起業するまでの経歴を聞かせてください。
新しい物が好きな性分で、大学院ではライフサイエンスの研究をしていました。けれども、自分は研究者に向いたパーソナリティではないと思うところがあり、研究者の道へは進まずに就職することにしました。 親が弁理士の事務所を開業していたこともあって、昔から独立志向は強かったようで、在学中から頭の中には「起業」の二文字がありました。社会に広くインパクトを与えられることをしたいという思いも持ち合わせていたことから、東京大学アントレプレナー道場の1期生として学び、将来独立することを前提に就職先を考えた結果、外資系の投資銀行なら広くさまざまな経験が積めると思い、就職を決めました。 JPモルガン証券投資銀行本部では、M&Aのアドバイザーをしていましたが、企業買収が終わると自分の仕事も終了という仕事に満足できなくなり、関わった会社がその後どうなるのか見届けられる投資ファンドに転職。産業革新投資機構でVC投資などを経験しました。
起業した経緯を教えてください。
社会に大きなインパクトを与えられるような事業を起こし、会社を大きく成長させるのは一人ではできません。そこで、一緒にサービスを作り、会社を運営する仲間を探しました。何人かに声をかけ、私の話に興味を持ってくれたのが、開発責任者の白倉。大学で一緒に研究をしていた仲です。 会社設立は2015年2月ですが、事業が実際に動き出したのは白倉がジョインした2016年から。社会に大きな貢献ができる事業を念頭に、「儲かるか」「長く続くか」「興味があるか」などマトリックスを作ってビジネスの種を探しました。 当時FacebookやLINEがAPIを公開し、チャットボットを開発する会社が次々とできていました。電話、メール、チャットと通信手段は変化してきましたが、どの通信手段も必ず最後は自動化されます。マクロの観点で見ると、チャットの自動化であるチャットボットは今後広く社会に浸透すると考え「kuzen(旧称:Concierge U)」の開発がスタートしました。
会社を経営する上で大切にしていることはありますか?
一緒に働いている仲間が「コンシェルジュで働いてよかった」と思ってもらえるかを重視しています。白倉と会社を始めたときも、2人が必ず幸せになる仕組みにしないとダメだと考えていました。社員の数も増え、アルバイトや業務委託で関わってくれている人も含め「人生の一時期をコンシェルジュで働けてよかった」と思ってもらえるような会社にしたいですね。経営者としていつも仲間を思いやる視点を忘れず、経営的な判断を下す時は必ず自らの原点として意識しています。 事業を成功させて早期にリタイアし、余生を満喫するといった考えはありません。早期リタイアした人もみんな第一線に戻ってきているのを見ると、仕事を通じて社会にインパクトを与えるのは、何よりも楽しいからではないでしょうか。会社の成長に合わせて事業内容に変化はあるかもしれませんが、コンシェルジュという会社を、仲間と共に一生かけて大きくしていく所存です。
太田代表にとって「会社」とはどんな存在ですか?
会社は自己成長するための場だと捉えています。人間は弱い生き物。やらなければいけないこと、守るべきことがあっても、ゆらゆらと心は揺れ、そんな己との戦いを日々続けています。 人生を修行だと考えるなら、会社はそのための「道場」といえる存在かもしれません。社員が人間として成長するから、会社も成長します。反対に会社が成長するから、社員も成長できます。そんなサイクルが出来上がれば最高だと思います。社員のみんなにも、同じように会社を成長の場と考えてもらえるとうれしいですね。 「早く行くなら一人で、遠くに行くなら大勢で」という言葉もあるように、一人で到達できる地点はたかが知れています。いろんな人が一緒に働いてくれて、同じ目的地を目指して共に成長する。そんな当社の理念に共感できる人材と働きたいですね。 当社は「働きやすい会社」だと自負しています。グローバル展開を視野に動いているので、大きなチャレンジに携われるチャンスもあります。
休みの日は何をしていますか?
料理を作ったり、子どもをどこかに連れていったり、家事も手伝えば子どもの面倒も見ます。上の子が1歳のときには2カ月間育休を取って育児をしました。子どもの世話は大変でしたね。仕事の方が楽です。子どもにはロジックが通用しないから、振り回されっぱなしでしたね(笑) 今は2人とも小学校に上がり、随分と手がかからなくなりました。当社はフルフレックス制度を導入しており、子どもの学校行事に合わせて出社や退社の時間を調節しています。 休みの日でありませんが、ほかの起業家の話を聞く時間を設け、自ら広がりを求めるようにしています。メンターを紹介してくれるWebサービスがありまして、海外の起業家たちが登録していて、時間があるときは、その中から興味も持った人にコンタクトしてSkypeなどで話をしています。経営は未来を創る仕事。そのためには自分の殻を破っていかなければと思っています。