ニフティ株式会社

ISP（インターネットサービスプロバイダ）として、光回線ネットワークを中心にユーザーをインターネットに繋げるサービスを手掛けるニフティ株式会社。

同社にはもう一つ、事業の柱がある。接続サービスを利用するお客様の生活をより便利にし、インターネットをより安心・安全に使ってもらうよう付加価値を提供するWebサービス事業だ。

「他のISP事業者と比べると、コンテンツやオプションサービスといったWebサービスの比率が非常に高く、両輪で経営している点が当社の大きな特徴かもしれません」と話すのは、2023年6月に代表取締役に就任した前島一就氏。

1987年創業の同社だが、2017年に一つの大きな転換期を迎えている。資本が富士通株式会社から家電量販店ノジマを展開する株式会社ノジマに変わったのだ。

「そのタイミングで、ノジマの店舗との連携ができるようになり、店舗でお客様を直接獲得できるようになりました。リアルな店舗を持っているISPである点も、当社の特徴の一つではないでしょうか」（前島氏）。

それを機に、Webサービスの拡充も一気に加速したという。

例えば、ユーザーの安全に特化したサービス群への注力としては、インターネットの脅威からパソコンやスマホを守るセキュリティサービス『常時安全セキュリティ24』を開始。そのためのサポートセンターを自前で展開する等、他社にはできない動きでサービスを拡充している。

「当社は元々、業界に先駆けて新しいことをやっていこうという文化が根付いています」と前島氏が話すのも納得で、今では当たり前になっているサービスのいくつかは、同社がいち早くスタートさせているのだ。

例えば、最近はポイ活が人気だが、『ニフティポイントクラブ』等のポイントサービスは、30年以上前に同社が先駆けて始めたものだ。また、クレジットカードが広く普及する前から、オンライン上でクレジット決済ができる仕組みをいち早く取り入れている。

最近でも、主に女性向け衣料品のEC事業を行う株式会社セシールを買収。「新しい市場に飛び出すことで多くの刺激をもらった」と話し、今後も新たな付加価値の提供を進めていく考えだ。

「今では信じられないと思いますが、我々が事業を始めた頃、多くのアナリストや専門家の方々から『日本でネットワークサービスは流行らない』と言われたのです。ただ、通信の自由化がスタートするタイミングでもあり、『これまでとは違う産業を生み出そう』とチャレンジしました。その結果はいうまでもありません」

ISPとして今に繋がる土台を築いた会社、そう言っても過言ではないだろう。同社は創業から36年間で一度も赤字になっておらず、まだまだ進化中だ。

代表に就任したばかりの前島氏は、エンジニア畑一筋の技術者だ。「創業当時を知る唯一の社員になりました」と笑うが、「引き受けた限りは尽くしたい」と力を込める。

「創業からを振り返ると、87年にサービスを開始し、いわゆる電子掲示板やチャット等でお客様同士が会話できる仕組みを作ったことが、日本でのオンラインサービスの礎・源流となったのかもしれません。その市場を作った自負が、我々には間違いなくあるのです」（前島氏）。

同時に、長きにわたってネットワーク上の様々な課題にもきめ細かく対処してきたことから、「インターネットを安心して楽しく使っていくための市場を36年間ずっと育ててきた」という思いもある。

「社風として『なかったものを作ってきた』という自負があるからこそ、今後もあらゆる課題や問題に直面したとしても、我々の手で解決していきたいという強い気持ちがあります」（前島氏）。

前島氏は今、二つのことに注目している。
「1980年代からずっと見てきて感じているのは、技術革新は必ずやってくるということ。今のタイミングだと『AI』と『メタバース』です」

実は同社では、30年以上前に既にAIを使った対話サービスを立ち上げている。当時は技術が追い付かず、壁にぶち当たってしまったが、今の技術力を持ってお客様とのコミュニケーションサービスに活用していこうと試行錯誤しているところだという。既に『@niftyニュース』等のサービスの中にはAIが組み込まれているそうだ。

「メタバースについては、体験というところとの親和性が高く、今後は避けて通れない世界でしょう。ISP業界としては、新しいインターフェイス市場をより安全に、安くお得に使ってもらえるよう考え、それをサポートしていきたいです」（前島氏）。

こうした大きな時代の変わり目に、エンジニア出身の前島氏が社長に就任するということは、同社の今後において大きなポイントかもしれない。

「インターネットサービスは、エンジニアドリブンでスタートした世界です。エンジニアが何かしらの技術的な障壁を打ち破ってきたからこそ今があるし、世界中が簡単に繋がるということを実現したのはエンジニアのパワーだったと考えています。今後、技術力を持たない、エンジニアを自前で抱えない会社はつらい時代になるのは間違いありません。そんな中で我々は、エンジニアが主役とまでは言わないものの、技術者がビジネスの中心で活躍できる会社でありたいと思っています。技術畑で育った経営者として、その気持ちを持って前面に立ち、当社を率いていく覚悟です」（前島氏）。

記事の内容を入力前島氏は、「エンジニアとして当社で働く最大の魅力がある」と話す。

「社内に全てのフルスタックの環境があることです。いわゆる企画、営業、開発、運用、サポート…それら全てのポストを自社で持っているのは間違いなく強みでしょう。システムの部分だけを見ても、フロントエンド、バックエンド、インフラの全てを持っていますし、当然ながらSREもやっています。IT企業が必要とする技術体制・技術要素はほぼ持っているわけですから、『もっとこういうことを学び、体験したい』と望んだら、その環境を用意できる。それは自信を持って言えますね」

システム面では、「統一したアーキテクチャがない」という点を特徴に挙げる。

エンジニアに限らず、企画や営業も含め、「適材適所のものを使おう」というマインドが強いのだという。何かに合わせるのではなく、その時に最適なものを選び、使う文化だ。

「いろんなサービスが別々のアーキテクチャで動いているのは、いい点もありますが、悪い点もある。だからこそ、そうしたレガシーを新しいものに替えていくことを若いエンジニアを中心にお願いしているところです。過去の開発資産・成功事例を今のクラウドサービスの上に乗っけたらどうなるだろう、といったことを皆で試行錯誤しています」

そうしたものづくりに関わることができるのが特徴であり、同社で働く醍醐味・面白味でもあると言えそうだ。

「第一に考えるのは、社員が成長できる環境を用意することです。社員の成長なくして会社の成長はありません。社員の学びに繋がる施策は今後も会社として熱を入れてやっていくつもりです」

求める人物像については、次のように話す。

「自分の関わるサービスは何百万人というお客様が触れるものだ、というモチベーションを持てる人。そして、自分が技術を高めて高品質なものを提供するんだという使命感を持てる人ですね。フルスタックの環境があるからこそ、様々な技術の中で自分が生かせる場所がどこなのかを客観的に見られる人であってほしいです」（前島氏）。

同社はスクラム開発を取り入れている。チームでやるからこそ、チームコンピューティングができるエンジニアが重要だ。「一人の力だけでサービスはできません。必ず協力が必要だからこそ、コミュニケーションがしっかり取れるエンジニアであってほしい」と付け加える。

「今、ネット業界は未曾有の転換期です。だからこそ、新しいことをやりたいです。『インターネットの次は何だろう？』それを一緒に考えていきたいし、そこを面白がれる人と高品質で安全なネットワークサービスを作っていきたい。我々はスクラムなので、皆で協力し、底上げし、一緒に上がっていきます。自分に自信がなくても大丈夫ですよ」（前島氏）。