シェアNo.1のクラウド録画サービスを展開する
セーフィーの「映像プラットフォーム」構想とは
セーフィー株式会社は、クラウド録画サービスを提供するベンチャー企業。同社で開発したファームウェアを搭載したカメラをインターネットにつなぐだけで、スマホ・パソコンからいつでもどこでも現地の映像を確認できる。
同社が提供しているクラウドカメラを使ったサービスは、HD×最大30fpsのきれいでなめらかな高画質映像を、高いセキュリティで実現。必要な費用はカメラの本体料金とクラウド録画の利用料金だけ。低価格で防犯・監視カメラを導入できる。複数のカメラを一括管理できて、1台につき15人まで映像共有が可能。録画機不要だからレコーダーの買い替えや破損の心配もない。
大手企業とのアライアンスで着実に成長し、2021年9月にIPOで100億円の資金調達を済ませたばかりのセーフィーが描く「映像プラットフォーム」構想。果たして同社が目指す「映像から未来をつくる」とは、どのような姿なのか。同社の代表取締役社長CEO佐渡島氏を中心に、セーフィーの過去・現在・未来を存分に語ってもらった。
目次
1. クラウドカメラの開発で実現、映像データを活用した”現場DX”
2. キヤノン、NTT、etc.!大手企業とのアライアンスで成長軌道に
3. 5Gの普及で実現する「映像プラットフォーム」の未来図
こういった取材をしてもらうときってまずは自社の説明から始まると思うんだけど、みんなどんな説明をしているの?(笑)
確かにセーフィーは、クラウドカメラのファームウェアを開発するIT企業だけどカメラを販売しているメーカーだと思われている節があり、説明が難しい会社ですよね。
自社で防犯カメラも開発しているし、インターネットでも販売しているから、「防犯カメラ屋さん」と思われることもあるよね。営業の現場ではどうですか?
安くて高性能な防犯カメラに興味を持ってコンタクトしてくれるお客様が大半ですが、「防犯カメラ屋」ではないと伝えるようにしてます。私たちは「プラットフォーマーだ」と。
「私たちはプラットフォーマーだ」といったとき、お客様は戸惑うよね。防犯カメラの会社がプラットフォーマーになるってどういうこと?と言いたげな表情になりますよね。
確かにそれはあります。ただ、そのリアクションは気にしないことにしています。理解やイメージを持てなくても、すごいことをしている会社だと認識してもらえばいいかな、と。映像で世の中の課題解決をする会社です、というアピールを商談のあちこちに盛り込んでいます。
映像を使って課題を解決しているというフレーズはいいね。まさにセーフィーが目指している地点だね。
導入のきっかけは防犯や監視が多いですが、防犯カメラを導入したついでに、新しいソリューションを手に入れられるという認識をしてもらえればいいかなと思っています。従来の防犯カメラにはない機能で、自社のビジネスを新しい世界へ誘う、そんな拡張性をポイントにしています。
なるほどね。セーフィーの事業は、カメラをインターフェースにしたソリューションの提供だから、その伝え方は分かりやすいかも。
カメラをインターフェースに映像データを収集し、裏側でそれを解析してそれぞれのビジネスに活かす。これがセーフィーの事業を始めたときに描いていたビジネスモデル。でも当時はセーフィーが目指している理想状態が遠くて、なかなか本来の意味が伝わらないし、そもそもニーズの強い防犯カメラでさえも手軽に使ってもらえるようにすること自体が大変だった。
映像データを集めるには、まずはクラウドカメラを設置してもらう必要がある。だから、最初は手軽に設置できる方法を模索しましたね。
1200万画素のカメラが世の中に出回っていたのに、当時の防犯カメラは30万画素クラスの低クオリティなものが高額で販売されていて、世の中から取り残されているようでした。
だから設立当初は、映像プラットフォームの構想は描いていましたが、まずは防犯カメラの代替からスタートしましたよね。
セーフィーは、ソフトウェア会社。カメラのハードウェアは他社に作ってもらい、その中で動くファームウェアを開発しました。最初は苦戦しましたね。3年半は、ほとんど売れなかった。
私はサービスがローンチして半年後にジョインしましたが、最初は大変でしたね。簡単に設置できるようにWi-Fiを活用したんですが、Wi-Fiにつながらないトラブルが多発。お客様のところへ出向いてルーターを交換するなど、トラブル対応に走り回っていました。
大量の映像データをクラウドにアップするというのが、当時としてはかなりの無理難題。通信回線のデータ容量制限に引っかかりかねない話ですからね。
通信業者と話をして何とか実現したんですよね?
通信回線というのは、下りはいつも混んでいるけど、上りは空いていることが多い。そこに着目して、空いている上りの通信回線を使わせてくれと頼んだらOKが出て、クラウドカメラのプロジェクトはスタートしました。
そもそも、なぜクラウドカメラの事業に着目したんですか?
防犯カメラの世界がITテクノロジーから取り残されているのがビジネスチャンスに映ったのと、ソニーグループにいた2000年代 から「データ」の重要性に注目していたのが理由ですね。ディープラーニングの登場によって、複雑なアルゴリズムでなくても "よりクオリティの高い教師データ" があれば精度の高いAIを作れるようになりました。そこで、これからは豊富なデータこそがビジネスの鍵を握ると考えたんです。
ファームウェアを搭載したカメラをインターネットにつなぐだけで、スマホ・パソコンからいつでもどこでも現地の映像を確認できるクラウドカメラ
担当ライターから
ITテクノロジーが急速に社会を変える中、防犯カメラ業界は世の中の流れに取り残されたかのように進歩が止まっていた。そこをビジネスチャンスととらえたのが、セーフィーの慧眼なところだ。しかも、単に性能が良くて安いカメラを開発して販売するのではなく、クラウドカメラを開発して安価で提供することで、データを手元に集められると考えたのが、その後のビジネスの発展につながった。
最初はトラブル続きでCEOをはじめメンバーはみんな大変な思いをしたようだが、クラウドカメラがそれだけ先進的な取り組みだった証だといえよう。創業メンバー3名のうち、CEO以外の2人はどちらもエンジニア。テクノロジードリブンで動く会社ではないが、高いテクノロジーが武器になっているのは間違いない。
大手企業とのアライアンスで成長軌道に
話には聞いていましたが、前途多難な船出だったんですね。そこから、どんな経緯で今のポジションを築いてきたんですか?
本当にいつ会社が倒産するか分からなかったよ(笑)最初のターニングポイントは、アクシスコミュニケーションズ( Axis Communications、以下アクシス)とのアライアンスですね。アクシスは、スウェーデンに本社をおく防犯カメラ・IPカメラ・ネットワークカメラの老舗ブランド。現在はキヤノンのグループ会社で、当社の創業者の一人である下崎が、当社の開発したファームウェアをアクシスのカメラにインストールすれば、セーフィーのユーザーを増やせると考えました。
アクシスとアライアンスを組むことで、提供できる防犯カメラの種類が一気に増えて、なおかつ業界のリーディングカンパニーとの提携は、セーフィーの知名度を上げてくれました。
アクシスとの提携には、社内で賛否両論がありました。置くだけ簡単、賢くなるカメラを謳ってビジネスを始めたのに、アクシス製のカメラはどれも設置するのに工事を必要とします。当社のビジネスとは相反するのではないかという声がありました。100種類以上の防犯カメラに当社のファームウェアを載せることになり、仮にそのすべてにおいて不具合が出た場合、当社のエンジニアだけでは対応できないとの懸念もありました。
結局、お客様のニーズに沿って提供する種類を限定することで、社内のコンセンサスが形成できましたね。アクシスはキヤノン傘下になっていましたので、このアライアンスによってキヤノンが当社の技術に注目してくれたことは、予想を超えた大きな効果だったと思っています。
2017年にキヤノンマーケティングジャパン株式会社やオリックス株式会社などから総額9.7億円の資金調達を実施しました。当時はまだ20名前後の会社でしたから、今にして思えば幸運といえるような話ですよね。資金を調達できたことで営業人員を揃えることができ、ニーズをみんなで発掘していけるようになりました。
製品の不具合に対応する後手から、積極的にクラウドカメラを普及させる先手に回れたようですね。
当時、キヤノンマーケティングジャパンさんも似たようなサービスを販売していたんだけど、メインで提案するサービスはセーフィー中心になっていきました。
そこからOEMで他社のサービスに当社のファームウェアを使うようになる流れですね。
当社のファームウェアが入ったカメラの市場シェアは約5割。自社の営業だけでは絶対に達成できない数字だと思っています。
業界で先行する人たちの力を借りたのは、大きなポイントですね。
映像プラットフォームを作るには、クラウドカメラ普及は前提条件。当社がビジネスの中心点に見据えているのは、クラウドカメラの普及後に見据えた映像プラットフォームを使ったソリューションであるというスタンスがあったことも、苦しい時代を乗り越えられた理由ですね。
そうですね。大企業と手を取り合ってプラットフォームを共同で作るという話ではなくて、OEMで提供するという結果が、アライアンスの拡大になったのもポイントです。その根底にあるのは、当社の技術力。防犯カメラ屋ではなくIT企業ですから、ソフトウェアで真っ向勝負すれば勝てます。大手企業のクラウド録画サービスを、セーフィーのファームウェアに切り替えてもらい、映像プラットフォーム作りは加速しました。
セコムやNTTといった大手ともアライアンスが進み、セーフィーのファームウェアを搭載したクラウドカメラは一気に台数を増やしました。
ここまでの話の流れを聞いていると順調にビジネスがスケールしていったように思われるかもしれないけど、毎日が戦いの連続。ゲリラ戦のように大手とのアライアンスを順番に獲得していきました。
お客様相手でも同じような状況ですね。大手企業の場合、最初の一台を導入してもらうのが大変。一度使ってもらえば、セーフィーのクラウドカメラを導入するメリットを理解してもらえる自信はあるんですけどね。
企業にとってはセキュリティの問題もあって、クラウドカメラへの抵抗感はあるかもしれませんね。セーフィーのクラウドカメラは、セキュリティには万全の対策をしているんですけどね。
創業メンバーでCTOの森本さんは、セキュリティに関しては、とても強いこだわりを持っています。
森本さんは、ホワイトハッカーみたいな人だよね。ハッキングされないシステムを作ることを使命にしているのではないかとさえ思うことがあります。
今は映像プラットフォーム作りを進めながら、クラウドカメラを使った業界ごとのDX推進ソリューションを提供している段階ですね。
例えば、顔認証技術を利用してお客様の接遇改善やマーケティング、業務改善を実現する顔認証オプションサービス「Safie Visitors(セーフィー ビジターズ)」。来訪人数のカウントだけでなく、画像認識と顧客データを照合して、VIP客の来訪を知らせてくれます。過去の購買データを参照すれば、より顧客満足の高い接客が実現できます。
カメラで撮影した映像を、YouTubeにてLIVE配信するオプション「YouTube LIVE連携」など、さまざまなソリューションがありますが、今後はもっと多くのソリューションを提供できるようになれば、クラウドカメラの普及も進むと思います。そのために、お客様の声をダイレクトに聞けるセールスが、お客様のニーズをエンジニアに届けていきたいです。
担当ライターから
ネットワークカメラのリーディングカンパニーの製品にセーフィーのファームウェアを搭載したのを皮切りに、大手企業とのアライアンスが進みセーフィーのクラウドカメラは普及していった。その背景にあるのも、やはりセーフィーの高い技術力と言えよう。キヤノンやセコムといった大手企業が自社開発を止めてセーフィーのファームウェアに切り替えたのも、技術力の高さを認めたからだ。
さらに、大手企業がセーフィーとアライアンスを進めるのは、防犯カメラの販売をミッションだとは考えておらず、先行する企業との間に協業関係が成り立つからだ。ブランディングも確立しすでに販売網を持つ大手との協業で、クラウドカメラの普及という映像プラットフォームへの布石を打つことができた。
今までは "インターネットを活用する" 世界だったのが、今後は "インターネットの中に住む" ような世界が到来すると考えています。私たちがVDaaS(Video &Data as a Service)と呼んでいるビジネスのことですが、例えば、自動運転が現実のものとなったとき、リアルタイムでクルマの置かれている状況をVDaaSのデータをAIが判断して自動運転をサポートすれば安全性は高まります。
そのような未来を実現するためには、まずは従来型の防犯カメラをクラウド化すること、そして収集したデータを解析してSaaSとして提供すること、さらにはアプリケーションを開発できる環境を提供してプラットフォーム化する(PaaS)こと、というステップが必要ですね。映像データの可能性はどんどん広がっていきます。
例えば、全国のスマートカメラがつながることで、買い物先の駐車場がどれぐらい混んでいるか、あるいは現地の今の天気はどうかなど、リアルタイムに映像を見て判断できるようになります。
5Gが普及するとレイテンシー(遅延)がなくなり、リアルタイムな映像にアクセスすることが可能となります。
レイテンシーなくリアルタイムな映像にアクセスできれば、人の判断は変わるだろうね。セーフィーはそんな世界を実現しようとしています。
セーフィーの映像プラットフォームが定着すれば、世の中は大きく変わると感じています。
そうですね。世の中のあらゆる場所でDXが加速するでしょう。例えば、鹿島建設が打ち出している建設現場のDXでは、あらゆる作業をデジタル化し、半分をロボットができるように、残りの半分も遠隔操作でできるようにしようという取り組みを進めており、当社もプロジェクトに参加しています。
ロボット作業や遠隔操作が増えると、それらと現場作業員との間で発生しうる事故を未然に防ぐ取り組みについても当然検討しなくてはいけません。
クレーンの作業員は、スキルが高くて人材不足。クラウドカメラを活用してクレーンを遠隔操縦できるようになれば、一人の作業員が日に数件の現場を回ることができます。もちろん全国どこに住んでいても仕事ができます。
建設現場で働く人と遠隔地で現場作業に従事する人とロボットが、建設現場で共生することになります。そうなるとちゃんと「見える」というのが重要。そのためには、簡単に設置できるクラウドカメラが最適です。
クラウドカメラで集めた映像データを使って人が判断したり、AIが画像認識で判断したりする世界が広まりそうです。
データプラットフォームに価値があるのは、2011年~2012年ごろから気付いていました。AIが今後のトレンドになるのを考えると、AIが判断する元データも必要になるということ。どんな業界でもデータプラットフォームが重要視されると思っていました。データプラットフォームを作るためは膨大なデータが必要です。誰でもすぐにはじめられる事業ではない。だから、先行者利益を享受できます。
すでに私たちが意図しないような使い方を、お客様が生み出しています。大手ファストファッションチェーンでは、防犯のために導入したのが、営業で店に行くたびに新しい使い方を披露してくれる。それを見ていて、映像の可能性を改めて思い知らされます。映像の可能性の広がりは、想像を遥かに超えるスケールや勢いがあります。業界を選ばないのも、セーフィーの事業の強みとおもしろさ。どこの業界でも映像を活用する可能性はまだまだあり、それはそのままセーフィーの可能性だと思っています。
ビジネスパーソンとして、提案の幅が広いサービスを扱うのは、ワクワクしますよね。私は今で入社1年半なのですが、選考フローの中で丁寧に説明してもらって初めて、セーフィーの目指す映像プラットフォームの姿や、その実現に向けた取り組みについて知りました。今は面接をする立場になりましたが、私も候補者の方に事業の可能性を理解してもらえるように努めています。
2021年9月にIPOをして、100億円の資金を調達しました 。この資金を投資する先は、何よりも人材。セーフィーという会社を使い倒して、社会におもしろいことを仕掛けたいと思うような気骨のある人たちと働きたいですね。
街中をデータ化して「映像から未来をつくる」という世界が、もう手の届くところまで来ています。最後の一歩を踏み出すのに必要なのは、それぞれの部署で活躍してくれる優秀な人材。今まではベンチャーマインドでチャレンジを続けてきましたが、これからはもっと大きなプロジェクトに挑戦していきます。新しい世界を作りたい人材と、ぜひ一緒に映像から未来をつくる仕事をしていきたいと願っています。
あらゆる業界でセーフィーのクラウドカメラが使われることによって映像プラットフォームが構築される
担当ライターから
「映像から未来をつくる」という旗印のもと、映像プラットフォームを作り上げようとしているセーフィー。IPOを経て、本格的な成長軌道を描こうとしている。同社のメンバーの話を聞いていると、みんな映像プラットフォームで未来を築くイメージを共有している。メンバー間での理念共有ができている会社なら、不要なストレスを感じる機会も少なく、楽しんで働けるだろう。
そして、CEOの佐渡島氏が社員と気さくに接している姿が印象的だった。和やかな雰囲気を持ちながらも、セーフィーの事業とテクノロジーの話題になると、スイッチがオンになって熱く語り出す佐渡島氏。社員がみんな彼と楽しそうに話すのを見ていると、セーフィーという会社の働き心地の良さを感じられた。
セーフィー 株式会社資本金56.0億円設立年月日2014年10月従業員数461人
わずか3年でクラウド録画サービスシェアNo.1、映像データであらゆる産業の現場をDXするベンチャー
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