アベールソリューションズ株式会社

アベールソリューションズ株式会社は、上流工程とPMOに特化してユーザーサイドのITサポートサービスを提供する会社だ。クライアントのITプロジェクトに最適な人材・チームを配置し、ベンダーへの対応や社内調整をトータルでサポート。準備段階のベンダー設定やパッケージ選定から、要件定義、設計、構築、導入、運用までを一貫してサポートし、プロジェクトを成功に導く。

なぜ、このようなサービスが必要なのか。ITプロジェクトにおいて、ベンダー側はその領域のプロで、かつ専任の担当者が就くのに対し、ユーザー側は一システム部員が兼任するケースが多く、進捗の遅れや経験値の乏しさによる判断ミスなどの問題が生じがちだからだ。かといって数年あるいは十数年に一度のプロジェクトに対して、増員や専門社員の配置は難しい。そこでアベールソリューションズは、新たな選択肢として「社外にいるシステムのプロを必要なときだけ、社員として参加させること」を提唱。同社が「社外のプロ」としてプロジェクトをサポートすることで様々な問題を解決し、効率的で高品質にプロジェクトを完遂するのだ。

代表取締役社長の山田一成氏は、同社の立ち位置について次のように述べる。「IT業界のメインは、ベンダー配下で設計や構築などプロジェクトのボリュームゾーンを手がける会社。当社は全く違います。上流工程を専門に、ユーザー側のパートナーとしてサービスを提供することが、他社との大きな差別化ポイントです」。なお、グループには構築部分を専門に担うアベールクラウドテクノロジーがあり、ワンストップソリューションの上流部分をアベールソリューションズが、設計、構築部分をアベールクラウドテクノロジーが担うという役割分担になっている。

クライアントは大手企業が中心で、業種は通信、金融、電機、自動車、不動産など多岐にわたる。それらの会社の会計、販売、生産など基幹業務システムに携わる。パートナーとして一緒に取り組むなかで信頼を得て、1つのプロジェクトが終わればまた次のプロジェクトと、どんどん案件が広がっていくことも多い。「ひとたびクライアント企業の現場に行くと3年、5年と帰って来ないこともあります。クライアントが頼りにして離さないのです。他社がやっている部分も巻き取って、全部を当社に任せたいという相談を受けることもあります」（山田氏）。

確かな介在価値を発揮することで、このような連携強化の依頼が絶えず、近年は安定的に年25％程度の成長を続けている。決して爆発的な成長でないのは、無理をしないことがモットーだから。社員にもクライアントにも、無理が生じるような事業展開はしない。優秀な人材をそろえ、プロフェッショナルな仕事ぶりでクライアントの満足と信頼を得ることに徹している。

他方、クライアントからの連携強化の要請に対して、現体制では応えきれていない現状もある。優秀な仲間を得るべく、採用強化が喫緊の課題となっている。また、新規クライアントの開拓も進む。紹介や問い合わせは絶えないが、それとは別に、アベールソリューションズが介在価値を存分に発揮でき、中長期的なパートナーとなり得るクライアントを見極め、戦略的に開拓する考えだ。その戦略も今、着々と進んでいるところだ。

コロナ禍で、景況悪化と同時にDXなど世の中のアップデートも急激に進む昨今、アベールソリューションズが必要とされる場面も増えそうだ。専務取締役の朝松輝幸氏は次のような見通しを示す。「システム投資が限られるなかで、プロジェクトを厳選し、効率や品質を求める傾向は強まると思います。同時に新しい働き方への対応など新たなニーズも出てくるでしょう。となると、我々のようなプロフェッショナルの出番は多くなるかもしれません」。

では、具体的にアベールソリューションズは、どのようなことをやっているのか。事例を一つ紹介する。グループ会社も含め、約7000人規模の流通小売企業の給与システム更新プロジェクトを取りまとめた事例だ。長年、メインフレームで運用していたものを、コスト削減のためにWebのパッケージソフトに変更したケースだ。ユーザー側のシステム部門は保守・運用がメイン業務で、システムの導入経験はない。そこで、企画構想段階からアベールソリューションズが参画した。長年の運用により給与の規定は複雑で、手当の種類も極めて多かったため、従来業務をそのまま実現できるパッケージはなかった。複雑な機能と要望を整理する提案依頼書の作成から始まり、パッケージ選定、および手当の削減など給与業務自体の合理化にも踏み込んで、導入・運用までを支援した。

ユーザー側のサポートとはいえ、要望をすべて実現するのではない。第三者として俯瞰した視点を持ち、課題に対する最適な解決を実現するために対ユーザー、対ベンダーの双方とタフな協議を重ね、推進していく役割となる。このプロジェクトは成功裏に終わり、その後も満足度高く運用されているそうだ。

これは一例だが、このように高度な技術と専門知識、リーダーシップを持ち合わせたプロフェッショナル集団が、上流工程とPMOに特化したサービスを提供している。

そんなアベールソリューションズの社内は、風通しの良さが特長だ。「みんな、遠慮なく何でも言いますね」と山田氏は笑う。「プロジェクトでは顧客にしっかり提案、提言しますから、社内でも同じです。逆に社内ですら意見を言えないようでは困ります。年齢や立場は関係なく、仕事の上では平等と自由を尊重します」とも。

社員はクライアント先での常駐が基本となるため、普段はバラバラだ。それだけに顔を合わせる機会を大事ており、コロナ前は月に一度の帰社日を設け、みんなで楽しく過ごしていた。コミュニケーションと社員一人ひとりを大切にする社風で、プロジェクトのアサインも本人と充分に話し合い、目標や成長意欲を尊重し、特性を活かす方向で考える。「自分を活かせる仕事であれば業務へのフィット感が高く、お客様の満足度も上がり、本人の成長実感や充実感も大きい。Win-Win-Winを大事にします」（山田氏）。

社員は全員、中途採用で入社したメンバーだ。若手もベテランもいる。プロジェクトにはチームで参画するケースが多いため、ジュニアならチームの一員として業務の中でPMOを学び、経験を重ねながらステップアップしていく。自己申告MBO（目標管理）制度もあり、目先の目標から3年後、5年後の中期的な目標までなりたい自分の姿を描き、努力することを会社も後押しする。1つとして同じプロジェクトはなく、前向きな意欲があればどこまでも成長できるだろう。「この仕事に経験、知識はいくらでも必要です。50歳でプログラムを書くのは厳しいですが、PMOは経験が活きる。会社としても、自分をもっと表現できるステージを用意していきます」。山田氏は言う。

これから仲間になる人へ伝えたいことは、「上流工程やPMOの意味と価値を理解して参画してほしい」ということ。なかには管理やマネジメントを、「自分で手を動かさずに右から左へと指示を伝えるだけ」と考える人もいるそうだ。「全く違います」と山田氏。ユーザーに対してプロジェクトを可視化し、推進していく高度なスキル、交渉力、推進力などが必要だ。その分、やりがいも大きい。

「システムは、人が人のためにつくるもの。末端の仕事で指示通りに動くだけでは、それが見えません。上流では、誰が何のために使うものをつくっているのかが見え、ユーザーの反応もわかる。手応えを感じるはずです」。そんな世界にチャレンジしたい人を求めている。即戦力の経験者はもちろん、「これからチャレンジしたい」という人も歓迎だ。育てる環境もある。1年後には、きっとこれまでと違った役割を担い、新しい風景が見えていることだろう。