御社設立の経緯、事業開始の流れについて教えてください。
起業の検討をしていたころは、ちょうどAIやディープラーニングの技術にブレイクスルーが起きると言われていた時期で、特に海外では技術の活用が進み、続々とスタートアップが誕生していました。 アカデミア発の最先端の技術が社会に繋がっていくのを目の当たりにする中で、ディープラーニングの技術を社会に実装し、自分たちの手で社会を変えたいと使命感を持つようになった、というのが起業の背景です。 ACESのビジョンは「アルゴリズムで、社会はもっとシンプルになる」というものですが、人間が行う属人的・感覚的な業務をソフトウェアによって実行させることのポテンシャルの大きさに懸けたいの思いから所属していた松尾研のメンバー中心に6人での起業に至りました。 クライアント様と二人三脚でDXに取り組むDXパートナーサービスから事業をスタートし、現在はこれに加えて自社アルゴリズムを組み込んだソフトウェアを提供するAIソフトウェアサービスも提供しています。
AIアルゴリズムを活用する御社の事業にはどのような特徴がありますか?
私達は、AIの研究開発や受託開発だけにとどまらず、アルゴリズムを事業の価値につなげることを大切にしています。 多くの事業や業務は人の知見や熟練したスキルで成り立っており、属人化による制約が数多く存在します。人に閉じている知見やスキルは、構造化されづらいデータですが、ディープラーニングを用いることで構造化されデジタル上での再現が可能になります。 AIアルゴリズムと人の知見を掛け合わせて再構築し事業に組み込むことで、AIとヒトが協同し互いに進化していくような事業へと変革させる「AIトランスフォーメーション」の推進力が弊社の強みであり特徴です。 そしてこの「AIトランスフォーメーション」を実現するには、単に技術開発をすればいいというわけではなく、5年後10年後に価値を生むための未来の事業や業務のゴール像を適切に描く必要があります。 未来の事業を実現するために、バリューチェーンやビジネスチェーンを構造化し、AIが解くべきタスクまで分解し設計するデザイン力もACESの強みです。
今後の事業展開についてのお考えを聞かせてください。
自動運転においては、レベル5が「システムが運転のすべてを担い、人が関与しない運転状態」として定義されていますが、同様のことが様々な産業や業務で進んでいくと考えています。 属人的な知見で成立していた従来の業務をどうアルゴリズムに置き換え、自社はどのようなレベル5の世界を目指すのか。その問いに向き合いながら、AIとヒトが協同し互いに進化していくような事業を実現していきます。 たとえば、当社が展開しているプロダクトに営業支援AIツール「ACES Meet」があります。 これは商談参加者がどのタイミングでどれくらい話したか、参加者のリアクションや感情がどう変化したかをAIで解析することにより、優れた営業担当者の属人的なスキルやナレッジを誰もが共有できるようにするものです。 商談中にどこで失注につながったのか、どの言葉が受注に結び付いたのかといったこともわかります。 営業は属人化した知見で成り立っている業務の最たるものの一つだと思いますが、熟練者の知見をアルゴリズムに変換する、つまりAIトランスフォーメーションすることによって、営業のレベル5化という未来を描くことができるのです。 更に営業のみならず、人事、研修、問い合わせ対応など様々な現場での事業化も可能です。 AIの可能性を探索しつつ、インパクトの大きい事業にはしっかりリソース投下することで産業レベルでのAIトランスフォームを目指していきます。
その展開の中で、御社が人材に求めること、重視することはどんなことですか?
AIアルゴリズム開発や事業開発に関する業務を担う方々には、仮説・検証する力を重視しています。 ACESは「Issue driven, simple solution」というバリューがありますが、正しい問いを設定し、その問いをスピーディーに検証しながらAIの技術・価値を事業に届けていただきたいと考えています。 また、ソフトウェア開発に携わる方々には特に、「未来志向」の考えを持っていただきたいと思っています。というのも、弊社の事業は現状の延長を描くというよりも、テクノロジーが発達した未来においてあるべきビジョンを描き、そこからバックキャスティングして具体的なロードマップに落とし込む構想力が必要だからです。 現状に満足せず、幅広い展開での設計・実装を目指しながら、AI活用によって未来をつくるという面白味を感じていただけるはずです。
最後に、転職者に向けたメッセージをお願いします。
Deep Learningは今まで属人的に行っていた複雑な知見や業務を、大量のデータから学習してAIモデルとして再現することができます。 AIモデルを用いたソフトウェアによって、熟練者の知見や業務を構造化して自動化したり、柔軟性のないルールの決め方をせず、各個人の持つ多様な個性を認識し、個人に寄り添う接し方や柔軟でなめらかなルールを作っていくことができるはずです。 そうしたなめらかかつ構造的な社会を、私たちは「シンプルな社会」と呼んでいます。非効率・非合理・無駄な作業に忙殺されて、上手くできずに楽しくない働き方から、やりたいことができる & 上手にできて楽しい「余白」のある働き方へ変えることには、人生を賭ける意味があると考えています。 アルゴリズムの力でシンプルな社会を実装する、人の働き方に余白をつくることに共感し、わくわくを感じている方は、是非一緒に未来をつくっていきましょう!