アクロビット株式会社

SAPコンサルティング会社のアクロビット株式会社。SAP ERP導入に関わるコンサルティングからカスタマイズ開発、保守・運用までを手掛けている。

2018年2月設立・社員数68名（2024年4月現在）のアクロビットは、同業の中では後発で小規模の存在。にもかかわらず、独SAP本社から正式にシルバーパートナーの認定を受けている。これによって、自社でSAPのプログラムに触れられるテスト環境を構築することができ、エンジニアを育成しやすい環境となっている。さらに、アクロビットには元SAP日本法人で活躍していたベテランのコンサルタントが専任教育担当者として在籍しており、人材育成に力を入れている。

「SAPは世界No.1シェアを有するERPとして名高いですが、エンタープライズ向けということもあり、システム開発業界では認知度が高いとは言えません。それだけにSAPを手掛けられるコンサルタントやエンジニアも市場全体から見ても少数で、経験者採用が非常に難しい状況にあります。その点、当社は新卒者や未経験エンジニアを一から育成して戦力化できる強みを持っています。今は規模的に大手のコンサルファームやSIerには及びませんが、3年先、5年先を見据えてエンジニア育成に取り組み、SAPエンジニアメーカーとして、一つのブランドとなる会社にしたいです」と代表取締役社長の前林烈氏は力を込める。

現在のアクロビットの業務は、顧客である大手コンサルティングファームがエンドユーザーの大規模SAP導入プロジェクトにSESとして参画する形が多い。一方、受託の形で任される案件もあり、自社内での若手エンジニアの実践的な育成に活用している。ここで1年ほど経験し一人前となったエンジニアをSES要員として現場にアサインする形だ。

「このようにして案件に対応しながら力を蓄え、ゆくゆくはプライムの立場で最上流のコンサルティングから要件定義、開発・実装、導入後の保守・運用まで一貫して手掛けられるようにしていきたいと考えています」（前林氏）

アクロビットの設立の経緯について、前林氏は次のように話す。

「私は金融系のSEなどを経て、150名ほどの同業のSIerで人事部門の責任者をしていました。上場の大企業や100名前後の中小企業など様々な会社での経験を踏まえ、「本業に忠実な会社」もとい社内政治や派閥にとらわれない会社を創りたいと、志を同じくする7名のSAPコンサルタントやエンジニアと独立することにしたのです。SAPを担ぐことに決めたのは、この世に会社がある限りERPは無くならず、中でもSAPは世界トップシェアのERPとして特に価値が高いことを知っていたからです」

実力者ばかりで設立したことにより、創業初年度からいきなり年商2億円となるなど順調なスタートを切る。その後、人材採用に力を入れ、設立5年目で60名体制まで拡大してきた。社内のSAP認定資格保有数は42件（2023年4月時点）を数える。

そんなアクロビットの企業理念や経営ビジョンは次のとおり。

・経営理念：当社に関わる全ての『人』に喜びと感動と満足をもたらし『未来』を共に考え共に創る
・経営ビジョン：最善のサービスプロフィットチェーンから付加価値の高いITサービスを提供する

“サービスプロフィットチェーン”とは、1994年にハーバード・ビジネススクールの教授らが提唱した概念。働きがいや働きやすさ、キャリア構築の実感などによる従業員満足（ES）で従業員の定着率やスキルが向上し、それによって質の高いサービスがもたらされて顧客満足（CS）が向上し、競争優位性や顧客ロイヤリティが高まり、結果的に当該企業の利益を向上させ、そのことがまたES向上に繋がるという好循環を指す。

「サービスプロフィットチェーンの起点となるES向上のために、私は社員の“選択肢を増やす”ことを最重要の方針に掲げ、実践しています。そのことにより、社員が豊かになることができるからです」と前林氏は話す。

前林氏は、人事責任者の時にリーマン・ショックで退職勧奨をしなければならなくなった。その際に、人員整理の対象となった“自分の意思に関係なく勤続できない人”と、“勤続も独立や転職も自分で選択できる人”の違いをまざまざと認識する。その違いは、“どこでも通用するスキルやキャリア”があること。そこで、そのようなスキルやキャリアを身に付けられる企業にすることが、アクロビット設立のコンセプトとなった。

「人にはそれぞれ働き方や仕事内容に希望があるもの。それを満たせる会社にすることで、多くの人に来てもらえる会社にしたいと考えています。そして、ESを高めどこでも通用するスキルを身に着け、選択肢の豊富な人生を過ごしてほしいと思っています」（前林氏）

アクロビットでは、ES向上のために様々な制度や組織風土づくりを行っている。

まず、人材育成。新卒入社者は集合研修で基礎固めから行うが、キャリア採用者に対しては本人のスキルや経験に応じて個別対応を行うことが基本方針だ。また、SAP未経験のエンジニアは、SAPエンジニアへのコンバートを前提とする専属部署に配属し、前述の専任教育担当者から3か月間の指導を受ける。この人材育成にかける思い切った投資がアクロビットの大きな特長と言えるだろう。

そして、当社の専任教育担当者は、SAPコンサルタントであれば相当な金額を稼げる人材です。それを教育専任にするという、事実上の投資を行っています。そして、研修期間の数か月間、エンジニアによる売上はゼロです。これも投資と言えますが、それだけ人材育成に力を入れているという覚悟があります」と前林氏は強調する。

SAPエンジニアやコンサルタントとしての働き方として、「スペシャリストライン」と「ゼネラリストライン」のいずれかを“選択”できる。前者は、フリーランス的に自由に働くことができ、上司も部下も不在で、報酬も高く設定される。後者は、マネジメント層を目指してキャリアを積んでいくイメージである。

そのほか、福利厚生など様々な制度も充実させている。まず、有給休暇や子の看護休暇、介護休暇は1時間単位で取得可能。柔軟にプライベート対応できる。また、希望者はワーケーションも参加可能。参加希望者の意見で、これまで軽井沢や草津、伊東、河口湖などで2泊3日といった期間で実施された。他部署メンバーとコミュニケーションが深められる機会にもなっている。

ユニークなのは、永年勤続表彰が満3年からあること（3万円＋特別休暇1日）。「長く在籍してもらいたいとの願いを込めている」と前林氏。そのほか、「ライフサポート手当」（旧名称：リモート手当）として一律月1万円が支給されているなど、数々の制度が整備されている。

そんなアクロビットの求める人材像について、前林氏は次のように話す。
「何か欲しいものがある、野心的な人。無欲の人では、どんなに豊富な選択肢があっても選べません。選択肢を多面的に用意して、これからも増やし続ける豊富な当社で欲しいものを見つけたいという方は歓迎です」

アクロビットならば、付加価値の高いSAPエンジニア/コンサルタントとして充実した人生を送ることができるだろう。