ゼアーウィンスリーサービス株式会社

ゼアーウィンスリーサービス株式会社は、自動車の「タイヤ保証」を世に送り出したパイオニア企業。2016年3月のサービス開始から現在までに210万件を超える顧客に自動車のパンク保証を提供してきた。

自動車のタイヤがパンクして交換する際、自動車保険ではカバーされないため、ユーザーは自費でタイヤ交換を余儀なくされる。そのため、パンクによるタイヤ交換の多くのケースで、パンクしたタイヤだけを取り替えている。しかし、タイヤを1本だけ交換すると、タイヤのバランスが崩れ、急ブレーキを踏んだ時に停止するまでの距離が長くなる等の弊害があるという。

とはいえ、タイヤ4本を交換すると、数十万円が必要。そんな時に活用できるのが、同社の「タイヤ保証サービス」なのだ。

「当社のタイヤ保証サービスは、中古車や新車を購入した際に装着されているタイヤ、あるいはカー用品店で買ったタイヤ4本を対象に保証を付けることができます。万が一、タイヤ1本でもパンク・バーストした際に、保証加入者はタイヤ代自己負担0円で同クラスの新品タイヤ4本へ交換できる保証制度です」（執行役員 営業部 部長・吉田海渡氏）。

タイヤ保証サービスを運営しているが、同社は、保険会社ではない。タイヤ保証サービスを提供するために、損害保険会社とアライアンスを組んでいる。

「保険商品を開発・提供するには、免許が必要です。提携している損害保険会社のタイヤ保証サービスの開発と管理・運営を当社が担当するビジネスモデルとなっています。保険の販売も中古車販売店やカー用品販売店、新車ディーラー等が代理店として担当することで、タイヤ保証サービスを三つの側面で役割分担し、運営しています」（吉田氏）。

同社は、物流に関わるソリューションをトータルで提供する株式会社ゼアーの子会社として設立された。親会社ゼアーの代表取締役である前澤周平氏は、ZOZOTOWNの創始者として知られる前澤友作氏の実弟である。

「当社が設立されたのは、会長の前澤周平が自動車のパンクでタイヤを交換する際に保険が提供されないのを知り、サービス化できないかと考えたのが事の起こりです。当社を立ち上げて提供したタイヤ保証サービスが成功し、現在は単独でのIPOに向けて組織の整備を進めています」（吉田氏）。

前例のない「タイヤ保証サービス」は、瞬く間にユーザーの心を掴み、損害保険会社と販売代理店のネットワークを活用して全国に広まった。2019年には、同じスキームを活用したガラス保証サービスも始めた。

「ガラスの損傷は車両保険が適用されますが、等級が下がってしまうため、その後の支払い保険料が高くなってしまいます。そこで、当社のガラス保証サービスを活用すれば、飛び石等でガラス損傷が起こっても、車両保険を使わずにガラス交換が可能となります」（吉田氏）。

損害保険会社の代理店でもあるため、保険金の請求までトータルで担当しており、事故の受付窓口も同社のコンタクトセンターで請け負うため、販売代理店も運営コストを気にせず、タイヤ・ガラス保証サービスを自社の顧客に提供できる。

同社は、タイヤ保証サービスで培った経験を基に、保険業務のBPO事業や新しい保険のコーディネート事業も展開している。

2019年10月にスタートした「保険・保証付帯サービス」は、様々な企業の商品に保険を付帯することでサービスのバリューアップを図り、ビジネスを成功へと導く事業。子供の成長をサポートするグミサプリを製造・販売する会社の製品に、怪我や熱中症等による入院・手術の補償をカバーした保険を付帯している。

「保険・保証を付帯することで、クライアント企業のビジネスをバックアップする事業も展開しています。一般企業には、保険に関する知識や経験がないため、事業の企画からトータルでサポートします。保険業務のアウトソースも請け負っているため、自社商品に保険・保証を付帯してバリューアップを図りたい企業にアプローチしています」（吉田氏）。

さらなる新規事業の開発にも着手している。病院内における患者へのアメニティ環境構築のサポートを展開している株式会社パースジャパンと提携し、病院内アメニティの決済システムを開発している。

「病院に入院している患者さんは、冷蔵庫やテレビ、Wi-Fi環境を有料で使っています。これまでは、ナースステーション等でカードを購入してアメニティを使っていました。それを、QRコードで決済できるシステムを開発し、パースジャパンが病院に展開しています。今後も新規事業には積極的にチャレンジしていく計画です」（吉田氏）。

同社の事業に欠かせないのが、システム開発。タイヤ・ガラス保証サービスにおいても、顧客管理システム『ARMAJIRO（アルマジロ）』を自社開発して効率的な業務推進を実現している。

『ARMAJIRO』は、加入者登録、保証書発行、事故受付、保険金請求、集計業務等、保証サービスにおいて発生する業務を一元管理できるシステム。PCだけでなく、スマートフォンやタブレットでも利用できるクラウド型のシステムだ。

「当社の保証サービスを販売する代理店や、タイヤ交換をする工場で使うシステムを自社で開発しました。誰でも簡単に使えるシステムにするために、かなりの簡素化をしています。自動車業界はデジタル化が進んでおらず、簡素化したにもかかわらずシステムの使い方が分からないという事業者もおり、FAXを外部SaaSのOCRで処理するオプションも開発しました」（吉田氏）。

2016年7月にリリースされた『ARMAJIRO』。その後も大小のアップデートを繰り返して、使いやすいシステムに向けてブラッシュアップされている。そして、2024年春に向けて、大型のアップデートのプロジェクトがスタートした。

「当社保証サービスの全てをオンライン上で完結させる『ARMAJIRO3』のプロジェクトが走り始めました。『ARMAJIRO』のユーザーは3方向です。当社の社員、サービスを販売する事業者、そして保険会社です。この三つをシームレスに繋ぐことで、タイヤ交換業務がスムーズに進み、ユーザーにメリットがあるだけでなく、事業会社や保険会社、そして当社のコスト削減にも繋がります」（吉田氏）。

さらに、保険・保証付帯サービスで開発した顧客管理システムも、2023年5月にパッケージ化し『sigUma（シグマ）』というサービス名で提供を開始した。

「『sigUma』を開発したことで、保険・保証付帯サービスもカスタマイズが早く、そして楽になります。保険・保証付帯サービスを成長させるためにも、自社エンジニアを必要とするフェーズになり、システム部を急いで組織しています。現在は、エンジニア、プロジェクトマネージャー、デザイナーが5名在籍しています。近いうちに今の倍、10名規模のチームにしたいと考えています」（吉田氏）。