株式会社プレックス

エッセンシャルワーカーの社会的な意義が注目されている今。2018年4月創業の株式会社プレックスでは、“日本を動かす仕組みを作る”というミッションを掲げ、インフラ産業の抱える課題にテクノロジーで取り組んでいる。

同社がインフラ産業の中でも、積極的に取り組んできたのは「運送・エネルギー産業向けのHR領域」である。ドライバー・電気設備管理に特化した採用・人材紹介サービスとして『Plex JOB』を提供しているが、創業から6年余りで契約企業数は8,500事業所、登録ユーザー数も70万人という急成長を遂げている。

そもそもプレックスがなぜ運送・エネルギー産業のHR事業に取り組んでいるのか。創業までの話題を含めて、代表取締役の黒﨑俊氏に伺ってみた。

「物流や建設やエネルギーといったインフラ産業について、日本の労働人口が減っていく中で、担い手がさらに不足していく。しかも、デジタル化が遅れているために、生産性を高めづらい。インフラ産業の中でも、EC化による深刻な人手不足が予測されているのが物流業界であり、IT系でメインとなるプレイヤーはまだいませんでした。実際に運送会社からは人が集まらないと聞き、求職者からはどうやって仕事を探したら良いか分からないという話を聞きました。これらのことから、運送業界に対する採用・人材紹介プラットフォームの提供を考えました」

黒﨑氏はプレックス創業以前に新卒入社した企業で、介護医療領域でマーケティング業務や、新規事業責任者として活躍してきた。その際に、市場規模に対して担い手が不足しており、しかもデジタル化が遅れている分野へ、自分がビジネスとして取り組むことで、社会的に新たな価値を生み出して貢献していけるのではないかと考えた。

プレックスが最初に取り組んだのは、今後の市場拡大に対して、人材不足によって「遅配」等の問題が生じる可能性がある運送業界である。さらには運送会社だけではなく、廃棄物収集運搬事業者、食品卸売会社、タクシー会社等、幅広い業種の求人に対応している。

プレックスが “日本を動かす仕組みを作る”ために解消していく社会的な課題とは、「情報の非対称性」「非効率性」という二つの方向性にあるという。
まず、「情報の非対称性」というのは、売り手と買い手の情報が不均衡であることによって市場が上手く形成されないという状態。運送業界でいえば、ドライバーに対して「どの企業が何を運んでいるのか、どのような車を使うのか」といった詳細が伝わっておらず、就業しても早期離職してしまうという、企業と求職者双方にとって不幸な状態にあった。この非対称性を解消するために、プレックスでは「プラットフォームビジネス」を提供している。
さらに、「非効率性」を解消するために行っていくことは、DX化の促進やSaaS事業を展開していくこと。「アナログで分析を行っていることを、現場のためのデジタルでのツールを提供することで効率化を図っていくこと」というサービスだが、現段階ではここまでしか公表していないため、さらに詳しく知りたい方は面談で聞いてみてほしい。

プレックスのサービスの成功要因について聞いてみると、「マーケティング力とマッチング力、そしてエンジニアリング力とテクノロジーのレバレッジにある」と黒﨑氏は答えてくれた。
プラットフォームビジネスに関しては、第一に集客力のある、強いメディア力を持っていること。これは、Webマーケティング・SEO対策・リスティング広告で集客の経路を築いているということだ。第二に挙げられるのは、業界や企業に対する理解を深めて、なぜ採用したいのか、業務内容や勤務状況、実態について深掘りしていること。第三には企業と求職者双方向の対応を行うキャリアパートナーが、求職者からの要望や転職動機を理解した上でマッチングを行い、入社後にも希望通りの環境で働けているのかを調査し続けていることが挙げられる。例えば「横から荷物を積み込みやすいウイング車がいい」といった要望の意味を理解して、対応できるかが重要である。
また、これらの求人に関する微細なリソースをエンジニアリング力でサービスへと落とし込むことができるのが、プレックスのアドバンテージだと言える。

「プレックスが行っていることというのは、あくまでもインフラ産業にエンパワーメント、強力な支援を行っていくということです。よく“これまでの仕組みを破壊して再編成する”といった姿勢を示している企業もありますが、業界の古い部分や個人商店が長年築いてきた良さを大切にしながら、より良くしていきたいと考えています」(黒﨑氏)。
このために、今後のプレックスの展開として考えているのは次の三つである。
(1）人材紹介・採用に関する成功事例を、運送・エネルギー領域から、他の領域へ横展開を図っていくこと。
(2）ダイレクトマーケティング（オンライン上でのマッチング）を強化していくこと。企業からのスカウトが求職者に届き、企業と求職者が直接交渉することで、プレックスが介入せずに採用成功に結び付ける。これがプレックスのいう“テクノロジーのレバレッジ”によって生み出される、新たな価値の一つである。
(3）SaaS事業の本格始動によって業務の質を向上させることにより、HR事業で人材を確保しつつ、質と量の両面で向上させていくこと。

これらを展開しながら、中長期計画としては5年後の2027年に売上150億円規模を目指している。この数字は予測の上で算出した売上高の最大値である。
さて、今回採用したい人材について黒﨑氏に話を伺おうとしたところ、「花梨さんに聞いてください」という。総務・人事まわりについては担当者に任せて、幹部が全て抱え込まずに俯瞰して統括していくスタイルのようだ。

採用マネージャーの渡邉花梨氏いわく「キャリアパートナーの仕事は、求職者に対して、人生を変える大きな意思決定を促す必要があり、難易度が高い仕事だと思います。ブランド力のある商材を右から左に販売していくというより、商材の理解+αの能力が求められるため、成長意欲が高く、目標達成へのモチベーションが高い方が向いていると思います」

プレックスのサービスにおいて、重要な要素となるのはキャリアパートナーのマッチング力である。求職者にとって当初の希望とは異なる求人であっても、別事業のドライバーの方が適している可能性も考えられる。深い業界理解の上で対応していくことは、この仕事を担当する本人にとって一生使える「人間力」「経験値」を培っていくことに繋がるはずだ。