代表取締役社長 兼 CEO HR総研 所長 寺澤 康介氏

ご略歴について、お教えください。

1986年に慶應義塾大学文学部人間関係学科を卒業後、就職情報サービス会社の文化放送ブレーンに入社しました。企業の新卒採用のための学生向け情報メディアや入社案内パンフレットなどの営業、制作、編集の各業務を一通り手がけたほか、調査業務や新規事業などにも携わりました。 2001年に退職して、6人の仲間と共に同じく新卒や中途の採用情報事業を手がけるキャリアパートナーズ（現・文化放送キャリアパートナーズ）という会社を設立し、役員に就任します。そこで6年ほど仕事をする中で、大きな問題意識を抱き、その課題追究のために独立して2007年に当社を創業しました。

どういった問題意識を持たれたのでしょうか？

90年代の終わりにインターネットを活用した就職情報メディアが登場し、それが肥大化を始めて業界全体が良くない状態に陥ってしまったことです。従来の就職情報メディアは、企業情報を本にして学生に無料配布し、学生は綴じ込まれているハガキで関心のある企業に資料請求しアプローチするというスタイルでした。上位校の学生しか採用したくない大手企業などのために、大学のランク別に編集・配布するといったメディアも存在していたわけです。それに代わって登場したネットの就職情報メディアは、登録した全ての学生に対して全ての企業の情報を届けるというオープンでフェアなものとなりました。その趣旨は素晴らしいものであったと思います。 しかしながら、例えばある大手企業には印刷メディア時代に数千枚届いていた資料請求ハガキに代わり、就職ナビ時代になると10万人もの学生からエントリーが来るようになりました。「一括エントリー」という、ワンクリックで数百社にエントリーできる仕組みまで登場したのです。そこで企業側は「エントリーシート」を導入し、学生を振るい落とすようになります。可能性の乏しい大量エントリーに、無駄そのものの大量振るい落としという壮大なる不毛な作業が発生し、双方から悲鳴が上がるようになりました。何社からも振るい落とされた学生の中には、心が折れて就職活動から目を背けてしまう者も出現するようになってしまったのです。 私はこうした状況を是正したいと考え、巨大な就職ナビ以外の採用サービス情報を中立的な立場から提供し、企業の採用担当者が選べる環境をつくることを決意しました。そうして2007年7月に採用プロドットコム株式会社を立ち上げ、10月に採用担当者向けに様々な採用支援サービス情報を中立的・客観的な立場で提供するポータルサイト『採用プロ.com』をリリースしたのです。その後、採用領域以外のサービスの種類が増え、人事全体、英英領域に拡大するなかで社名変更を2回行い、現在の業容に到っています（企業詳細タブ参照）。

その時、どんな会社にしていこうと考えたのでしょうか？

当社の存在理由として、設立当初から「社会をより良くする“てこ”になる」という思いが強くあります。小さなベンチャーであっても、大きなものを動かす影響力を発揮していこうという思いです。就職ナビによる歪みの実態を把握するために学生や企業、大学を調査し、その結果をマスメディアに発信し啓発を試みました。すると、それに着目した経団連や大学のキャリアセンター団体、内閣府といったところから呼ばれて意見を求められるようになったのです。こうした動きが、その後の採用手法の多様化にも結び付く一定の役割を果たしてきたと自負しています。

寺澤さんの仕事観についてお教えください。

仕事や働き方に対する考え方は人それぞれでいいと思います。私は、仕事とは家族や自分を豊かにしてくれるもの、という存在です。社内などでよく話しているのは、「客観的に誰がやっても楽しいという仕事はない」ということ。仕事は、自分がいかに楽しくやるかという“自分ごと”で考えるべきものだと思います。仕事の主役は自分であり、自分が何をするかを選び取っているわけです。未来を拓くのも自分次第です。目の前の仕事に前向きに取り組んでいくうちにうまくできるようになり、楽しくなっていくのではないでしょうか。 また、昔から私にとって一番大事なのは家族であり自分です。仕事は二の次で、プライベートを優先させています。どれだけハードワークの日々であっても、有休休暇は目一杯取り、家族との時間を過ごすことにこだわってきました。現在ももちろんそうで、当社全体にそういったカルチャーが浸透しています。

趣味や、オフタイムの過ごし方とは？

以前は3人の子どもと過ごすことにもっぱら費やしていましたが、3人とも成人した今は妻と街歩きや国内、海外の旅行を楽しんでいます。電車に乗ってちょっと遠い街に出かけたり、美術館や庭園巡りをしたり。旅行は月1回のペースで出かけています。