグインが既に用意されていますが、できることは限られます。『Simply Cart』はそういった問題を解消するシステムです。現在計画が進行する新サービスも、同様のサービスは既に数多くありますが、既存サービスの不満点を吸収したサービスを展開したいと考えています」（岩下氏）。

さらに中長期的なビジョンもある。業界特化型のインフラ構築事業である。近年、デジタルトランスフォーメーションが加速しているとはいえ、未だに受発注の仕組みがFAXのままという業界も少なくはない。そういったアナログな商流をデジタルに置き換えるインフラを構築することで業界全体に影響力を持った上で、個々の企業にさらに自社サービスを提供するという枠組みを完成させたい考えだ。

「現在、直取引をしているクライアントには、それぞれが属する業界の中で影響力を持った企業が何社かあります。そういったクライアントのDXを成功させられれば業界からの注目が集まります。そうなれば我々の主導で、色々なことが自由にできるようになるはずです。現在は、そのための仕掛けをしているところです」（豊福氏）。

これらの計画を滞りなく進める上で課題となるのが、社内リソースの拡充である。特に岩下氏が担う開発業務を引き継ぐプログラマーの採用を強化中だ。

組織化が課題となっているのは業務進行の面だけではない。一般から公募して採用し始めたのはつい最近であるため、人が定着しやすい環境作りにも今まさに取り組んでいる最中だ。採用活動に取り組み始めて、即戦力採用の難しさを痛感している。IT企業としてエンジニアを育成していく必要性も感じているため実務経験1年ぐらいの技術者でも受け入れていく考えである。

現在のオリエンスト社の魅力は、小規模かつ未整備な環境そのものだ。創業メンバーであると同時にコアメンバーである豊福氏と岩下氏の二人と机を並べ、直接コミュニケーションを取りながら、各自のペースに合わせてスキルを身に付けていける。

「技術はネットで調べたり、本を読んだりしただけでは、身に付きません。実際にコードやプログラムを書いたり、修正したりしていると、一度勉強したことでも、初めて見るものに感じられることはよくあります。実際に現場に入ってもらって、分からなければ相談するというやり方が、成長の一番の近道です。そういう意味では、我々コアメンバーとの距離の近さはメリットの一つになると思われます」（岩下氏）。

また、同社はクライアントのビジネス課題を解決するために、豊福氏がフリーランス時代から築いてきた外部のネットワークを最大限に活用している。案件ごとに様々な専門スキルを持った外部パートナーと協業しているため、実務を通して幅広い視野を身に付けられれば、プログラマーやデザイナーにとっても大きな強みとなるだろう。

「一つの会社で定年まで働く時代ではなくなりました。会社を踏み台にして独立したいと思う人が出てくれば、外部パートナーとして協業できる関係を作っていけば良いと考えています。プロジェクトごとに最適なチームを組成して動かしていくスタイルがこれからの時代にはマッチしているのではないかとも考えています」（豊福氏）。

一方で目指すのは、オンオフの切り替えがしやすい職場作りだ。豊福氏や岩下氏自身、これまでフリーランスや制作会社の下請けをしていた時は納期に追われる日々を送ってきた。基本的なスキルを身に付けるためには、多少厳しい局面を乗り越える必要があることは事実だとしても、“IT土方”という言葉に象徴される従来の働き方は、現代社会にはそぐわない。忙しい時とそうではない時とのメリハリが付けやすい環境は維持したい考えだ。

小規模な組織であるため、メンバー一人ひとりの力が及ぼす影響力は大きい。会社運営にも主体的に関わっていけば、将来的に組織規模が拡大した際は、重要ポストを任せられる可能性も大きい。

「望めば何でもできる環境は作っていきたいと考えています。現在のオリエンストは小規模で、なおかつ何も整備されていない状態ですので、自己実現も図りやすいと思います。“給料がこれぐらい欲しい。自分も頑張るので何とかならないか”と言われれば、我々にもできることはあるでしょう。“こうなりたい”という情熱や野心を持った方のご応募をお待ちしています」（豊福氏）。